その173 終演はエンディングか否か
それはあまりにも衝撃的な発言だった。
そ、そもそもない? それってどういうこと……!?
世界の滅びってそのレベルなの!?
「乙女はこう見えても能力だけは有能だからな、未来が見えないと言うのは本来あり得ないことだ」
「いつもだいたいぼんやり見えているんだけど~、二年後から先が急に見えなくなったのよねぇ~……」
「きゅ、急にですか?」
……二年後に急に未来がなくなる。
それはともすれば三年間という範囲しかないゲームとの関連性を疑わずにはいられないのだけれど、急にという発言で私は考え直す。
どうして急に見えなくなったのだろう。
それはつまり、ずっと見えていたのに突然見えなくなったということで、最初からずっと未来がなかったというより何らかの原因で消失したように思える。
「そうよ~、突然見えなくなってすっごい焦ったんだから~。ええっと~、大体~、一月前くらいのことね」
「直近じゃないですか!?」
もっと前から見えなくなったのかと思いきや滅茶苦茶近い!
長命な者からしたら本当に一瞬じゃないかな!?
一月前に何かがあったということ?
それくらいの時期に何があったのか私は思い出してみるけれど……あの時に起こったことと言えば、私からすれば一つしかない。
そう、『真実の魔法』をかけられたことだ。
あれが丁度その頃のはず。
けれど、それと未来が消えたことに何の関連があると言うのだろうか。
私にとっては『真実の魔法』は大きすぎる出来事だったけれど、世界にとっては些末な出来事に違いない。
いや、でも、あれによって物語が大きく変化したことが原因に……?
色々考えて見るけれど、どうにも答えは出てこない。
まだ材料が足りていないのか、単純に私の発想力が死んでいるのか……。
名探偵ラウラは一度大失敗しているから、頼りにしない方が良いのは間違いないけどね!
「まあ~要するに原因不明だけれど~、とりあえず~、今まで私が未来視で見ていた破滅の原因さんたちに疑いをかけているのが現状なわけ~」
「なるほど! 巨悪な人たちは未来視から想定されたものだったんですね!」
「そうそう~、世界の滅びっぽい未来ってよく見るのよ~」
あっけらかんというニムエさんだけれど、世界の滅びをよく見るって嫌すぎませんか?
魔法のある世界だからなのか滅茶苦茶物騒だった。
いや、前世も意外と世界の滅びはすぐ横にあるのかもしれないけれど、それは怖いので想像させないで!
「……ん? ということは、あの、例えばおじ様とかが世界を滅ぼした様子を未来視したってことですか?」
「見たわよ~、ひっどい滅びだったわ~」
うんざりした顔で語るニムエさん。その表情からどんなえげつない未来か想像できた。
や、やっぱりおじ様って本当に世界を滅ぼせるんだ……!
どんな滅びか興味があるようなないような。
いや、どう考えても興味持っちゃ駄目なやつだこれ!
頭を振って好奇心を追いやる。
可愛い猫だけが持っていればいいんです。好奇心は。
とりあえず、どれだけ私がおじ様に好感を持っていようとやはり外に出すのは危険な人のようだった。
少し未来が違えば世界を滅ぼす人なんだなぁ……。
「主よ、とにかく目の前の一つ一つの問題を解決するのが一番だ。例え未来の件と関係なくても、その前に世界が滅んでいては意味がない」
「エクシュはかしこいなぁ」
「まずドラゴンについて詳しい者を尋ねる必要が──」
話は最初に戻ってドラゴンについてだ。
とはいっても、ドラゴンに詳しい人すら私は知らないのだけれど。
先生に聞いて見るべきかなぁ……などと思案していると、ジェーンがおずおずと手を上げる。
「どうしたのジェーン?」
「あの、ドラゴンについて知っていることがあります」
「本当!?」
思わず詰め寄るようにジェーンに近付く。
彼女はそのフワフワの髪に触れながら、困ったようにこう言った。
「というか、あの、会ったことがあります」




