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その165 世知辛いのじゃ


「私、騙されかけていませんか!?」

「騙すなどと人聞きの悪い! ただラウラの可能性を信じているだけである!」

「か、過分な期待です……」


 どうやらクロウムさんはメーリアン家にただ優しいというより、愛が強すぎて期待も巨大なものになっているらしく、それ故にスパルタなところがあるみたいだった。

 私とは違うタイプの推しへの愛……それは苛烈にして身を焦がす炎のような愛!

 だから私の身も心も溶かされているんだね(?)


「あの、一度この議題は置いておいていいですか! 恐ろしいので!!!!」

「自力で解決できる分にはそれが一番であると吾輩は思っている。故に構わないぞ」

「すいません、色々言って貰ったのに……」

「構わない。そもそも議事というのは意見を言うことそのものが大事であり、それが受け入れられるかどうかは二の次であるからな」


 わざわざ相談して置いて全て却下するという愚行を起こしてしまい、心を痛める私だったが、そんな私にもクロウムさんは優しかった。

 なんか優しさのバランスがすっごくグラグラしているんだよね……。

 まるでジェンガのような慈愛である。


「それで、ええっと、お、お金についても困っていて、そちらも相談したらいいのではないかとナナっさんに言われているのですが……いや、なんか改めて言うとすごく微妙な相談ですねこれ!」


 お金について人に相談することに謎の忌避感があるのは私だけだろうか?

 特に自分の親戚にお金の話を持ち掛けていると、露骨にお金を融通して欲しそうな感じが出てすっごく怪しい気がする!

 久しぶりに会った友人とかにするよりはマシかもしれないけれども!

 

「ナナっさん? ………………ナタのことか! 奴が私に相談するように言うとは、大人になったのだな」

「いえ、見た目は子供です」

「……何故わざわざ幼少期に固定しているのだろうな。あいつは」


 ……言われてみれば謎すぎるかも。

 幼少期に容姿を固定するメリットって萌え萌えズキュンで可愛いくらいしかないもんね。

 或いは魔法的に意味がある行動なのかも……?


「それで、あの、斯々然々でして……」


 私がお金を必要としている理由を話すと、クロウムさんは目を瞑り大人しく、そして時に頷きながら、咀嚼するように私の言葉を聞き遂げる。

 そして目を開くと、こう言った。


「……働けば良いのではないか?」

「そうですけれども!!!!!!」


 あまりにも当たり前のことを言われてしまった!

 い、いや、分かっているんです。お金が欲しければ働け、当然の話なんです。

 私も思い至ってはいましたし、働くことが嫌なわけでもないんです。

 でも、求めている答えとは違ったと言いますか……!


「勿論、吾輩の頭脳を使えば金を湯水のように湧かすことも可能ではある」

「可能なんですね……」

「だが、一つ思いついたことがあるのでな。魔法の習得についてだが、環境を変えることが大事であり、故に働きに出るのは悪いことじゃない」

「あっ、そちらと関連してきますか」


 完全に関係ない話に移行したと思いきや、この二つにはまさかの繋がりがあるらしい。

 確かに学生がいきなり社会に出るのって割と異世界に行くみたいなものかも。

 

「今まで働いたことのないお嬢様が働くと言うのはそれなりに非日常であり、常識の変換に繋がるかもしれん」

「社会人になって世界が変わったって人は結構いますものね」

「そうなって来ると大事なのは職場選びであろうな」

「職場ですか……」


 働く上で最も大事なことは何か。

 それは勿論、ホワイトな職場につけるかどうかである。

 もっと言えば同僚に恵まれているかどうかと言う話であり、お給金と労働のバランスが取れているかという話でもある。


 ……いつの間にか親戚に進路相談している子みたいになって来たな。

 もっとメルヘンな人生をあゆみたいのに! 何故こんな世知辛いことを考えなければならないのか!


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