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その158 空よりも雄大で、空よりも美しく、空よりも優しい


「そ、そうなんだね……ごめん言いにくいこと言わせて……」

「いえ……」

 

 まあ、ジェーンも健全な女子なわけで、恋くらいそりゃあするよね。

 私は不健全な女子な女子なのでしないけれど……。

 恋より夢を見ていたい年頃なんです。


「じゃあ、えっと、何もしなくてもそのうち恋くらいするよね……ごめんね? いらぬ心配をして」

「いえいえ、お気持ちは大変ありがたいです。ただ、あの、そのうちではなく今現在も恋は、た、多分、しているような、していないような……」

「ええ!? す、すでに!?」


 ジェーンは顔を赤らめながらとんでもないことを言う。

 嘘!? そんな素振りまるで見せなかったのに、既に恋の季節は到来していたと言うの!?

 まさか私が、この私がジェーンの恋の瞬間を見逃してしまうになんて、なんというオタク失格……!

 い、今からでも後れを取り戻さなくては。


「誰誰? 誰なの!?」

「それは秘密です!」

「こんな禁断の密がある!?」


 哀れ好奇の蝶はその蜜を吸えない定めにあるらしく、ジェーンに強く拒否されてしまった。

 うう、秘密かぁ……うん、それは乙女としては当然そうなるのだろうけれど……独自の観察で何とかするしかないかな……。


「とにかく! 私には守るべきものも愛すべきものもありますので、強くなります。なれます。なってみせます!」

「お、推しがかっこよすぎる……」

「ですからラウラ様、一緒に頑張りましょう──私がずっと一緒にいますから」


 空の上でそう宣言するジェーンの表情は、かつてない程にイケメンで、そして綺麗で、何より尊かった。

 空よりも美しいものがここにはある!

 見惚れた私は思わず頭の中が真っ白になって、ただただ黙ってしまう。

 もしかすると『真実の魔法』が解ける瞬間と言うのは、こういう時なのではないかと、ふと思った。





「そんなわけで、うちのご先祖様はメリコンだったんです」

「何じゃメリコンって。めり込んでおるのか?」

「いや、メーリアン家コンプレックスです」

「ブラコンやシスコンの強化版みたいなやつじゃろうか……」


 翌日、私は学院の庭にあるベンチ、そこに腰かけて先日にあった色々をナナっさんに話していた。

 ナナっさんは私の前の方でフワフワと浮きながら、私の話を何処か上の空で聞いている。

 上の空になりながら上の空に浮かぶ人、初めて見たな……。


「ええっと、あの、それなりの因縁があるだろうと思い、話に来たのですが」

「まあ『真実の魔法』をかけられた仲じゃからな」

「仲良くして大丈夫でしょうか?」


 ともすればナナっさんからすれば不倶戴天の敵のはずである。

 勝手に仲良くなっていては大変な怒りを買いかねないと思っていたのだけど……案外ナナっさんは平然としていて、空を見ながら相変わらずどこか上の空で言葉を返す。


「しかし、ラウラウとローザは『真実の魔法』をかけられた仲じゃが、今は仲良くしているじゃろ?」

「それはまた話が違う気が……!」

「うーん……………………確かに複雑な思いはあるんじゃが、一応『真実の魔法』は戦いの末に儂にかけられたわけで、儂が勝っていればやつをもっとギッタギタにしていたじゃろうし、条件は平等なんじゃよ」

「それは潔いですね」


 戦いが終わったらノーサイド。

 そんな考え方が出来る人間がどれくらいいるか分からないけれど、ナナっさんはそれくらい考えることが出来るほど心の広い人物らしい。

 いや、広すぎるでしょ。大海原か?


「そもそも『真実の魔法』をかけられて放置されたと言うのは、実はかなり温情がかけられておる。実はそのことが一番ムカついてたりするんじゃよ」

「『真実の魔法』が温情ですか……?」


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