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その148 クロウムおじ様による大変小難しい講義に抗議したい

「ぜ、ぜぜぜ、前世ですか!? いや、あの、確かに記憶がありますが……」


 ここで全然前世なんて知りません! 全然全部なくなりました! と言えたらいいのだけど、悲しいかな、問われれば嘘は付けない身の上である。

 そうじゃなくても、ズバリ言い当てられたこの場面で、あんまりここで嘘をつく意味はないのだけど。

 

「やはりか」

「な、何で分かったんですか!?」

「封印空間も小規模な一つの世界であり、そこに侵入できるのは世界間の行き来を繰り返し過ぎた者だと推測できた。しかし、形而上根源的心象領域の体験だけでは不十分だとも思ったのでな。他の要素も存在していたはずであり、その中で最も可能性が高いのはかなり大きな世界間の移動に伴って生じたはずの世界に留まろうとする力の減少、即ち転生が最も適切だ」


 何やら楽しそうに語るクロウムさんの講義を私は──あまりよく分かっていなかった!

 小規模な……心象領域の……留まろうとする力……呟いてみるが、全く理解の助けにならない。

 な、なんか小難しい理屈が色々あるらしいけれど、要するに、この世界に来たことも封印への誤侵入に関係あるということですね?

 


「せ、世界の移動を繰り返す→世界を超えやすくなる→封印内へ入る……という理屈の中に前世もあるということですか?」

「因果は逆かもしれないがね」

「追加情報で理解を妨げないでください!」


 でも、言われてみれば確かに、クロウムさんの言うところの形而上根源的心象領域(長い!根源世界と呼びます!)に行く前から、私は日本からこの世界に来るにあたって既に世界を移動している。

 その体験もまた、世界を移動しやすい体質に付与しているということか。


 いや、その因果が逆と言うのは、むしろ最初からそういう体質だったからこそ、この世界に私は来ることが出来たということ……?

 体質があるからこの世界に来たのか、この世界に来たから体質が生まれたのか、どちらが正解なのかは卵が先か鶏が先か的な問題があり、クロウムさんにもはっきりとは分からないということか。

 こ、こんな感じで合ってます?


「まあ、つまりラウラは体質的に世界の壁を超えやすいので、湖の乙女とやらが空けた穴にも入れてしまったと見るべきであろう」

「超スリムボディってことですか」

「そちらの方が女子的にうれしいなら、その認識で構わない」


 ま、まあ、太っているよりはましなのかなぁ……。

 あと、なんだかニムエさんが悪いみたいな感じになっているけれど、どちらかと言えば私の体質が悪いだけなので!

 ニムエさんは無実です!


「とりあえず封印誤侵入の理由は分かりました。まさか前世が関連しているとは……」

「吾輩の研究テーマには世界があるので、なかなか興味深かったぞ!」

「研究テーマ世界は範囲がでかすぎませんか!?」


 もうそれ森羅万象が研究テーマじゃん!


「詳しく話を伺いたいものであるが、しかし、残念ながら遠く離れた世界の話は基本的に聞き取れない。全く、歯がゆいものだ」

「えっ!? じゃあ──────で────────な──とか──なことも伝えられないのですか?」


 適当に前世について話してみると、クロウムさんはため息交じりに顎に手をやる。


「まるで聞こえん。これは異なる世界の宿命的な問題でな、お前も経験があるのではないか? 見たところ、その剣は話すのであろう?」

「はい、話します! けれど、最近までは聞き取れなかったので……あっ、それと同じ現象ってことですか!?」


 エクシュの言葉はずっと聞こえない状態が続いていたのだけど、あれと同じ状態が私の身にも起きているらしい。

 もうまるで疑問に思っていなかったのだけど、言われてみれば嘘がつけないという状況で前世についてまるで人にバレていなかったのは、そういう理屈でもないとおかしい話かもしれない。

 そもそも誰にも聞こえていなかったのか!


「さて、重要なのはこれらの情報を踏まえた上で、この封印から外に出られるかという話だが、ラウラに関しては可能なはずである」

「あっ、本当ですか!」

「うむ、吾輩の協力があればな!」

「嫌な予感がします……!」


 その時のクロウムさんの表情ときたら、実に愉しげで、まるで月のように口元を歪めているのである。

 明らかに愉悦を含んだその表情は、もはや悪魔的でさえあり、そして超好みだった。

 超好みだった。

 超好みだった!!!!!

 くそう! 何でもしてあげたくなる!!!!!


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