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その142 クロウム・メーリアン

「あ~、これは窓に小石が当たった感じになっているわね~」

「そういう感じなんですか!?」


 封印のヒビ割れに対してえらい簡単な言いようだけれど、要するにそれくらい軽度の傷だということだろうか。

 でも、窓がヒビ割れたらもう全面取り替えないと直らないイメージだから、大変そうだけどね。


「子供の頃にやったことがあります。母にめちゃくちゃ怒られました」

「窓割っちゃったの? ジェーンはやんちゃさんだなぁ」

「いえ、封印を割っちゃって」

「封印を!?」


 なかなか割っちゃわないよ封印!?


「いえ、あの、小さな封印ですから」

「封印の大小はまるで分からないけれど、やっぱりジェーンは天才さんなんだね」

「いえいえいえ、子供の頃の話なので……!」


 何故か恥ずかしそうにするジェーン。

 ついつい話してしまったものの、子供の頃の才気溢れてやんちゃだった頃の話は、彼女にとって黒歴史に属するものらしい。

 まあ、魔法が友達という異次元な幼少期を活発に過ごしたという話なので、今では信じられないくらいぶっ飛んだ子供だったんだろうなぁ。

 ジーナさんの苦労が偲ばれる……。


「それで、あの封印の傷をどうするんだ」

「勿論修復するわ~、そのために来たんですもの~! ラウラちゃん~、ヒビのそばまで移動して~」

「はい! お任せあれ! ……いや、あれ、もう背から降りてもいいのでは?」


 奴隷根性が染みついているので命令されると無条件で働いてしまいたくなるが、一応ツッコミは入れておいた。

 別に何の理由がなくてもずっと背に乗って貰って構わないのですがね! 幸せだし、楽だし、何より可愛いから!


「体力まで子供になっちゃったから~、疲れやすいのよ~、ふああ~」

「見た目通りの身体能力になっちゃてるんですね。それなら仕方ありません」


 こちらの世界に来るために子供になったニムエさんだけれど、流石にデメリットも色々あるようで、そのお顔は少し眠たげだった。

 お子様的にはもうお眠な時間らしい……子供にお願いされたのでは断れないので、私は素直にニムエさんを背負ったまま、ヒビの方へ移動する。

 間近で見るヒビは大変に不気味で、私は思わず生唾を飲み込んだ。


「う~ん、ちょっとした傷ね~、これなら何とかなりそう~……ん?」


 ビビる私とは対照的に、なんの恐れもなしに、おててでヒビをペタペタ触りながら独り言ちるニムエさんだが──急に手を放し、首を傾げながらヒビの奥をジッと睨み始めた。


「ど、どうしました?」

「見られているわね~」

「えっ、な、何にですか!?」


 つられるように私もヒビの方を見たその瞬間──彼の声は聞こえて来た。


「それは勿論、吾輩に決まっている」


 それは渋くダンディで、そして何処か胡散臭い声だった。

 イケイケボボボなイケボであり、至近距離でそんな重低音なイケボを浴びた私は思わず叫び声を上げながら後退りをしてしまう。


「ひええええええええ!?」

「クロウム・メーリアンよね~? 封印越しに会話できるのね~」


 驚く私の背の上で、ニムエさんが冷静そのものな態度でヒビに話しかける。

 するとヒビの奥から再びあの声が聞こえて来た。


「無論、吾輩こそがクロウム・メーリアンだとも。クロウムとは吾輩のことであり、メーリアンとは吾輩の愛する者たちのことに相違ない。そこの幼女、まさか吾輩が長年コツコツと作り上げて来たヒビを塞ごうとしているのか?」

「その通りよ~、長い時間を掛かった努力を無にするのって最高に気持ち良いわ~」

「性悪め! その尊大さ……人ではないな」


 ご先祖様の声が響く中、平静でいられているのはニムエさんだけであり、私もお兄様もジェーンもぽかーんとしていた。

 だっていきなり封印されているはずのご先祖様の声が聞こえて来たのだもの!

 しかもなんかすっごいアクの強い性格してそう!


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