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その135 落ちこぼれキューピッド

「つまり私が言いたいことはこうよ~」


 ニムエさんはジェーンの頭をポンポンと撫でながら話を続ける。

 み、見た目が子供でも母性がある! バブ味ある!

 そのギャップに一瞬興奮してしまうが、内股を抓り何とか我慢する。

 今は真剣な場なのよラウラ・メーリアン!


「ジェーンちゃんに恋させちゃおう大作戦を開始するべきだってこと~!」

「お、おお! 私得な作戦です!」


 割とぶっ飛んだことを考えるニムエさんなのでどんなことを言いだすのか少し不安だったのだけど、思いの外その案は平和なものだった。

 しかもジェーンとみんなとの恋模様が見たい私としては万々歳な作戦だ!


 そう、そうなのです! 恋愛するべきなのです!! 愛し合うべきなのです青春するべきなのですイチャイチャするべきなのです!!! 若いんだから可愛いんだから萌えるんだから!!!!

 むしろなんで今まで恋愛展開がなかったのか不思議なくらいだよ!


「大ッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ賛成です! やりましょう! 恋を! 開始しましょう!」

「圧がすごいわね~……ちょっと引いちゃう」

「引いている場合じゃないですよ! ついに学生の本分を満たすときが来たのです!」

「学生の本分を恋愛だと思っていたのね~……」

「他に何があると言うのですか!!!!」

「よ、よく分からないけれど~、お勉強とかあるじゃない~?」

「ありません!!!!!!」

「えっ、ええ~」


 考えてみれば私と言うお邪魔虫のせいで恋の始まりが阻害されているというのなら、その恋を再び開始させるのも私の責任というものではないだろうか?

 うん、そうに違いない! それこそが私の天命なんだ!

 

「やる気満々です! ジェーンの恋を全力で応援しましょう! 私とニムエさんがキューピッドになるんです!」

「積極的なのはいいことだけど~……ちょっとこれ見てくれる~?」


 一人で勝手に盛り上がる私に、ニムエさんはそっと何かの羊皮紙を手渡してくる。

 そこにはこう書かれていた。


『ヘンリー・2 ジョセフ・5 グレン・3 イブン・1』


 ……????????

 何かの暗号だろうか?


「それはね~、好感度を数値化したものよ~」

「あっ、なるほど~! では十段階評価ですか。お兄様が一番リードしているんですね!」

「違うわ~……違うのよラウラちゃん~……」


 がっくりと肩を落とすニムエさんはその数値の横にある数字を書き加えた。

 100と……。


「マックスは100なのよ~」

「そんなことってあります?!!??!?!?!???!?!?!!」


 100段階で5!?!!??!??!??!?

 ほぼ0じゃないですかそれは??????


「まあ~、0でも友人からスタートしているから~、3や5でも無関心ではないのだけど~……恋には程遠いのよねぇ~」

「ど、どうしてこんなことに……」


 思えば確かにこのゲームの好感度の最高値は100だったと私も記憶しているけれど、えっ、えっ、えっ~!?

 いや、まあ、三年間を過ごすゲームなので一年目終了時の好感度は普通にやっていれば33くらいが普通で、頑張っても50くらいなのだけど、それにしたって最高のお兄様で5!?

 これはもう逆に難しいよ? 誰とも付き合わないと発生する、ほぼバッドエンド扱いの友人エンドを狙っているとしか思えない。


「恋に興味がないから好感度……要するにときめきも全然ないのよ~」

「これはなんというか、前途多難ですね」


 あまりの事態に燃え上がった心も鎮火され、思わず真顔になってしまう私だった。

 もうびっくりするくらい恋愛模様に発展しないなぁと思っていたら、まさかここまでとは……。

 

「どうする~? 惚れ薬の開発でもする~?」

「諦めるのが速すぎですよ! こ、これから上げていきましょう! こちらからも助け舟を出していけば、グッと改善されるはずです!」

「まあ~、それしかないわよね~……なんか恋が生まれそうな企画をいっぱい考えてくれる~?」

「私がそんなパリピな大学生みたいなことを!?」


 陰キャには難易度が高すぎる! そもそも恋が生まれそうな企画とは一体……?

 王様ゲームか? 王様ゲームなのか!?


「に、ニムエさんも考えてくださいよ!」

「私~、恋とか分からないから~」

「わ、私も分かりませんよー!」


 悲しいことに私もニムエさんも恋愛未経験者らしい。

 うわ……絶望的だ。

 こんな有様で人の恋路を応援してたら「いや、まず自分が付き合ってから言えよ」って返されちゃう。


「恋愛のお話ならいっぱい知っているんですが……」

「もうそれでいきましょう~」

「え、えぇ……無茶過ぎる気が……」

「無茶でも~仕方ないじゃない~?」

「ですか……」


 こうしてポンコツキューピッドたちによる『ジェーンに恋させちゃおう大作戦』は重苦しい空気のままに開始されることとなった。

 まったく自信はない……けれどやらなくてはいけないんだ!

 世界の為に! そしてジェーンとみんなとのイチャイチャを見てゲッヘッヘと愉しむという己の欲望のために!

 

記憶喪失編終了!

ついに恋愛が始まるのか始まらないのか!?

頼りないラウラ・メーリアン先生の次回にご期待ください!

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