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その134 マッチポンプ救世

「はぁはぁ……ぎゃわ……ぎゃわわ……」

「すごい不可思議な鳴き声を上げているわね~」

「い、いえ! 冷静さを保ってみせます!」


 歯を食いしばり頭の中の妄想を破棄し全力で気を静める私を、ニムエさんはものすごーく不可解なものを見る目で眺めている。

 純真な子供の目が突き刺さる! つらい!

 実際は子供でもないけれども!

 

「そ、それで、なんの御用でしょうか」

「あら~伺うって言ってたじゃないの~。それに~、これからは遠回しにやるんじゃなくて直接的にやろうって思ったから~、来ちゃった♡」

「来ちゃいましたか……」


 勿論来られるのが嫌なんてことは全くないのだけど、神的な人に自室に上がられると色々気を使って頭がグルグルになってしまうのだ。

 お、お気遣い出来ない! お茶とかお菓子とかもないしなぁ!


「急いで来たのは~、早く伝えないといけないことがあってのことなの~」

「あっ、性急さには理由があるんですね。さすがに」

「世界を救うリミットは刻一刻と過ぎ去っているのだもの~」

「それはそうですよね!」


 幼い声でも、言っていることは非常に壮大で、同時に尊大である。

 ニムエさんの基本的な姿勢は全て世界救世に向けられており、当たり前だけれど、この来訪もそれ絡みなのだった。

 それにしても実感がないよね……世界救世。

 世界って案外滅びなくないですか?


「まず~、貴女はもう先日までの地獄を生み出すほどの力は二度と出せないと思うの~」

「それは私もまったく出せる気はしません!」

「だから~、ど~~~~~~しても追加戦力がいるのよね~。しかも超強大な~」

「ちょ、超強大なですか?」


 強大な戦力と言われれば色々思い浮かぶのだけど、超強大と言われると、ハードルが富士の剣ヶ峰のように聳え立ってしまって、軽々には思いつかない。

 強いて言えば、やはり大魔法使いのナナっさんくらいだろうか。


「ナナっさんはめちゃくちゃすごいですよ!」

「あ~、あの人実はサポート型なのよね~」

「そうだったんですか!?」

「メイン火力にはなりえないわ~」


 し、知らなかった……ナナっさんてあの性格に反して攻撃は苦手なんだ……。

 言われてみればなんだか便利そうな魔法は扱うけれど、戦っている姿は見たことがない!

 どころか一度『真実の魔法』を掛けられているから、むしろ負けているのでは!?


「な、ナナっさんで無理だともう候補が」

「安心して~、身近にまだとんでもない子がいるわ~」

「えっ……あっ!」


 私はニムエさんの視線に釣られるように、隣のベッドに視線を向ける。

 そこには──ぐっすりスヤスヤと穏やかに眠りについているジェーンの姿があった。

 その寝顔は白雪姫をも凌駕するリンゴのような愛らしさに満ちているが、しかし、彼女には同時に茨を秘めた茨姫なのである。


「そう~! ジェーンちゃんは本当に大天才~! この世の主役のような子だから~、その力を真に発揮できればきっと世界を救えるわ~」

「はい! ジェーンならきっと大丈夫です!」


 ニムエさんのジェーンにかける期待も大きいが、私のジェーンにかける期待はヒマラヤほどに大きい。

 何せこの『トゥデ』の主人公なのだから!


「ただし問題もあるわ~」

「存在がパーフェクトなジェーンに何の問題が……?」

「それは~、ジェーンちゃんは本来~、恋をしてすっごいパワーを出すってことよ~」

「分かります! 恋する乙女は無敵なので!」


 ただでさえ天才なジェーンだが、その才能は誰かを守るときに、強く誰かを思う時に最も効果を発揮する。

 それ即ち恋しているときに違いない!

 もっと言えばこの世界は恋愛主軸な世界のはずなので、ジェーンが誰かと結ばれることで大きな力を発揮できるのはごく自然な話である。

 

「でも今は恋に完全に興味をなくしているのよね~」

「……やっぱりそうですか」

「貴女のせいだからね~~~~~~! これ言うの二回目だけど~~~!」

「すいません! 間に入るようなオタク失格な真似をしてしまってすいません! お邪魔虫ですいませーん!」


 ぷんぷんと怒るニムエさん! ポコポコと殴られてしまうが幼子の腕力なのでむしろ心地よいくらいだった。

 

 そして、要するに、まあ、世界の危機は私のせいでもあるらしかった。

 これは救わないと実質私が世界滅ぼしてることに……!


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