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その114 や無茶しやがって…


 ナナっさんの掛け声で開始されてしまった決闘だが、しかし、私もグレンも動けずにいた。

 二人の間にはただただ冷たい風が吹いている。

 傍から見れば互いに間合いをはかっているように見えて、ともすれば達人感があるかもしれないが、何を隠そう、私はビビっているだけである!

 グレンはそんなビビリビリビリな私に対して先んじて仕掛けるのはプライドが許さないのか、相変わらずの堂々とした態度で私の攻撃を待っていた。


 こ、こういう知人を待たせている空気、なんか苦手だ!

 はやく……はやくしないと! このままだと待たせた挙句、なんの成果もあげられない最悪の事態に!

 焦ってしまう私は、とりあえず昨日ローザに渡されたままだった杖を手に取ると──手に取ると……あれ、昨日、どんな呪文唱えたんだっけ!?


 記憶喪失な上に記憶力が低いのか私はー!

 抜け落ちた分メモリが増えたりしておくれよ! それともまだ完全に消えたわけでなくゴミ箱のフォルダ中に残っているからメモリが圧迫されたままなのかなぁ!?


 こうしている間にも、どんどん私の中で大きくなっていく焦り。

 あわあわと慌てた思考の中で、突如私の頭にある呪文が舞い降りた。

 知識として得ていたのかもしれないが、と、とにかくもうこの呪文に全てを託すほかない!


「い、行きます!」

「来い! 俺の『暴風乖離世界』が全てを吹き飛ばす!」

「なんかちょっと名前違くないですか!?」


 言葉の意味は分からないが、凄い自信だ!

 やっぱり安心感と頼りがいが違う! 何でも受け止めてくれそうな雰囲気がある!

 よ、よし、杖先に力を籠めるように……。


「『この輝きは灰塵の前触れ! カルケイル!』」

「おお、聞いたことのない魔法……ま、まほ……なんか光がでかくねぇか!?」

「これ眩しすぎますよね」

「そ、そういうレベルじゃねぇんじゃ……」


 昨日と同じように杖の先で爆発的に広がっていく光の束。

 至近距離で扱うと本当に目に悪いので、私の魔法はグラサン必須なのかもしれない。

 ……なんか嫌だなぁグラサン掛けた魔女は!

 私のようなチビに似合うものじゃないし!


「ラウラウ、儂もその魔法知らないんじゃが」

「えっ!? じゃあ、この杖の先の光は何なのですか!?」


 魔法使いの中でも大魔法使いと呼ばれ、この世に知らぬものなしと言わんばかりのナナっさんにまさか知らない魔法があるだなんて。

 そしてそんな魔法が私の杖先にあるなんて!

 いや、怖いよ!!!!!! なんだよこの魔法!?


「知らない魔法を使うんじゃねぇよ!」

「だ、だってこれ以外思い浮かばなかったので……あと、すいません、もう、杖に保持しているのが限界です……! 飛んでいきます!」

「ま、マジか……ちくしょう! 受けきってやる!」


 グレンは自分の周囲に魔法陣を生み出すと、砂煙を散らしながら、荒れ狂う風を生み出す。

 手で触れようものなら肌がズタズタになりそうな恐ろしい風の乱舞だけど、あれが旧『暴嵐乖異領域』、現『暴風乖離世界』なのだろうか。

 た、確かに奥義的な雰囲気があって、とてもじゃないけど無事で突破できそうな見た目はしていない。

 これなら私の謎魔法をかき消してくれるはず……!


「放ちます! 謎球を!」

「なんかよく知らねぇが、『暴颪乖背王国』に任せろ!」

「どんどん知らない名前に!」


 言いながらも、杖の先から球体は離れ、グレンに向かって高速で飛んでいく。

 その途中で、なんと謎球が華のように開いていくではないですか!

 謎球から謎華に進化!

 そ、そんな魔法なの!?

 しかも、その華がどんどん巨大に……。


「へへっ、なかなか洒落た魔法だが、見た目にこだわったような魔法は威力がいまいちだってのが、お決まりだぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!」

「ぐ、グレンー!」


 嵐も風も颪もなんのその、私の生み出した謎華は華なのに散りもせずに暴風の中をグングン突き進み──その中心にいるグレンに直撃した!

 その瞬間、グレンは後方にド派手に吹っ飛び、空中で一回転二回転三回転半と華麗なトリプルアクセルを決め、そして地面にも四回転五回転六回転とゴロゴロと、グラウンドの隅まで転がっていく。

 そしてこちらに背中を向け地面に伏すような、やや無茶な、略してヤムチャなポーズで停止した。


「グレーーーーーーーーン!?」

「無茶しやがってのう……」


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