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その112 自分を知るために戦え!(物理的に)

 た、タイマン!?

 要するに一対一でバトルすることを指す言葉だけど、まさか自分がタイマン張る(タイマンは何故か張ると表現されることが多い)ことになるとは!

 不良でさえ最近タイマン張る人いないと思うよ?


「な、何故、急にタイマン!?」

「お前が強いって言うなら、俺は戦わないとならねぇ……それが男ってもんだ」

「戦闘欲旺盛!」

「この学院の強いやつとは大体バトって来たんだが、まさかここに来てお前と戦うことになるとはな……」


 私がチート級の魔力を手にしたことで、何とこの学院の強者ランキングが変動し、私がグレンにとってのタイマン対象に入ってしまったらしい。

 超戦いたくないのですが!?

 そもそもグレンはなんでそんなにいろんな人とタイマン経験豊富なの!


「何故そこまで戦いを求めるのですか!」


 テンパりすぎて平和主義なお姫様みたいなことを言ってしまったけれど、要は自分が戦いたくないだけである。

 姫の高貴な意思とは真逆! 逆ノブリス・オブリージュ!


「割と秘密にしてたんだが……実は俺は世界最強になりてぇんだ」

「世界最強になりたい人、実在したんですか!?」

「誰よりも強くなってこそ、誰をも守れるだろ?」

「あっ、理由は素敵だ!」


 グレンはまさかの世界最強を標榜する人だった!

 世界征服を言い出す悪役くらいレア!

 しかし、その理由は全てを守りたいという純粋な思いを基礎としているらしく、優しいグレンらしくて、少しほっこりしてしまう。

 

 ほっこりしてるけど戦いたくはないよ!

 戦いってほっこりから一番遠い概念だからね!?


「つーわけでやろうぜ!」

「ほ、本当にやるんですか!?」

「安心しろ。女子供に怪我させたくねぇし、ちゃんと手加減はするぜ」

「女ではありますがギリ子供ではないと思うのですが!」

「ほぼ子供みたいなもんだろ」

「じゃあもうそれでいいですから女で子供な私とバトろうとしないでくださーい!」


 あまりにも外観が弱者すぎる私だった。

 もはや否定する気もなし! 受け入れます! 戦いたくないので!


「だけどよ、ラウラにとってもこれは有用なことだと思うぞ」

「えっ、い、いや! 戦うことで得られるものは戦わなくても得られるというのが私の持論なので!」

「絶対そんな高尚な持論持って無かっただろ!」

「持ってませんが、今だけはそんな識者であることになりませんか?」

「ならん! あのな、俺もただ戦闘狂で言ってるんじゃねぇ。自分を知りたいなら、自分の魔法を知るのも大事なことじゃねぇのか」

「そ、それはそうかもですが……」


 確かに私は記憶を失う前の自分に固執し過ぎなきらいがあって、現状の自分、特に強大な力を手にしていることには目を逸らしているところがある。

 グレンとタイマン張ることで、そんな私の一面にしっかり向き合えというのは、なるほど正しいのかもしれない。

 しれないけどもさぁ!


「私、ほぼ怪獣なので手加減とか全く分からないのですが、大丈夫でしょうか?」

「その心配の仕方、めちゃくちゃ強者がするやつだぞ」

「うっ、私の右腕が暗黒の力を……」

「それは思春期の病だ」

「で、でも、実際危険じゃないですか?」


 はっきり言ってあのグラウンドの惨状は人間に向けて放ってよいものではなかった。

 案山子が消し飛んだ姿など、早急にもう一度記憶喪失になって忘れたいくらいなのである。

 ぶっちゃけ、軽いトラウマです。


「俺はお前が思っている以上に強いから安心しろ!」

「か、怪獣以上の強さ……」

「俺の『暴嵐乖異領域』に掛かればお前の魔法なんて一瞬で消し飛ばしてやんよ!」

「そっちも思春期の病にかかっていませんか!?」


 胸を張り謎の自信満々さを見せるグレン。

 暴嵐乖異領域がどの程度の物なのか想像すらつかないけれど、言葉の響きは半端なく強そうではある!

 実際は謎だけどね!?


「そんなに心配なら学院長を横に置いておこうぜ」

「学院長をそんな気軽に!? いや、だ、駄目でしょう?」

「うーん、基本は駄目じゃな」

「ほら、ナタ学院長もこう言っていますし」

「まあ、今回は儂もラウラウの魔法に興味あるし、人もおらんから良いぞ」

「良いんですかって……学院長!?」

「この人、突然現れんだよ」


 気が付けば背後に美少年、ナ・ナタ・エカトスティシス学院長の登場である。

 心臓が喉からまろび出てしまいそうなほど私は驚いたのだけど、グレンは冷静そのものでこれが日常であることを表していた。

 いや、これが日常なの!?という新たな驚きが私の心臓を襲う!


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