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その106 錯乱ボ2


 ラウラ・メーリアン実はそこまで良い子じゃない説を検証!

 そのために私と関わりの深い人に話を聞く必要があるわけだけど……何故か顔の良い人しか知り合いがいないので、話しかけるにも緊張感が凄い。

 顔の良い人のそばにいるだけでも疲弊するに、更に話しかけるなんて重労働すぎる!

 記憶を失ったのを機に勇気も湧きあがればいいのに!

 

 そんなことを考えながら、ナナっさんにさよならを告げて、ひとまず自室に戻る。

 とはいっても、自室に特に自分の部屋感はなく、気分はホテル暮らしだった。

 実際、著名なホテルくらい豪華で高級なホテルくらい清潔が保たれている。

 もう自分がまるで上流階級になったような気持ちだ。


 ……いや、実際上流階級なんだけどね?

 実感がないなー!


 部屋にそんな清潔と高級をもたらしているのは何故か私のしもべ……ではなく、私のメイドさんをやっているローザ・アワーバック。

 その金髪縦ロールに似合わないメイド姿が逆にマッチしているというか、むしろ映えるというか、なんだか彼女のメイド姿にとても興奮する自分がいた。

 メイドを見ていると胸に熱いものがこみ上げてくる……いや何故!?


 部屋の隅から隅までモップでお掃除しているところだったローザは私の帰宅に気付くと、掃除の手を辞め、にこやかな笑顔と共に出迎えてくれる。


「おかえりなさいませラウラ様。記憶を失っても日課は欠かさない姿、尊敬いたしますわ!」

「体が勝手にやってるだけなんだけどね……」

「ジェーン、ラウラ様が帰って来ましたわよ」


 ローザに揺さぶられてモゾモゾとベッドの中で動くのは、私のルームメイトらしいジェーン・メニンガー。

 信じられないほどの可愛くて、この世の主人公みたいなオーラをまとっている美少女なのだけど、朝は大変弱いらしく、その栗色の髪をぼさぼさに乱していかにも起きたくないと言わんばかりに、ベッドに顔を潜り込ませていた。

 そんな動作が子猫めいていて、世界一可愛い。


 こんな子とルームメイトなんて、役得すぎる……というか、私、いる?

 ジェーンとローザだけでいいのに、何故私が挟まってしまっているのか!

 美少女の間に挟まるんじゃないよ! 私!

 やはりラウラ・メーリアン……巨悪!


「お、おはようございます~」


 のっそりと起きて来たジェーンはのたのたと私の方へやって来て、照れたような笑顔で挨拶をしてくれる。

 いや、く~そっ、かーわいー!

 可愛すぎて死ぬかもしれない……。


 もしや、ルームメイトとして一緒に過ごしてきたことを考えると私は既に死んでいる……?

 今はゾンビなのかもしれない。


「ええっと二人に聞きたいことがあるんだけど、大丈夫かな?」


 目をこすりながら私の目の前に腰かけるジェーンと、その横でティーを注いでいるローザに、私は勇気を振り絞って本題を切り出した。

 思えば自分をどう思っているのか人に聞くのって、軽々に出来ることではないな……。

 記憶喪失でもなければ、返答が怖すぎて絶対に無理だ。


「なんですの?」

「何でも聞いてください」

「私のことなんだけど……いや、私と言っても今の私がどんな風に見えるか聞いてるんじゃなくて、前の私について聞きたいの!」


 状況が特殊すぎて自分で自分が何を言っているのか怪しく感じるけれど、何とか私の意思は伝ったらしく、ローザは思い出すように上を見上げる。


「ラウラ様に付いてですか。そうですわね……可愛いですわよね……。いや、そういうこと聞いてるんじゃないですわよね! しかし、小さくワタワタしてて可愛い……じゃなくて、な、内面についてですわよね! 分かっていますわ! だから、か、可愛い……ぎにゃあああああああ!!!!!!」

「落ち着いてローザ!」


 突如として暴走し始めるローザの口に私は目を丸くする。

 あ、あれ、急にどうしたの!?

 なんだか大変なことになってるみたいだけど!?


 最後の方は羞恥に耐え切れず真っ赤になって叫んでしまっているほどで、なんだか不憫ですらあった。

 私としてもそんなに可愛いと言われると恥ずかしすぎる!

 互いに顔を赤くして、もはや私たちはサクランボめいていた。

 錯乱してるしね!


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