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5、おこ
「兄さん、兄さん!! ちょっと聞いてくださいよ、兄さん!!」
「……何をそんなに怒っているんだ?」
いつものように、俺が家のリビングでのほほんと読書をしていると、妹の京華がリビングのドアをぶち破るかの勢いで開け放ってきた。
その妹の手に握られていたものは、見たところ週刊雑誌。少年なんちゃら系の雑誌だ。……どうやら俺の妹は少年の心を持っているらしい。現役JCなのにな。
「──兄さん!? 何ですか! その目は! 私がこの習慣少年ジャソプを読んでいたら悪いんですか!?」
ガーッっと捲し立てる妹。
「いや、別に悪いとまでは言わないが、ちょっと意外だなと思っただけだ」
「まあ、確かに私は意外性ナンバーワンJCですからね。よく言われます」
「誰にだよ」
「友達のキャサリンにです」
「キャサリンって誰だよ!? お前の交友関係はどうなってんだ!?」
「世はまさにグローバル時代!」
「知るかっ!」
こいつと話していると、ついつい突っ込んでしまう。もう長年の習慣みたいだ。
「ついつい話が脱線してしまいました。私は今、怒っているのでした!」
「……理由はなんだよ」
そういって雑誌を前に突き出すと、俺に向かってこう叫んだ。
「これを見てください!」
「……その雑誌がなんだよ」
「私、さっきこの雑誌をコンビニで買ったのですが──」
そこで一旦、言葉を止めると、京華は大きく息を吸い込んだ。
そして、でかい声で叫ぶ。
「おしぼりが入っていなかったんですよぉーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」
「知るかっ!!!!!」
もう本当にどうでもいい。
いちいちこんなことで、騒いでこの妹は本当に勘弁してほしい。
「いや、兄さん!? 雑誌買ったのにおしぼりがついていないとかやばくないですか!?」
「やばいのはお前の思考だよ!? 何で雑誌しか買っていないのにおしぼりつけないといけねえんだよ!!??」
「いやいや兄さん!? よく考えてくださいよ!? 雑誌を買ったら普通、おしぼりとセットで渡すでしょ!?」
「お前の中の常識とこの世の皆様の常識が一緒だと思うな!? おしぼりってのは普通、食べ物を買った時にもらえるもんだからな!?」
リビングの椅子から立ち上がり、俺はそう勢 いよく言い放つ。
その勢いに負け時劣らず、京華はグッと俺の目の前まで来ると畳み掛けてくる。
「いやほんと兄さん!! 兄さんは雑誌読んだことないんですか!? この習慣少年ジャソプ!!」
「……いや、まあ、あるけど……それがどうかしたのか」
「あるならわかりませんかね! この私の気持ちが! なぜおしぼりを欲するかという、この気持ちがっ!?」
「……俺はもうお前が何を言いたいのか、まったくわからないよ。京華、お前は一体何に対してそう怒っているんだ?」
疲れた俺は椅子にボスンと座り込む。
目の前の京華が再び、大きく息を吸い込み、咆哮のような声で言った。
「ジャソプを読むと、指にインクがついちゃうでしょうが!!!」
「いや、確かに付くけども!? そこまで気にするところじゃなくね!?」
これがどうでもいい妹との日常。
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了