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妹to漫才  作者: 瀬戸くろず
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第二話 プリン




「兄さん、兄さん、ちょっといいですか?」


「何だ? そんなに慌てて」


 日曜日の昼下がり、おれはリビングのソファーの上でゴロゴロと趣味の料理雑誌を読んでいると、ドタバタと足音を鳴らしながら妹の京華がリビングへと入ってきた。


「兄さん、見る限り暇ですよね?」


「いや、俺はこう見えて忙しいんだ」


「兄さんは忙しいという言葉の意味を今一度辞書で引き直した方がいいと思います」


「テメェ! 馬鹿にしてんのか!?」


「兄さんを馬鹿になどするはずがありません。そんなことしたら馬と鹿に失礼です」


「……………………」


 妹はナチュラルにこう言った暴言を吐いてくるのだが、いちいち反応していると、こちらの身が持たない。ここはスルーして一先ず話ぐらいは聞いておこう。


「……それで? 俺に一体何のようだよ?」


「そうでした! 兄さん! 私と一緒にプリンを作りましょう!!!」


「プリン? 何でまた?」


「何でって……私が食べたいからに決まってるじゃないですか!!」


「そうか、なら頑張れ、おれはここで応援している」


 再び雑誌へと視線を移そうとしたが、それはできなかった。妹が刹那の速さで俺の雑誌を奪い取ったからだ。


「……返せ」


「兄さん? 妹がこんなにもプリンを食べたいと切望しているのに、それを放っておいて雑誌を読むなど、お兄ちゃん力が足りないようですね?」


「……何だよ、お兄ちゃん力って」


「私が今、考えた! 妹に対する配慮や気配り、心遣いを表す単位のことです。私と話している時はよく出てくる単位ですので、兄さんはよく覚えておいてください!」


「無茶言うなよ……」


 俺の妹は見た目はとびきりの美少女だが、言動がとても残念なのである。はぁ、見た目は完璧なのに……。天は二物を与えなかったようだ。


「さぁ! 兄さん! 私とレッツクッキングターイム!!」


「……はいはい」


 どうやら俺に選択肢はないようだ。まぁ実際暇だし今日のところは妹に付き合ってやるとするか。







「さて、兄さん! まずは何をすればいいの?」


「全部人任せかよ!! ちったぁ自分で調べろや!」


 ところ変わってキッチン。

 俺と妹の京華は、エプロンを装着し、プリン作りを開始しようとしていた。

 が、この馬鹿な妹は、どうやら何も考えていなかったようだ。


「私が手を出したら、兄さんの頭がプッチンしちゃうかもしれないよ?」


「どんだけミスするつもりだよ!!」


「……あれ? 兄さん? 早速プッチンですか?」


「お前のせいでな!!」


「私のせいって……こんな美少女を捕まえて、何言ってるんですか。ところで兄さん、プリンの材料って何でしたっけ? プリン塩基?」


「それは旨味成分のプリン体だろうがっ!! 確かに少しは入っているかもしれないが、そんな生体物質は使わねぇよ!!」


 すっとぼけた様子で、口元に指を当てている京華。こいつは本当にアホな子供だ……。


「では何を使うんですか? 兄さんは言うことがいちいち難しくてよくわかりません。もっと相手の立場に立って、ものを言うべきだと妹として注意します」


「うるせぇ、わかったから、さっさと冷蔵庫から卵を持ってこい、四つな」


「はいはーい、卵四つですね。卵はダチョウの卵でいいですか?」


「冷蔵庫に入ってるか!! そんなもん!! ダチョウじゃなくてニワトリだよ!! 鳥違いだよ!!」


「すみません、鳥だけに取り間違えました。えへ」


 可愛くてへっと舌を出す京華。


「帰る!!」


「わーっ! わーっ! すみません!! 真面目にやりますから帰らないでください!! 兄さんだけが頼りなんです!!」


 俺の腰へへばりつく妹。


「真面目にやるか?」


「真面目とはどういう字を書くのですか?」


「帰る!!!」


「わーっ!! わーっ!! 真面目と書いてマジでやりますから、帰らないでください!!! お願いします!!!」


「……本当だな? こんどボケたら、マジで帰るからな?」


「はい……、でも兄さんこそいいんですか? 私がボケなかったら、私と楽しく会話することができなくなってしまいますよ?」


「……お前は何を言ってるんだ? 俺はこうして普通に話しているだけでも楽しいぞ?」


 俺の本心を妹に伝えてやる。


「……兄さん」


 感動したように潤んだ瞳でこちらを見つめる京華。


「……京華」


「でも私は普通の会話じゃ、物足りないんです!! これからもボケまくりたいんです!! そして兄さんにツッコンでもらいたいんです!!」


「──おいちょっと待て!! その言い方だと語弊があるから!! ちょっと待て!!」


「いえ、待ちません!! 兄さんが私にツッコンでくれるまでは!! この口を止めることは不可能だと思ってください!!」


「わかった!! わかったから!! ツッコムから!! ちゃんとツッコミするから、いったんその口とじろ!! 俺がご近所を歩けなくなる!!」


「……本当ですか?」


「……ああ、本当だ、男に二言はない」


「え? 兄さんって男だったんですか?」


「見たらわかるだろうがっ!!」


「てっきり、ただの全自動プリン製造機だとばかり……」


「人を勝手に機械化すんな!!」


 ったく、こいつといると、声は張りすぎて喉がやられるぜまったく……。


「兄さん、兄さん」


「……何だよ」


「いつになったらプリンができるのでしょうか?」


「──お前がボケなかったら、すぐにでもできるだろうよ!!」


「……ボケとプリン、天秤は果たしてどちらに傾くか……」


「どっちでもいいわ!! ……卵に牛乳に砂糖っと、これで取り敢えず全部だな」


「ちょっと兄さん!? あれがないじゃない!!」


 京華が今までにない表情で焦ったような声を上げる。何だ? 何か他に入れるものなんかあったか?


「基本、これだけあれば大丈夫だろう? 何が足りないんだ?」


 俺がそう問いかけると、京華は勿体つけたように指をチッチッチっと振ると、腰に手を当て言い放つ。


「それは《愛情》だよ!!」


「はい、じゃぁカラメルから作ってくぞ〜」


「──ちょ、ちょっと!! 兄さん!! 聞こえてた!!? 愛情だよ愛情!!」


「聞こえてるから!! そんな恥ずかしい言葉を連呼するな!! ご近所に聞かれたら、お前、出歩けなくなるぞ!!」


「それは大丈夫!!」


「……どうして?」


「もうすでに私がアレな子ってことは、ご近所中に広まっているから」


「悲しいことをそんなに誇らしげな顔で言うな!」


 妹はすでにご近所で評判らしかった。もっと違う意味で評判が欲しかったよ……兄として。


「……ったく、まぁいいか、よくはないけど、まぁいい、京華、お前は鍋に牛乳と砂糖を火にかけといてくれ。沸騰させないように気を付けろよ?」


「りょうかい! 任せといてください! 兄さん!」


 京華はそういうと、早速鍋を取り出した。そしてそれをコンロに置くと火をかける。


「ファイヤー!!」


「いちいち、そんな掛け声は言わんでいい」


「でも兄さん、このコンロは声認証ですので」


「一体いつの間にそんな機能つけた!!」


「因みに火を消す時は《二フ◯ム》です」


「……それだとコンロごと消えそうじゃない?」


「……私も若干そう思いました」


 二人して二◯ラムの恐ろしさを再認識したところで、とりあえず先に進もう。


「……まぁいい、よしっ、カラメルは完成っと……器に入れてっと」


「わぁ! 流石は兄さんです! カラメルのいい香りが私の鼻をもいでいきます!!」


「……いや、鼻はもがれるな、かすめろ」


 鼻がもがれる匂いって何だよ……絶対臭いだろ……それ。


「そっちはちゃんと出来たか?」


「出来たか出来なかったかでいうと……ちょっと天秤にかけますね」


「天秤はしまえ!!」


「で、でも! 天秤をしまったら牛乳とか砂糖の分量が計れなくなってしまいますよ!!」


「何で天秤使って測ろうとしてたんだよ!! キッチンスケールがあるんだからそっち使えよ!!」


「え〜私おばあちゃんっこですから、機械とかはちょっと……」


「おばあちゃんっこって言葉にそういう意味はねえからな!!? なに勘違いしてんだ!!」


「えっ!? そうだったんですか!?」


 驚きに目を見開く京華。


「……ったく、ようやく気づいたのかよ」


「私っておばあちゃんっこだったんですね……」


「──お前が自分でさっき言ったんだろうが!!! 数秒前に記憶なのにどうなってんだ!!?」


「嘘ですよ〜もう本気にしないでくださいよ」


「本当かよ、全く……じゃほら俺も手伝ってやるから、牛乳をまずは四百ccだ」


「牛乳四百ccって普通二輪並みの排気量ですね」


「単位が違うから!!? 俺が言ってんのはキュービックセンチメートルの方だから!!」


「ルービックキューブ?」


「キュービックだ、キュービックセンチメートル!! それの頭文字を取ってcc何だよ!」


「へぇ〜勉強になります。さすがは私より四年早く生まれているだけのことはありますね」


「……それって褒められているのだろうか?」


「褒めてます褒めてます!! 私にこれだけ褒めれるなんてたいしたもんですよ?」


「……お前はどういう立場の人だよ」


 ふう、まぁいいか……。

 こいつを真面目に相手にしていると、マジで日が暮れてしまう。


「じゃ、砂糖は七十グラム入れて、沸騰しないように溶かしていけ」


「はーい!」


 京華は先ほど鍋に入れた牛乳のあとに砂糖を投入する。手際はなかなかのものだった。やればできる子なんだが、ボケを挟んでくるからなぁ……。それさえなければ完璧なんだが……。  


 ふと、見られていたことに気がついたのか、京華がこちらへと振り向く。


「兄さん?」


「……いや、京華、お前はボケなければ、完璧な妹何だな、と思ってな……」


「何言ってるんですか兄さん、私を薔薇科の落葉低木みたいに言わないでください」


「植物のボケじゃないからな?」


「じゃあなんですか? アフリカのギニア共和国の西部に位置する都市のことを言ってるんですか?」


「ボーキサイト鉱山が有名なギニアのボケ州でもねえから」


「兄さんはボケについて、結構詳しいですね。さすがは私より四回多く誕生日を迎えているだけのことはあります」


「……それって褒められているのか?」


「もちろん!」


 満面の笑みでそう言われると、そう思えてしまうのも厄介なものだ。


「はいはい、んじゃ続きをやるぞ……。砂糖を溶かし切ったら、それを冷やすぞ」


「──それで冷やしたものがこちらになります」


「──いや!? 何でもう冷やしたもんがあんだよ!? 三分クッキングかっ!!?」


「え? 料理番組では常套手段かと思いますが?」


「これは料理番組じゃねえよ!?」


「ええ!? そうなんですか!?」


「どこに驚く要素があんだよ!?」


「──それで私が驚く要素がこちらになります」

 

「どゆこと!?」


 本当にどうゆうこと!? 

 驚く要素なんて食材でもあんのかよ!!


「まぁいい……その冷やした奴を使うぞ。あっ、ちゃんと冷やす前の奴も使うから、適当な器に入れ替えて、余熱をとっておいてくれ」


「ラジャー!!」


 ささっと器に入れ替える京華。

 

「じゃ、その砂糖を溶かした牛乳に卵を入れてよく混ぜてくれ」


「はーい! 任せて兄さん! 私エッグカッターの京華って学校で呼ばれているから!!」


「いや何そのださいあだ名は!? それっていじめられているんじゃないよね!? 大丈夫だよね!?」


「何言ってるの兄さん? 私このあだ名とっても気に入ってるのに」


「気に入ってるんだ!?」


「夜も寝ずに頑張って考えたんだからね!!」


「自分で付けたあだ名なのかよ!? お前のネーミングを考える回路はどうかしてるぜ!?」


 こいつは学校にちゃんと友達はいるのだろうか? 兄さん、少し心配になってきたぞ?


「さぁ兄さん? 卵は四つとも綺麗に殻が一つも入ることなく割れたよ?」


「──はっ! いつの間に!!?」


 自称エッグカッターの異名は伊達ではなかったようである。


「それで兄さん? 続きはどうするの?」


「……あぁ、次はその混ぜ合わせたものを、濾し器で濾すんだよ」


「……こす?」


 ……ああ、濾すという言葉ってのなかなか使わないからな。料理をあまりしたことのない京華では知らなくても仕方ないな。  


 と、思ったが京華は閃いたように目を輝かせ声を上げる。


「こすってアレですよね! 会員制倉庫型店の!」


「それはコス◯コだ!」


「じゃ、じゃあ! あれですね! よく私がやってるアニメやゲームなどのキャラクターに扮する行為のことですね!!」


「……いや、それはコスプレだ──って!? 京華!? お前コスプレやってんのか!?」


「うん、私の唯一の趣味だよ」


「……十四年間一緒にいるが初めて知ったぞ?」


「気がつかなかった? 私、ずっと兄さんの妹のコスプレしているんだけど?」


「きづくか!? それはコスプレじゃなくてただの素じゃねえか!!」


「だってほら、今もニーソックスとか履いてるし」


 チラリとスカートをめくり、ニーソを見せる京華。


「お前の妹キャラに対する認識ってどうなってんの!?」


 もうガチで、やらないと本当に日が暮れそうだ。もう妹に構ってられない。超特急で終わらせないと。


「濾すってのは、この濾し器に通してやればいいんだよ。これをすることで口当たりが滑らかになるんだ」


「へ〜、なるほど」


「んで、濾したプリン液を型に入れると……」


「……型にはまるだけとは、プリンって奴は何とも面白味のないお菓子なんですね」


「──そういう意味の型じゃねえから!!? お前はプリンに対して、一体何を求めてんだよ!!?」


「プリンには、もっと型にはまらずに柔軟性と独創性を目指していって欲しいのです!!」


「そんなことしたら、柔軟性だけのただの甘い液体になっちまうだろうが!!」


 はぁ〜、もうダメだ。ついついツッコミを入れてしまう。いかんいかん。これでは妹の思う壺だ。しっかりしないと。


 俺は、カラメルの入った型にプリン液を流し込み、それを薄い布巾を敷いた厚手の鍋に並べる。そしてプリンの器に入らないように水を半分くらい浸るまで入れていく。


「……おおっ、何だかそろそろ完成間近って感じですね!」


「……誰かさんが、邪魔しなければもっと早く完成していたがな」


「誰かさんとは二千年にリリースされたザ・ドリ◯ターズのアルバムに収録されている曲名の事ですか?」


「お前いくつだよ!? 何でそんな昔の曲知ってんだよ!?」


「よく八時には呼ばれていたので……」


「知るか!! ……ったく」


 京華のボケに付き合っていると、本当に終わりが見えない。プリンはいつになったら出来上がるのだろうか? 


「じゃ、あとは蓋をして中火で熱し、湯気が立ってきたらごく弱火にするんだね?」


「──急に真面目になるなよ!? びっくりするだろうが!?」


「何言ってるの兄さん? 私は常に真面目だよ?」


「……真面目という字すら知らなかったはずじゃねえのかよ」


「三国志の呂布の言っていたでしょう? 男子、三日会わざれば刮目して見よ……って」


「それを言ったのは呂蒙だし!! 加えてお前は男子じゃねえだろうがっ!! 何もかも間違えてるよ!!」


「あっ、兄さん? 湯気が立ってきたから弱火にするね」


「……だから急に真面目になるなって。何か調子が狂うだろうが」


 京華がコンロの火を調節する。

 これであとは、二、三十分蒸して、粗熱が取れたら冷蔵庫に入れて冷やして完成だ。

 ふう、何とか完成まで持っていくことができた。俺グッジョブ!!


「あと少しで完成だね! 手伝ってくれてありがとう! 兄さん大好き!!」


 ガバッと抱きついてくる京華。

 十四歳ながらなかなか発育のいい妹であった、兄としてどこか誇らしい。どこにだしても恥ずかしくない妹である、見た目だけは。


「……はいはい、俺も好きだよ」


「……えへへ〜」


 頭を撫でてやると、うっとりしたように表情を緩ませる。この可愛い笑顔を見ていたら今までの言動などまるで気にならなかった。

 

 それからしばらく鍋の粗熱が取れるまで、俺と京華は学校でのことなどの世間話をするなどして時間を潰す。  


「……よしっ、三十分たったな。後は冷蔵庫に入れてっと」

 

 粗熱の取れたプリンを鍋から取り出し、冷蔵庫へと入れていく。その様子を妹が真剣な表情で見ている。


「どのくらい冷やすの兄さん!? プランク時間くらい?」


「マックス・プランクによって提唱された時間の最小単位じゃ素粒子すら冷やすこともできねえよ!?」


「……兄さんは難しい言葉をいっぱい知ってるね。ワタシカンシンシチャッタヨー」


「てめえ!! 馬鹿にしてんだろ!!?」


「いやだぁ〜兄さんは。馬鹿になんてするわけないでしょう? そんなことしたら馬と鹿に失礼でしょう?」


「──やっぱり馬鹿にしてんじゃねえか!!?」


 と、妹との会話を楽しみつつ、俺はプリンが冷えるまでの小一時間を過ごすのであった。




 小一時間後。

 プリンが固まったかどうか確認し、冷蔵庫から取り出すと妹が完成の雄叫びをあげた。女の子なのに……。


「かんせ〜い!! おめでとう! わーっ!! きゃーー!!」


「はいはい、んじゃ食べますか」


 取り出したプリンとスプーンをダイニングテーブルに置くと、京華はもうすでにちゃくせきしてスタンバイしていた。こういうときは、行動が迅速なやつである。


「ほら、京華。お前が食べたがっていたプリンだぞ? ありがたく食えよ」


「ほわぁぁぁぁ〜〜!! 美味しいぃぃぃぃぃ!!! ありがとう!! マジ親に感謝!!!」


「……いやプリンを作った俺にも感謝しろ」


「兄さん! 産んでくれてありがとう!!」


「産んでねえよ!? その感謝は母親にするもんだろうがっ!!」


「そうだった! ありがとう兄さん! 大好き!!」


「……どういたしまして」


 幸せそうな妹の顔を見ていると、なんかこう作った甲斐があったというものだ。


「……俺の分も食べるか? 京華」


「……えっ? いいの? ありがとう!」


 すぐさま受け取るパクパク食べ始める京華。

 頬杖をついて、俺はプリンを食べている妹を眺める。すると京華が俺の方へとプリンをすくったスプーンを差し出す。


「兄さんもどうぞ! あ〜ん」


 たまにはこういうのも良いもんだな。


「あ〜ん」


 パクリと一口。


「美味しいですか?」


「ああ、上手い。我ながら良い出来だ」


「当たり前です! 何てったって私の兄さんが作ったのですから!!」


「はいはい、ありがとうよ」


 妹からのその言葉が、俺にとって一番甘く身体の中に入ってきた気がした。












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