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87)10歳 8月22日―11月39日 綿と妻の誕生日と税金

 四月の頭に植えた綿が取れた。これどうしよう、この量なら売ってもそんなになるとは思えないし。まあ、ボウアに渡すか。ウチで綿を買う必要が減るからな。これだけでも儲けものだ。しかしな、四月から八月か。これも無理すれば、一月から五月、そして、六月から十月と年二回は収穫できるよな。うーん、問題は肥料か。これは馬が来るまでは綿を植えるのは年一回に抑えて置いたほうがいいかな。


 ちなみに妻は凄く喜んでくれた。いっぱいチューされたよ。俺がコメでヘンになるのなら、ボウアは機織りでヘンになるのかな。


 九月二十日はボウアとサヒットの誕生日だ。で、今回はサヒットの家に集まった。俺たちの家と同じように丘の上にあるから見晴らしもいい。最初にお邪魔したのは俺の家族四人とアヴィンだ。このあと少ししてお義父さんとお義母さんにノーラ義姉さんとガヴィンとガレンが来た。


 それにしてもやっぱりこの家は広いな。普通の家より一回り大きい。あれ、樽がもう一個あるぞ。それになんだこれ繋いであるのか?


「おいアヴィン、あれはお前がしたのか?」


 と俺がパイプを指さす。


「ああ、サヒットが乾季に備えるために樽をもう一個作ったんだよ」


「いや、樽じゃなくてあの下の方にある筒だ」


「ああ、あの銅の筒ね、あれは樽と樽を繋げるためだよ」


 ヤマトが銅か~っていってる。蛇口も同じ色だろ。どうかしたか。いや今のはたまたま偶然だよ。そんないつも駄洒落を言ってるか、俺は? まああとにしてくれ。


「なんで?」


「だって繋げればこっちの樽で使った分の水は自然にあっちの樽から補充されるだろ」


「と、いう事は俺はわざわざ外の樽に行く必要がなくなるってことか?」


「まあ、繋げればな」


「おい、じゃあウチでもしてくれ」


「いや今すでにあるのには水が入ってるからできないし、新しいのにやってもいいけどタダはダメだよ。コーラさんにもティルガン親方にも言われているんだ」


「うーん、サヒットの作った新しい樽っていくらになるんだ?」


「まあ、主な値段は樽になるかな。だからサヒットにも聞かないと。俺はあれとか蛇口を作ったら自分の樽をタダにしてもらう予定だから」


 まあそうか。でこのあとなぜパイプで繋げたのも納得した。なんでも水の性質上二つの入れ物を繋げると片方の水が減っても増えても、自然に水の高さが均されるらしい。なのでこうすることで雨水を入れる所も一つで済む。だからサヒットは直径五メートルのを作る時アヴィンとも相談してパイプを付ける穴を最初からこの二つの樽につけたらしい。あと銅にしたのは恐らく鉄なら水で錆びるからだろうとヤマトが言ってた。こいつらは俺のいない所で色々とやってんな。本当にアヴィンの所も蛇口御殿になるぞ。


 このあとボウアの家族たちが来たところで誕生日の宴が始まった。お義父さんが清酒を持ってきたからサヒットも俺も少し酔ってしまった。笑えたのがセヴリナが。


「ママ、伯父ちゃん何歳になったの?」


 って聞いて、それにすかさずサヒットが両手の人差し指を立てて


「十一歳!」


 って返したことかな。あんなの子供時以来してないわ~。


 そしてそんなこんなで収穫も過ぎて、結局今年は今の所全部で六十四袋分の白いコメが取れた。うーん、税金には六袋足りない。でもこの分なら去年取れたお米を回しても今度の大雨の前の収穫でなんとかなるかな。本当にギリギリだな。


 という事で親父から荷馬車を借りて、税金を納めに村の倉庫に七十袋のコメを持っていった。何言ってんだヤマト、ちゃんと精米したのは玄米で納めると十四袋になるからだぞ。精米してないから少し多めに取られるんだよ。今はそんな余裕ないよ。


 ああ、やっぱりこの時期だ村長もちゃんと倉庫にいるな。


「ノックス、税金ちゃんと払えるのか」


 おい、なんで村長のあんたが驚いているんだ。ちゃんと払えって言ったのは村長だろうが。


「はい、今年の収穫を全部回せばなんとかなりました」


「え、じゃあ来年食べる分のコメはどうする」


「大雨の前にもう一回コメを作るのでそれでなんとかしようと」


「それは綱渡りじゃの」


 ああ、こっちでは雨が降ってから苗を作るからかなりのかけになるんだよな。ウチは苗は雨が無くても育てて大雨のひと月前に収穫するから綱渡りって感じはないなあ。


「まあ、なんとかなると思います」


「お前がそう言うのならば儂も何も言うまい」


 それにしてもこの倉庫にはコメ袋が詰まってるなあ。山のようだ。まあ、村の百の家族分のコメか。え、ああ、そうだな。厳密には違うな二十三超えた老人が家長の家は払わなくてもいいし、職人は金貨か銀貨で払うからな。でもなヤマト、八十家族が払うとしても五千六百袋だろ。すごいよな。いったい王都ではどんだけコメが必要なんだ?


 とまあ税金を払ってすぐの十一月三十九日の村の祭りに参加だ。


 なんか初めて本当に一人前になった気がする。独り立ちってやつだな。ああ、これで皆ガンガンこの時飲むのか。わかったわ。これは税金の事を考えずに済むって解放感だな。ヤマトは税金払ったことがないからわからない? まあ、そんなもんか、俺もこの気持ちは初めて知ったからな。


「あ、じいじ~、ばあば~」


 テメシスがもう走り出してる。


「リナも~」


 まあいいか。


「おーい、親父、母さん」


「お義父さん、お義母さん」


 まあ、テメシスが突撃してったから俺たちがいることは気が付いてるよな。セカナとアンカムナも大きくなったな。あれアヴィンがいないな。


「アヴィンは?」


「ああ、アヴィンなら向こうに行って手伝ってくるとかいってたわよ」


 と母さんが料理のある方向を指さす。ああそうか俺たちもあとで行くか。俺もボウアを見ながら


「俺たちも手伝おうか」


「そうね、子供達をお願いしてもよろしいですか?」


「うん、問題ないぞ」


 なんでここで親父が偉そうにすんだ。まあ、いいや。子守りは頼むぞ。


 と二人で祭りの手伝いをしに歩きにいった。


「税金ありがとうね」


「何を言ってるんだ」


「だって綿花を植えたでしょう。あれって私にも税金の負担をしてね、って意味だと最近思ってたのよ」


 なんでそんなこと思うんだ? あれはただ畔が広いし、今は馬も家にはいないから、なんか出来ないかと思っただけだよ。


「私もね、あそこに住むんだったら機織りの収入を家計の足しにするのはまあ当然かなとは思ってたのよ。でもあなた、全部払っちゃうんだもん」


「ああ、機織りの収入はボウアが大事に取っておいてくれ。本当に大変な時は頼るから」


「うん、任せて」


 ああ、こういう家族の笑顔を見るためにパパたちは皆頑張ってるのかな。


 そしてこのあとは村の人たちとワイワイ料理を作りながら、食べながら祭りを過ごした。今回の話題の筆頭は水車だったな。なんでも村の中心部に近い所にこの乾季の間にもう一つ作るらしい。


 今回の祭りでボウアが村の女性陣から滅茶苦茶褒められてた。まあ、洗濯機はすごいよな。でも酔わせることはないじゃん。娘たちがちょっと心配していたぞ。


あと十話で終わりです。ここまで読んでくださりありがとうございます。

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