79)9歳 11月1日-17月1日 三度目の乾季
今日から長い乾季がまた始まる。三期作の収穫も終わり娘たちの分のコメも手に入った。だからこそ、この乾季は家族でここで乗り切らないといけない。村に避難させて乗り切ってもここで暮らせる証にはならない。今月の終わりにタラン様に雨を感謝する祭りがあり、その次の月に終わりに俺の誕生日がある。それまでに成功するか失敗するかわかるだろう。なので、俺は乾季が始まってからほぼ毎日樽の水を図っている。もはや日課だな。
一応アヴィン型の樽は直径が四メートルで高さが二メートル二十センチくらいある。だから容量は一つ二十七トン以上だ。これはロウ板でヤマトと計算したから間違いない。そしてこの樽が二個あるので計五十五トンくらいある。
これから毎月の朔日に樽の水量を図ろうと思う。家の樽が現在三分の一の目盛りの所に来てるからこっちはすでに十八トンしかない。まだ外の樽がまだ満タンだから問題はないと信じたい。この月は棚田を作ったのと月の終わりに祭りに行った。娘たちと村でたらふく牛肉を食べたわ。
十二月朔日。水量を図ったら家の樽は三分の一より少しあるくらいだ。半分に足りない。雨が降ったら家の裏の丘を見に入ってる。すっかり忘れていたが、木はしっかりと生えているし、食べかけドーナッツはかなり上手く行ってる。隙間があるからそこから水が逃げるかなと思ってたが、乾季の時の雨なら基本貯まるだけであまり水が逃げないみたいだ。もしアヴィンが暇ならアイツも誘って、丘の反対側もそうしてやろう。
十三月朔日。水量を図る。家の樽はほぼ空だ。なので今月からは外の樽を使う。先月は色々あったな。まずノーラ義姉さんさんが子供を二人産んだ。娘さんたちだ、名前はブリジットちゃんとブリーナちゃんだ、なんでも母さんにあやかったらしい。ボウアと子供達はその時一週間帰って義姉さんの世話をしていた。そして帰ってきたら、今度は俺の誕生日だ。今回の誕生日はそこそこ楽しめた。妻と娘たちがかわいい。まあ、やはり心配だったから心の底から楽しむってことは出来なかったが。あとアヴィンも略式だが俺の西隣の敷地を貰った。あいつは俺たちの誕生日の前に村長の所に行ったらしい。これでアヴィン、俺とボウア、サヒット、と土地が並ぶとはな。子供のころまさかこんなことになるなんて思ってなかったよ。そして、今日開拓生活の三年目が始まる。来年からは税金を払わなければならない。ようやく水問題が解決したんだ、これで税金で失敗したら洒落にならん。何言ってんだヤマト、全然面白くねえよ!
十四月朔日。水量を図る。家の樽はまだほぼ空だが、雨も少し降ったので少し増えた。外の樽はまだ四分の三分以上ある。棚田を作りアヴィンを手伝って丘の上のほうから食べかけのドーナッツを作っている。雨季が始まったら、アヴィンも木を植えないとな。
十五月朔日。水量を図る。外の樽はまだ半分以上ある。乾季はあと二か月続く。雨も一応は降る。が降雨量は少ないよな。家の樽も少し増えたがまだ四分の一もない。アヴィンと二人で協力すると色々な工事がはかどる。なんでだろう。不思議だ。まあ、それはいい、
十六月朔日。水量を図る。外の樽が三分の一しかない。が家の樽も三分の一ある。これは何とかなりそうだ。雨季最後の月なので苗も作る。
十七月朔日。水量を図る。外の樽がほぼ空だ。が、家の樽の水がほぼ半分に戻った。なのでこの月は家の樽から使う。そして乾季もこれで終わりだ。やった、なんとか乗り切った。田植えの準備も出来たし、棚田は十七枚に増えた。ただまあ誤算だったというか前々から気付いていたというか、棚田が丘をかなり下ってここから下だと水はけが悪くなる。当初思っていたように横に二枚下にドンドンは無理だったな。え、ヤマトはかなり前から気付いていた? まあそうだよな。俺もあんまり考えないようにしてただけだからな。まあ隣に広げるしかないな。
ふう~。しかし何はともあれ今はこれが言いたい。
俺は乾季に勝った。ちがうな。
俺たちは乾季に勝った!
俺たちは乾季に勝った!!!
これこそが本当に世界に勝つとということだと思います。過酷な環境で暮らす人々はすごいと思います。