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73)9歳 21月39日 二度目の年終わりの祭り

 大雨の降ったあと俺は丘のドーナッツを見に入った。無残だわ、あちこちで壊れてる。普通の雨ならドーナッツでも問題ないんだが、大雨はだめか。木の根っこ近くに作った小さいドーナッツならすぐ溢れるから問題ないのか。うーん、やっぱり水を逃がす道を作ってあげないとダメだな。というとどこに逃がす道を付けるかな。


 ちょっと親方が作ったため池を見に行くか。おっしゃポチ、シロ行こう。あ、ついでにアヒル達も持って行くか。


 アヒル達がため池で遊んでいる。ポチはアヒル達を見てるがシロは俺の足元で寝そべってる。


 うーん、親方のため池は凄いな。穴掘っただけじゃないよなこれ。掘った土砂を主に穴の周りに積み上げただけだとあの時は思っていたが、これ違うよな。どうなってるんだ。これは地形を利用して、水をここに誘導してるんだよな。そして、穴に貯めている。だから積み上げるのはどっちかというと下の方所なのか。上の方はどうなっているんだ。ああ、こっちとこっちにある小さい尾根を利用してるのか。これなら大雨を待てば水が一気に貯まるから別に石灰石で底を固めなくても良かったのか? え、俺のあれ徒労? ああ、そういうのは考えてはいけない。うるさい、ヤマトの言うポジティブシンキングってやつだよ。いや、現実逃避じゃないから。


 話を戻そう。俺もドーナッツを作るときに尾根を利用すればいいのか? あれ、でもそうすると水が逆に早く下に落ちるな。こっちでは池に貯めるのが目的だからそれでいいのか。で、俺があっちの丘でやりたいことはそれの逆だからドーナッツで貯まる水を尾根のほうに寄せるように変更すれば、水が貯まってから逃げるか。


 まあ、大雨は来年までもうこないから、徐々にドーナッツを改良していけばいいか。これはまあこれからは棚田と並行してやっていこう。なにしろドーナッツの残ってるところはそのまま使えばいいだけだからな。


 そのほかにも俺とボウアはサヒットに水車と飛び杼の事を話した。飛び杼のことはサヒットもこれはすぐ出来るから問題ないと言っていったが水車に関しては親方とも相談しなくてならないと言って帰った。


 そして海辺に行って、海水を桶に汲んで塩を作ったり、棚田作りとドーナッツの改良をしてると大雨の後の祭りの日が来た。


「ああノックス来たな。親方と村長の所に行くぞ」


 ボウアと別れてからサヒットがすぐ来た。


「へ、祭りじゃないのか?」


「ああ、祭りだけど、今なら皆いるからちょうどいい」


「おい、俺は抽選が見たいんだぞ」


「心配すんな、抽選ならお前が来る前にもう終わってる」


「ええ、今年はそんな早く抽選をしたのか?」


 なんなんだ見たかったのに、あのドキドキが楽しいんじゃ。


「で、今年は誰の牛になったんだよ?」


「ああ今年はブロガンの親父さんのだ」


「ああ、見たかったわ」


 ヤマトも見たかったと言ってるじゃないか。


「そんなの来年見ればいいだろ、毎年やってんだから」


 げ、なんだこれ。ほんとうに皆いるよ。村長に相談役の人たちに大工のティルガン親方、石工のケーシーさん、鍛冶のコーラさんもだ。ああ陶工のキーラさんや機織りのケーバさんは女性だからこっちにはいないのか。


 でなんで俺がここにいるのと思ったくらい俺抜きで話が進んでいく。最後にどの辺ににこの水車を作ろうかって時になって親方が。


「俺はやっぱり水車小屋はノックスとサヒットの土地のどっちかに作ったほうがいいと思う」


「なんでじゃ、あんな辺鄙なところに作っても不便だろうが」


 まあ、村長の言うとおりだよな。


「いや、ノックスの暮らしが成功したら村があっちにも伸びるかもしれないし、最初に作るヤツは失敗しても問題ない所に作るべきだと思う」


 親方ぁ~。


「あそこで試してその体験を役立てるのか。その時にもっといいのを便利なところでつくるのなら、村長、僕も賛成だよ」


 ケーシーさんも乗ったな。


「そなたたちはどう思う?」


 村長に意見を聞かれた相談役たちは結構まちまちだったな。水車なんて一個で十分だから便利なところに作ろうという人もいれば。出来ても使えなかったら無駄になるって意見もあったな。水車を二個作るのなら、小さいのを三つ四つ分散して作るとかも。


「じゃあサヒット、ノックス、もしお前たちの土地に水車を作ったとしても異存はないか?」


 それで俺たちはここにいるのか。


「まあ俺が言い出しっぺなので、異存はありません」


「村共有の財産になるから、もし重要になったらあの辺の土地はお前さんのものではなくなるぞ」


「まあ、あっちは水浴びと洗濯にしか今は使ってないので、これからもそう言う風にあの水と水車を使わせてくれるのならいいですよ」


 なに言ってるんだヤマト、こんなの俺たちが個人で作れる訳ないだろが。だからこうなるのは当たり前だろ。大体水車を俺個人が所有してどうすんだ。


「なら仮決定だ。この話は一応キーラとケーバにも通してあるから祭りが終わったら正式に決めようぞ。なに、ここにいる人たちのほとんど水車を作ることには賛成じゃ。問題は三個作るかだな」


 ほぼ決まったな。水車は俺かサヒットの敷地のどっちかにまず出来るな。


 あと今回の祭りではあまり酒を飲まずにボウアを迎えに行ったが、杞憂だった。娘たちがいたからかケーバさんも無理にボウアにお酒を進めることは無かったらしい。だからもう少し残るかいうことになったら。今度は俺が酔った。


 前回に引き続きまた俺の実家に泊まることになったよ。まあ親父も母さんも孫の顔を見て喜んでくれたから良かったけど。親父はアヴィンがアスダラから帰ったあとも引き続き茶臼を挽いるらしい。またコメ粉をもらったよ。え、春巻きに餃子? まあいいよ、鶏肉の餃子なら作れるんじゃないかな。春巻きみたいにペラペラなのはわからん。大体お前が作り方わからないかいからな。


 ああ、そうだなヤマト。本当に妊娠だな。母さんのお腹がこの年でこんなに大きくなるなんて思ってもなかったわ。


 おそらく年末、どんなに遅くても年初に俺はまた兄になるらしい。



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