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71)9歳 20月28日-29日 二つ目の樽

 大雨が来る前にドーナッツが終わりそうだ。ただそれを終わらせる前に家の水も忘れてはならない。家の北西に屋根を作るための竹の木材はこっちで出来るだけ用意した。そしてそこに泥レンガをでかい樽一個分敷いた。これで今日アヴィンとサヒットが新しいでかい樽を持ってきても大丈夫だ。面倒だからこれはアヴィン型の樽と呼ぼう。


「兄貴―、来たぞー」


 おおアヴィンの声が聞こえる。あああの荷馬車か、本当に脇からはみ出してるよな。というかあれは平たい荷台しかないな。うん、今日もしっかりとサヒットの弟弟子たちも来てるな。


「おーい、ありがとなー」


 手を振って答える。ポチとシロもしっぽを振ってる。あ、妻と娘たちも出てきた。


「だれくるのー」


 セヴリナは結構喋る。テメシスも喋るがセヴリナほどではないな。で、そのかわりこの子は良く泣く。自分の言いたいことが伝わらないもどかしさがあるんだろうな。


「サヒット伯父ちゃんとアヴィン叔父ちゃんがくるのよ」


「なんでー」


「水を貯めるおっきい樽を持ってきたのよ」


「なんでー」


「水が無いと困るからね」


「なんでー」


 あ、ボウアがこっちを見た。最近これが多いらしい。「なんでー」攻撃だ。なんか成長早くない? 俺こんな子供だったのか? 全然覚えてないからわからないわ。それとも親の返事が続いて欲しいから聞いてるのか?


 俺はしゃがんでセヴリナと目線を合わせて。


「おっぱいは水が無いと出来ないからね。おっぱい無かったらいや?」


「いやー」


 セヴリナの頭を撫でてるとテメシスも来たので撫でてやる。離乳食食べてるけど、やっぱりおっぱいがいいのかな。


 そんなこんなしてるうちに荷馬車が到着した。


「ありがとうな、場所はこっちに設置しよう」


「そうかわかった。伯父ちゃん達いまから仕事するけど、終わったらちょっと遊ぼうな」


「うん!」


 テメシスはサヒットが大好きだな。


 そのあとはさすが職人。仕事が早い。レンガの上に緩衝材を置いて樽を一回置いて蛇口がどの辺に来るか確認してから地面を掘る。そのあとに竹と持ってきた木材で高さ二メートル半の屋根を作る。そこに割った竹を使って雨どいを付けて、サヒットの新型ろ過樽につなげる。一応敷地は広く取って十八メートル四方にしてある。いったいどのくらいの広さで雨水を集めることが出来るのかわからないからな。しっかし、十八メートルはでかいな。アヴィン型が十六個も入るわ。何言ってんだヤマト、ボウアはそんなにポコポコ産まないだろ、兎じゃあるまいし。


 屋根と樽の設置が終わったら俺がちゃんと排水溝を掘らないとな。でも今回はヤマトが思い出した三和土があるから使ったら滅茶苦茶固くなると思う。ヤマトがそう言ってる。耐水性がある日本のコンクリートみたいなものだって。まあだから使う場所は厳選しないとな。大体どのくらいにがりを使えばいいのかもわからないしな。


「なあなんでこの屋根こんなに大きいんだ?」


 サヒットが聞く。


「だってどのくらいの水を屋根が集めるがわからないから、とりあえず家の屋根より大きくした」


 家の屋根はもともと十三メートル×十七メートルだったからな。


「無駄にならなければいいんだが」


「大丈夫だよサヒット、無駄にはならないよ。兄貴の所にこれだけの屋根があったら、樽を置かないところは道具とかコメを置く高床式の倉庫を作ればいいんだよ」


「ああそうだぞ」


 ここは乗っかっておこう。そうだな倉庫にすればいい。露天風呂? しつこいなあヤマトも。


「まあ、それはいいが、一応俺たちの木材も使ってるから借金が膨らむぞ」


「は?」


「当たり前だろが、樽だけで二個で馬一頭だ。今度は屋根とかの費用だよ」


「お前ふざけるなよ! ロウ板で稼いでいるじゃねえか、それで手を打てや」


「いやいや、仕事は仕事だぞ。俺もこれからは家持ちだからな」


 ニッコリしやがった。く、この野郎。


「まあまあ、俺のは樽だけだから余分の費用は大工用だけだよ」


 アヴィンよお前は良心的だな。


「はあ、まあいいや。いくらだ」


「うーむ、この費用は屋根だけだからな。しかも板ぶきだろ、俺もよくわからないんだよ。ただなタダはよくない」


 うわあ、寒いな。


「おいそんな目で見るなよ。洒落じゃねえか」


「屋根だけなら金貨一枚とかか?」


「あー馬の三分の一か。まあ、それよか少なくてもいいぞ、今回は簡単な奴だったし、お前も竹を提供してるしな」


 じゃあ、銀貨四枚とかでいいのか? だったら鶏か兎四十八羽か。それともコメで払うか。うん? 銀貨一枚はコメ二十キロってか? そうだ、よく覚えてるなヤマト。でわら袋が一個四十キロだから。


「じゃあ、コメをわら袋二個でいいか?」


「ああ、まあそんなもんか、いいぞ」


 いやコイツは感覚で言ってるだけだと思う、これらの換算はおそらくしてないぞ。え? 人を騙せる? いやだよ、俺はそんなことしたくないよ。第一他人にバレなくても自分が悪いことしてるって自分自身にバレてるじゃねえか。そうか、お前もまともでよかったよ。あ、なに俺を試してんだよ!


 そのあとサヒットとアヴィンはテメシスとセヴリナと遊んだ。弟弟子のクライブとシュキーアとカヴァンも一緒に遊んでくれた。あんまり人見知りしないって? まあ村の子供達はたいていこんなもんだよ。でも確かにここは僻地だから似たような年の子たちがいないよな。それはちょっと気がかりだな。


 フフフ、そして娘たちと遊んだあと弟弟子たちは帰り、アヴィンとサヒットも帰ろうとしたとき俺は彼らに今夜はここで食べて、明日家に帰ったらどうだと提案した。見事に乗ってくれた。まあ、今日の感謝も兼ねて食事は海鮮だったから二人も喜んだ。清酒が無いのが残念ってサヒットが言っていたがな。アイツ酒に懲りてないな。


 次の日の朝。


「お前このために俺たちを昨日泊めたのか!」


「しかももう飯もおごってある。だからさっさと大雨が来る前に手伝えや」


そう俺たちは田んぼにて三人で一斉に稲刈りをしてる。


「まあ兄貴のことだからなんかあるかもとは思っていたが」


「いいじゃねえか、ここが終わったらお前らのとこも稲刈りの時に手伝うよ、どうせもうすぐだろ?」


「しっかし、この珍妙なものに干すとはな」


「いいだろ、これなら乾くのが早いんだよ」


「ああ、地面についてないからか、考えたな兄貴」


「へっ、手、動かそうぜ」


 まあ、ここはヤマトのテレビがすごいんであってヤマトではないな。だからお前が自慢することではないぞ。


 そうして無事に大雨が来る前に稲刈りと乾燥、そして排水溝を掘る事は出来た。ドーナッツは完成できなかったな。


 実家とサヒットの家でも無事に稲刈りと乾燥は出来た。


 あとは脱穀か。どのくらいコメが取れたんだろう。

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