表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
70/97

70)9歳 19月14日-20月29日 ロウ板再び

 田植えが終わってから俺は西の丘に一所懸命に半分のドーナッツを作ってる。なんかこれなら大雨が来る前にあらかた終わりそうだ。別に深く掘りを掘っているわけではないし、半分だけで済むってのも大きい。あと家までだからとりあえずの上の方だけだしな。俺が一人で東の大きい丘でやったら一年以上はかかるだろうな。うーん、一応下のほうまでやった方がいいのか?


 で、今日もまたサヒットの小屋だよ。なんか最近ここに呼ばれることが多くなった。


「なんかないか」


「なんかないかってここお前の小屋だろ、お前がお茶とか出す方だろが」


「違う違う、そっちのなんかじゃない。なんかいい案はないか?」


「なんの案だよ?」


「だから俺が婚約したの知ってるだろ」


 村は小さいからすぐ知ったわ。あとニーヴが怒ってるのもな。


「で? あ、そうだ。おめでとうございます」


 ニッコリ。あ、露骨に嫌な顔された。


「違うわ、だからこれからは俺も税金を払わなければならないだろが」


「ああ、そういうことか」


「まがりなりにもここは家として扱われてるんだ、それに結婚もしたら即独立した家だ。税金を払わなければならん」


「まあ、そうだな」


「で、俺の場合は猶予はあと一年もない」


「まあな」


 村長にこの土地を貰って時に税金の猶予は二年、て聞いてるからな。コイツも独身だったら役人もまだお義父さんとこの一員として扱ってくれたと思うが。結婚して、家もあったらなあ。


「今からここの開拓、間に合うと思うか」


「いやいやいや、無理無理無理」


「だよなあ。それは無理だよなあ」


 まあコイツは俺の苦労を見てるからな。


「だからなんかないか?」


 そう言う意味だったか。うーん。ヤマトはいやに静かだな。え、協力したくないって? なんで? 結婚するから? いいじゃねえか、いいことだぞ結婚は。ああ、はいはいわかったよ。


「うーん」


 サヒットとは色々やってきたが、ヤマトが来てから俺たちが最初に作ったのはロウ板だったな。そう言えばロウ板って豪華な装飾がされてたって前ヤマトが言ってたよな。それをやってみるか。


「なあ、お前ロウ板作れるだろ」


「ああ、結構作ってる。この前アヴィンにも作ってやったし、色々使う人が多いぞ」


 あ、しまった。アヴィンに作ってやるの忘れた。というか親父と母さんにも作ってないぞ。今度アヴィンに言おう。


「ならさ、こんどプロガンに頼んで王子港にて売ってもらおう」


「でもそれだけじゃ、大した額にはならんぞ。それにあんなの誰にでもできるし」


「だからそこにお前しかできないことを付けたすんだ。あの外側の板の所に馬とか犬とかの彫り物をしろよ。ガヴィンとガレンにしてやったようにさ」


 売れたわ。なんでもあれからは王子港や王都の商人がブロガンから買ってるらしい。単に板の箱にロウを入れたものなら結構早くに模造品もでてかなり安く手に入るらしいが、サヒットみたいに装飾品となると別だな。こうなるとセンスが問われる。で、まあ幸運なのかな、イーヴのセンスがそこそこいいらしい。


「でもなんかもう少し欲しい」


 またこの小屋に来たよ。前回から一か月ちょっとしか経ってないぞ。


「でもなあ、俺も今以上にいい案はないぞ」


 と、言うか大雨が来る前にドーナッツを終わらせたいんだよ。雨が降るたんびにあれの効果が見える。かなりすごいぞ。水を一時的にせよ貯めるんだよ。多すぎたら溢れるが、それでも雨が上がったあともかなり長いあいだ湿ってる。そこに葉っぱとか色々と流れてくると水と混ざってもっと湿る。まあ、ロウ板に話を戻すか。


「なあ、俺の親父と母さんのために二個ロウ板作ってくれないか? アヴィンとはもう相談してあるから、アイツは鉄筆をロウ板につけてくれるそうだ」


「ああ、そうか懐妊したと聞いてるぞ。おめでとうございます」


 あ、こいつニッコリしやがった。


「うー、悪かったよ。まあ、いいや、で、できるか」


「ああ、いいぞ、お前の案でかなり儲かったからな。簡単なやつならすぐにできる」


「そうか、ありがたい。じゃあ、親父のやつにはそうだな、果樹とか木の絵を掘ってくれるか?」


「問題ないぞ」


「母さんはなあ」


 うーん、なにがいいだろう。カレー? ダメだろう、なんか馬鹿にしてるように思われかねん。ヤマトも母さんへのプレゼントなら考えてくれるのか。ああ、一宿一飯の恩義ってやつは俺にもわかるぞ。


 いや兎はだめだろう。懐妊祝いにしてはあからさますぎる。馬や牛もな、家畜はだめだな。鹿なんてどう思う? おーお前も賛成か。あーそうだな小鹿とセットにすればいいか。


「母さんのは鹿の家族なんてどうだ? 鹿の夫婦、そして小さい小鹿二匹の四匹だ」


「あーいいんじゃないか、でもこっちは木よりも大変そうだな。いや、待てよ葉っぱもあるから木も大変か。うん、この家族ってのはいいかもな。よしこの案をいただくぞ」


「へ、そんなんでいいのか?」


「ああ、なんか最近煮詰まってきて、同じ感じのしか作ってなかったから売れ行きがちょっと落ちてたんだ。イーヴとも相談してこの家族で描くってのは色々な動物で試してみる」


 売れたわ。アイツ結構稼いでいるってボウアから聞いた。なんなんだ。俺が野良仕事してるときに、借金返済しようとしてるのに稼ぎやがって。まあ、いい。アイツはアイツだ。親友が儲かっているのなら喜んでやろう。


 そうそう。あれ、それ俺言ったか?「義理の兄が貧乏は嫌」か。へー、俺いい事言ったんだな。うるさいな、その場限りの口だけ男じゃねえよ。と、言うかやることが多すぎて色々忘れちゃんだよ。いいじゃねえか。


 で、そのあとさらにイーヴがサヒットの小屋にあった鹿の角を見つけてそれを彫ってロウ板にはめ込んだ物も作ったらしい。


 もっと売れたよ。サヒットめ、イーヴと婚約してよかったんじゃねえのか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ