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68)9歳 17月34日 田植えなどが被らないように

 良かった、田植えが被らなかった。どうやら実家でもボウアの実家でも田植えはもう少し先らしい。だからこの日アヴィンとサヒットに手伝いに来てもらうように頼んだ。一応このコメがアイツらへの返済金になるからな。


「で、なんでイーヴとニーヴがここにいるんだ?」


 俺はため池の前で四人と会いたいしている。


「わ、私はお父さんを助けるためにノックスの開拓がどのようになってるのか確認しに来ただけです。別にノックスを助けるために来たわけじゃないです」


「私はアヴィン君から色々聞いてちょっと興味があったから来ました」


「まあ、人手は沢山あったほうが助かるからいいけど」


 と思ってたよりも多い数の人が来たので八枚が一日で終わったよ。五人いたらぱっと終わるんだな。


 そしてこの日は夜をウチで食べて、一拍して帰ることになった。俺が出来るせめてものお返しだ。まあ帰るときに鶏か兎をも渡そう。数日後には俺は実家とサヒットの家での田植えを手伝うことになってるので、村長のところは俺の手が空いたころには終わってる。で、食べる前に女性陣は先に裏の小川に行って、水浴びをしてもらい。彼女たちが帰って来てから俺たちが水浴びに行った。そしてまた家の説明を一通りしてイーヴとニーヴが驚いてる間に晩御飯が出来た。サヒットは俺の失敗をそこまで事細かに説明しなくてもいいぞ、ほれボウアもちょっと引いてる。


 今日は客が来たから海鮮料理を振る舞いたかったが、時間がないのでボウアが鶏と兎を絞めた。で、いただきますをしたあと、これもまたイーヴとニーヴがちょっと気になってはいたようだが、それよりも今日の晩御飯の話題はこっちになった。


「あのような田植え初めてしました。ノックス君の家ではいつもああいう風に田植えをしているんですか?」


 ああ、兎がおいしい。おいしいと思う自分が嫌いだ。感謝をせねば。ニーヴも感謝して食べてくれ。


「いや、家では苗を育てているが俺もあのやり方は初めてだ、あれは兄貴が始めたんじゃないのか?」


 やっぱりな。ヤマトのやり方はかなり違うからな。実家とはかなり違ってるよな。


「ノックスではなくてサヒット先輩が始めたんではないですか?」


「いや俺もあのやり方は初めてだ。ウチは最近まで親父が田んぼに直播してるから苗を育ててなかった」


 あれ、じゃあサヒットのところは最近苗を作りだしたのか? 変だな前はしてたような気がするんだが


「あれ、お前の所は苗を昔作ってなかったっけ?」


「ああ、親父が税金を払ってる時は作ってたぜ。でもそれがなくなってからは直播だったんだよ。が、姉貴が帰ってきたからまた苗を作りだしてる。やっぱり苗を作ったほうがコメがたくさん取れるからな」


「ああなるほどね」


 うん、なるほどと思ったのはアヴィンだけじゃないはずだ。


「それでお母さんも私が家にいるならコメ作りと実家の野良仕事手伝いなさいってしつこくて。あ、ちょっと失礼するわね」


 それがケンカの一因か。ああ、セヴリナが泣いてる、おしめを替えないとな。アヴィン、お前まで行かなくていいんだよ。


「でもボウア先輩は確かジル婆さんに一人前だと認定されましたよね」


「私もそう聞きました」


「ああそうだぞ、我が妻はジル婆さんのとこから三番目に独り立ちした弟子だ」


「ハン、ノックスの威張るところではないですよ」


「まあ、そういうな、なんなら後で俺が妹のために作った機織り機を見せてやるぞ」


「ま、まあ、機織りに興味はないですが、どうしてもというなら見てもいいです」


 ああ、ヤマトの言うツンデレだな、面倒くさいな。大体サヒットももういい加減わかってるだろ、イーヴがお前に気があるってこと。ヤマトが見抜いてるくらいなんだから。なんだって? うーん、結構年が離れてるからな、そういう風に見えないのかもな。サヒットは九月生まれで、イーヴが八月生まれなんだよ。だから来年イーヴが七歳で成人するときにはサヒットは九歳と二十三か月、ほぼ三年の差の年の差カップルだな。え、これはお前のほうが早いだろ。そうかヤマトの世界での八歳差か、二十六歳と十八歳か。まあそんなに変ではないか。


「それよりもアヴィン君はどこに行ったのですか」


 ニーヴは直球でアヴィン狙いか。まあ俺もニーヴは普通にかわいいよ。いや、妹分としてだよ。なんでお前がそれで興奮するんだ。馬鹿か。


「アヴィンは多分ボウアと一緒でテメシスとセヴリナを見に行ってると思う」


「テメシスちゃんとセヴリナちゃん可愛いですよね」


「ああ、そうだぞ、ニーヴもわかってくれるか!」


「子供は大好きですよ」


 おお、やっぱりいい子だ。


 とまあ夕食は和やかに進み皆その日はそれぞれの部屋で寝た。俺たちは子供達と一緒にベッドルーム。アヴィンは北西の樽の見える部屋。サヒットはその隣の西向きの部屋。イーヴとニーヴは俺たちの隣の東向きの部屋だったな。


 で、次の日の朝早く起きて、俺は衝撃の事実を二つ知った。朝、顔を洗っているときアヴィンも起きてきてちょっと話があると言って俺を家から少し離れたところに引っ張っていった。そしてなんと我らが母が妊娠してる事を弟に教えてもらった。


「うそだろ」


「本当だって」


「いやだって母さんはもうすぐ十八だぞ」


 そうだよ、ヤマトの言うおばさんだよ。ああ四十代の終わりくらいだな、アラフィフってやつか。


「まだ二十前じゃん」


「いやいやいやありえんだろ。ただ来てないってだけなんじゃないか?」


「いや、母さんが父さんと俺にこの前言った」


「うそだろ」


「本当だって。て、これさっき言ったよ! いい加減認めろよ!」


「シー!」


「あ、悪い」


「で、どうなんだ」


「いや、生まれて健康だったら、家は俺たちの弟か妹の物になるんじゃないか」


「ああ、そうだよな」


 ああ、ヤマトにはちょっと説明が必要だな。お前はなんか長子相続とか言ってるがこっちでは普通逆だぞ。長男とかだったら、十分大人なんだから、自分ひとりなんとか社会でやってけるだろ。だから子供達は上から順に家を出て行って、最後に残ったチビが家をもらう。なにしろ子供だからな、自分で己の生計を立てるなんて無理だろ。だからサヒットも出て行ったじゃん。あれはノーラ義姉さんが家に残ったら、ガヴィンかガレンが家を継ぐからだよ。おお、納得したか。珍しいなお前が俺たちの風習にすんなり納得するの。


「なに黙ってんだよ」


「ああ悪い、ちょっと考えてた」


 これどうなるんだ。


「まあ、俺たちの弟か妹が大きくなってから考えても遅くはないから。まだ生まれてないし」


「そうか」


「まだ信じてないのか?」


「いや、だってよ。テメシスとセヴリナにとっては自分より年下の叔父さんか叔母さんだぞ。色々おかしいだろが。が、お前がここまで言うのなら冗談ではないだろな」


 正直信じられないな。ま、今度実家の田植えに行った時にわかるだろ。


 そしてアヴィンと一緒に家に帰ろうと思った時に家の竹の向こうでサヒットがつま先立ちしてるニーヴとチューしてた。


 おいおい、どうすんだこれ。え、見てないふりをしろ? は、お前から真っ当な忠告をもらったよ。明日雨でも降るんじゃないのか?


挿絵(By みてみん)

『みてみん』様に家の敷地の進捗状況を反映した図をアップしました。よろしければ参考にして下さい。

https://33111.mitemin.net/i473329/

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