64)9歳 15月20日 水浴びは大切
「おい臭いぞ。お前いつ水浴びした?」
「えっ」
サヒットが家に来るなり俺に向かって臭いなんて言いやがった。ヤマト、俺臭いか? ああ、臭くないよな。
「自分で自分の臭いはわからないんだよ。いいからさっさと裏の小川か、俺の小屋に行って水浴びしてこい!」
なんなんだ。ぶつくさ言いながら裏の小川で俺は水をしてから家に帰ってきた。ついでに忘れてた洗濯物の樽も持って帰ってきたよ。
「おい、服もちゃんと着替えろよ」
あれコイツまだ居間に上がってない。土間で何してんだ?
「ああ、わかった」
で、ベッドルームで着替えてきてから居間に戻った。
「で、なんだ」
「なんだとはひどいな、俺はお前が心配だから来てるんだからな」
「大丈夫だよ、水浴びしないくらいでは死なないよ」
「もういい。俺の頼んでたレンガはたくさん出来たか」
「ああ、乾季だからな、すぐ出来たぞ」
「よし、ならこっちこい」
とサヒットは土間から出て行った。
「で、そのレンガはなとりあえずこの辺に積んでおいてくれ」
と、今度は家の前の樽の近くを指さした」
「ああ、まあいいけど、あとで取りに来るのか」
「まあな、そんでレンガはそのまま作り続けておいてくれ」
と言うだけ言って帰っていった。なんだったんだ。
え、なんだヤマト? おう、俺が自堕落になってる? そうかあ? まあ、でも書くものは書いたし、レンガは作ってるけど、結構暇になって来てるよな。ああ、毎日の野良仕事がないし、あとはただコメと卵とここで取れる野菜食ってるだけだもんな。
え、塩作り? あー面倒だよ。どうせここを来月離れるんだぞ。え? ボウアへの置き土産? うーん、まあなにもしてないからいいか。
そしてその数日後、俺は待てなくて火を使って塩を作ってる時にヤマトが叫んだ。
「痛い、痛い」
頭の中で叫ぶのはやめてくれ。本気で痛いんだよ。ああ、え、にがりの使い道がわかった? なんだそれ。今ごろ豆腐ってやつを作るのか? え、豆腐じゃない? やっぱり作り方はわからないならなんで叫んでんだよ。おう、三和土って言うのか。ほう日本の伝統的なコンクリートか。まあ、いいんじゃないか。なんだよ反応が薄いって。だってしょうがないだろやる気でないよ。いまごろコンクリートって言われてもな。しかし、作り方はこっちの土間とほぼ一緒だな。にがりを足すだけか。うーん、にがりなら去年作ったのが少しまだ残ってるかもな。
しかしなんでヤマトは古代ローマとか産業革命は知ってるのに中世っぽい物事はうろ覚えなんだ? ローマが西洋の最初の頂点、で暗黒の中世があって、ローマをようやく超えるのが近代の始まりの産業革命か。はー、そういうふうに理解してたのか。だからローマはそこそこ好きで知ってるけど、中世は知らないと。
おい、ちょっと待て、と、言う事はお前は俺たちのことをその暗黒の中世に生きてる野蛮人と思ってたのか? あー、なんかもうどうでもよくなったわ。
まあ、そんだけだったな。はあ。
あ、一応あれからはちゃんとまた毎日水浴びしてるよ。