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61)9歳 12月35日 9歳の誕生日

 今日俺は九歳になった。日本で言えば二十三歳半くらいだとヤマトは言う。そしてこの誕生日は俺にとっては生涯忘れられない誕生日になるだろう。誕生日そのものは俺の家で集まり、良い誕生日だったと思う。家の説明はもはや定番となった、全員ここに来るのは初めてだしびっくりしてたよ。俺が驚いたのは親父や母さん以外にアヴィンも来たということだ。なんでも修行が早くも終わり一人前として認められたらしい。


 そして今日の料理もボウアの時みたく海鮮料理。親父は清酒も持って来てくれたからみんな少し飲んだな。俺は一杯だけ飲んで、ボウアは授乳してるからと言って飲まなかった。妻よよく我慢してくれた。あと家族が娘たちと遊んでるの見るのは良かった。テメシスとセヴリナはもうハイハイして動きまわってる、かわいい。あとこの家の段差は居間から土間に降りる時だけだから結構安心だ。


 この時は楽しかったよ。楽しいんだよ。料理も美味しい。家族とワイワイするのも大好きだ。でも楽しめないんだよ。ボウアは気付いているのか気付いていないのかわからないが、確実に水は減ってる。雨季から乾季に入る時は水が十トンあるから今回の雨季も大丈夫だろうと高を括っていた。でもな、俺の誕生日の時点で水が二トンちょいしかない。樽が一個一トンだから計算しやすいのも腹が立つ。確実に次の月は家族では過ごせない。この乾季は短い乾季と違って六か月あるんだ。


 ああ、これで今まで誰もここに住まない理由が解った。やっぱり無理なんだよ。去年の十三月一日に引っ越してきてからの俺の苦労はなんだったんだろう。一年かけて家を建て、木を植えて、動物を育て、棚田を広げて、作物を植え、収穫し、残るのは水が二トン。ため池を作ればコメは作れるって証明したぞ。しかもすでに三回も収穫できたんだぞ。人が一人で食うだけなら今の広さでここまでだけで一年分のコメも取れるし、棚田はまだまだ大きく出来るんだぞ。八枚しか棚田は作ってないんだぞ。計画では四十枚だぞ。菜園なんて先月作ったばっかりなんだぞ。なんでなんだよ。なんでなんだよ。


 新年に祈願しなかったからタラン様からの罰が当たったのか?


 いや、この年はこれが普通だ。神様は関係ない。タラン様も今年の雨季には来てくれた。


 俺は単に乾季に負けただけだ。


 だから楽しみつつも楽しめない誕生日を俺はこの日過ごした。この気持ちは説明できないな。


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