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60)8歳 11月15日 家庭菜園

 今は乾季だ。ちょっと暇はあるし、涼しいので本来なら野菜とか育てるんだが、俺は今の内に棚田を作りたい。出来ればあと五か月で三枚だな。え? 新鮮な野菜食べたい? 野菜なら実家から持ってこれるだろ。ああ、ヤマトの言うこともわかるぞ、実家の取れたて野菜は美味しいんだよな。冷蔵庫がないから野菜の鮮度もすぐ落ちるし。うーん、わかった。菜園を作ろう。お、ガードナー、英語での園芸家か、いい呼び名だな。はは、ノックス・ガードナーか悪くないな。トイレの代名詞になるよかはるかにマシだ。お前の所の苗字ってのはいいもんだな。まあ、水がどこに流れていくかわかっているからそれを考慮して作っておくか。あとゴミ箱の下のほうがそろそろ堆肥になる頃合いだし、ちょうどいいか。


 とまあ家庭菜園の大体の大きさを決めてから段々畑を作った。さすがに慣れたな。なんかもう黙々と作業するのみだ。とりあえず家の東側に小さな池を作ったから、池の水が溢れたらそこから自然に菜園に水が行き渡るように水路みたいなものを作ったし、大雨の時には水がそこから菜園に大量に流れこまないようにもう一つ水を逃がす水路も作った。野菜にとっては水はけも重要だからな。乾季なら池の水を汲んで利用だ。あとは降った雨がそのまま逃げないように池の周りとか菜園の上のほうにとかにも小さい堀と土手を掘って出来るだけ水を貯められるようにした。ただこれらの土手は高くないし、貯まり過ぎないように水を逃がす所もちゃんとある。娘たちもいるからあまり高い土手や低い堀は危険だ。デカいのは家の裏とか雪隠の周りとか水びたしに絶対になってはならないところだけだな。あと菜園の段々は四段だ。ヤマトがなんかノーフォーク農法の輪作とか言ってたからとりあえず四か所あればいいと思ってな。もっと敷地が必要なら土地に沿って伸ばせばいいだろ。


 問題はな日差しが強すぎると思うんだよな。と考えていると、ヤマトがここも育てるのに水がたくさん必要な柑橘系とかいいかもって言ったんだよ。確かに一応あれらは育つまで水が必要だが、一旦育ったら乾季にも耐えられるからな。でもなあもう結構植えてるんだよ。レモンとかポメロとか一杯あっても食べきれないしなあ。まあ、食べきれないのは親父にあげてもいいんだが。どうしよう。え? ジュースに出来るのか。ほおなんかすごいもったいない食べ方だな。よし、ならいいか。乾季が終わったら親父の所に行って苗とか貰おう。


 ここまでは三日かかったが順調だった。がこの次に俺は後悔した。やはりヤマトの言うことを聞くべきではなかった。いっつもこうだよ。まあまずは堆肥がどうなってるか見たんだよ。だって、堆肥が無けりゃ美味しい野菜とか果樹は育たないからな。そしたらまたなんで堆肥が出来るんだって話になって、お互い知らないから考えを寄せたら結局細菌だろうと言う話になった。家のトイレからでるうんこ見てるけどあれ堆肥になる途中だしな。うんこの堆肥は菜園では絶対に使わないがな。で、ヤマトがもし細菌なら生きてるので水だけじゃなくて空気も必要だって言った。なので菜園を完成させる前にゴミ箱をひっくり返す嵌めになったよ。


 うがあ、棚田も出来ないし菜園も完成出来んわ。しかもゴミ箱をいじってるとき妻にクサイって言われた。ショックだわ。


 え、なんでって? いや確かに堆肥使うよ。でもな堆肥ってのは一年かけてゴミを貯めて、もう一年かけてそれを堆肥にするんだよ。堆肥にしてる時はゴミを足さないんだよ、足したとしても乾季の時にコメのとぎ汁を足すとかそんなのだけ。まあ、急いでいるときは半年待つだけでも出来るときはあるんだが。で、だな完全に堆肥になった二年目の最後はもう臭くないんだよ。そう、だから俺たちが考えているように恐らく細菌だと思う。実家ではうんこでさえ最終的には堆肥になるぞ。普通は三年かけるな。いやいやいや、さすがに雪隠から作った堆肥は薪用とか食用じゃない木の根元に植えてるぞ。前も言ったが、気持ち悪いだろが。


 まあいい愚痴はここまでだ。空気の通り道を作らなければならないということは分かった。で、今までのやり方であるゴミを一年貯めて、一年待つというのも避けたい。だって新鮮な野菜を早く食べたいんだろ? まあな、俺もだ。なので堆肥をゴミからなるべく早く、臭くならないように作らないと。二年待たないで一年で出来るならそれでも十分だよ。


 ちょっと隙間のある一メートル四方の簀の子を作ってこれをちょっとした高床式にする。まあ、十センチもないがね。大丈夫、大丈夫だよヤマト。雪隠の近くなんだからちゃんと大雨が入らないように堀と土手があるから神経質にならなくてもいいと思うぞ。あと底が抜けないようにちゃんと補強もする。


 簀の子の上にはこれまた少し隙間を開けて板を交差させて敷く。この上にさらにわらを載せる。これで空気が下からちゃんと通るのか。こっちのほうが不安だよ。お前は不安じゃないのか。わかったよ。で、このゴミ箱もトイレのように大きい頑丈な板で四方を囲むが、西側の下に扉を付ける。これも動物にやられないようにしっかりと閉じれるようにしておく。で、最後にゴミ箱の中に太い竹の筒を六本いれる。右側に二本、左側に二本、奥の壁の中央に一本とど真ん中に一本だな。この竹の筒が空気の通り道になるんだな。そして竹そのものにも穴をあちこちに空けて、この竹は下の板と簀の子の隙間を縫って地面まで突き刺すと。最後にまだ臭い、堆肥になって無いゴミをこの新しいゴミ箱に移すと。


 う~臭い。いやお前も言わなくていい。余計に臭くなる。よし、で、この上にわらを沢山かぶせて。臭いがちょっとマシになったな。うん、大分入ったな、最初に適当に作ったゴミ箱は結構でかかったんだな。よし、最後に竹の筒を少し持ち上げると。これで空気が下の穴からあちこちにある穴を通ってゴミ箱の中まで通るはずなんだな? よし、まあ試すしかないよな。うまくいけば順々にしたのほうから堆肥が出来る。で、出来た堆肥はこの扉を開けて取り出すと。ああ、臭くなかったらもう堆肥と言っていいんじゃないかな。そして、最後に新しく作ったゴミ箱に蓋をすると。うーん、この蓋のためにはコーラさんの所に行って蝶番を作ってもらったほうがいいな。動物が上から入っても嫌だしな。


 まあ、一年貯めて作った堆肥は元のゴミ箱の底のほうにそこそこあったな。まだまだ足りないがこれからどんどん増えるだろ。わらもあるし馬や牛が来たら一気に増えるわ。え、なんでって? そりゃ馬小屋や牛小屋にわらを敷き詰めてあるから、そこに馬と牛がエサ食べたあとにうんこするだろ。その汚れたわらが一年分貯まればそれをさらに寝かせて大量の堆肥にするんだよ。何しろ俺たちが飯食って出す量よりはるかに多いからな。いやいや、お前の食ってるコメも全部そういう堆肥を使って作ってんだよ。なに驚いてんだ。いや食用に使わないのは人のうんこの堆肥だけだよ。動物のはちゃんと使う。鶏や兎もそうだよ。だからこういうのは一旦歯車がかっちりはまりだしたら結構上手くいくんだよ。ただ気長に待つしかない。


 そしてここでようやく菜園作りに戻れたよ。わらでわら袋を作って、そこに堆肥を入れて、菜園まで持って行き、土と混ぜて、最後に土にわらを被せる。あとは種とかを撒くだけだな。


 で、そのナントカ農法の輪作って何をどうするんだ? あ、知らない? うわあ、名前と輪作をするってことだけ知ってるのか。え、豆が重要。なんでだ? これも知らないのか。おい輪作の意味はわかってるのか? あ、ああ連作障害な。それは知ってる。だからこっちでは土地を休ませるんだよ。だから土地が皆必要なんだろうが。うーん、そうか。でもな何をどの順番で植えるのかわからないならあまり有効ではないような気もする。まだ遅くはないからあと一段か二段追加して土地を休ませる分の段も作るか? まあ土地はあるからな。


 とまあ菜園と新しいゴミ箱兼堆肥は約二週間かけて作った。なんか色々と疲れた。ああ、まだ棚田が残ってたな。あれ、そういえばなんで田んぼでは連作障害がないんだ? 乾季の間休ませてるからか?


 あとこの月の終わりに最初の雨季に感謝する祭りがあった。なんで乾季が始まるまで待つんだろ。謎だな、まあいいや。形式は俺の結婚式と同じだな。ただ違うのはここでは村長が村の経費で牛を二頭買いその牛を食べて皆で祝うってことぐらいだ。コメと野菜と飲み物は皆が持ち寄る。またみんなしこたま飲んでいたよ。俺もだ。最後はボウアに支えられて帰ってきたよ。ちょっと情けない。


輪作という観念は知ってますが、実際にどの作物をどのようなパターンで植えていくのかはさっぱりわかりませんね。連作障害の無い田んぼは素晴らしいですね。

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