59)8歳 8月10日-11月10日 雨季の終わりと妻の誕生日
雨が週に二回くらいのペースで降っているので妻の手伝いを家でたくさんしていたら面白いことに気が付いた。田んぼでは切った稲からまた稲が生えてる。実家でもこれはあるが、この収穫の後に生えるやつは収穫量が半分以下になるので、最初に収穫したあとはその稲を潰して、新しく苗を植える。そして二回目に収穫したあとに生えるやつは乾季が来るので全滅する運命にある。でもだな、現在八月、すでに稲が田んぼの中にある。これならもしかして、乾季のちょうどはじめに収穫できるから全滅しないのではないかと思いそのままにした。例え収穫量が前回の半分でも乾季でやられない可能性があるなら試すべきだ。なので雨で田んぼの水が溢れないようにちょくちょくと排水を行い見守ってた。
そして晴れの日はなるべく棚田を作る。これらを真剣に頑張ってやっていたら、乾季に入る前の十月には棚田が全部で十一枚できた。これで次の田植えと収穫に助けを呼ぶのは決定だな、次の田植えは十七月か。家族以外ではサヒットか、あと他に誰か呼んで手伝ってもらわないと。
九月二十日にはボウアとサヒットの誕生日があった。誕生日はこっちでは普通身内で祝うものだ。この日は晴れで、サヒットにお義父さんとお義母さんとノーラ義姉さんとガヴィンとガレンが来た。サヒット以外皆この家に来るのは初めてだな。まあお酒はなかったけど、この家で取れる海の幸で祝ったよ。ウチの海辺で取れるから、すごい新鮮なんだよな。新鮮な海鮮料理は美味しいわ。
やはり衝撃的だったのはトイレと水だったな。なんかボウアが自慢げに説明してた。いつの間にそんなにトイレを気に入ってたんだ? あー、はいはいヤマトの言う通りですよ。お前の頑張りが正当に評価されてるな。と、いうかこの調子だとお前のチートはトイレだぞ。なんでって、お前、わかってないのか? 雪隠の臭さを減らし、さらにそれを家にトイレとして持ち込み、そこにダメ押しで水で洗う手洗い場を付けたんだぞ。俺はいやだからな、これが「ノックス」と呼ばれるのは。そうだな、もう「トイレ」と言う名前で押し通そう。
水の重要性は皆わかってくれた。やはり水がないと暮らせないからな。しかも井戸で水汲みしてその水を台所までえっちらおっちら運ぶ必要がないってのが気に入ったらしい。ノーラ義姉さんは外から入って土間を見ただけで、ここに住みたいとか言ってた。ガヴィンとガレンはどうするんだ。いやまあ三人分の部屋は余裕であるんだけどな。
そして乾季に入ってすぐ、なんと三期作のコメが取れた。収穫量は半分以下だが、乾季だから雨の心配もない、なので一人で刈って脱穀精米をしても問題はない。ただ刈ったあとは絶対に田んぼにわらを被せないとな。この乾季で土をむき出しにしたら、あのゼロ段の田んぼの悲劇がもっとひどい感じで繰り返されるわ。
あと今まで取れたコメを全部足せば人が一人一年分過ごせるくらいのコメが取れたと思う。と、言うことは来年の田植えの時まで、俺とボウア二人分、半年のコメはここで出来たと言うことになる。自立への道が見えてきたわ。これはいけるんじゃないか?
第九章の終わりまで読んで下さりありがとうございます。
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