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57)8歳 6月5日 ポチとボン

 うーむ、出てきたな。田んぼに雑草が生えてきた。雑草なんて植えた覚えはないんだけどな。どっから来るんだろ。まあ、いずれ生えるだろうとは思っていたがな。でも、こういう風に整然と並んでいると何が雑草なのかすぐわかるな。うおおお、これもこの整然とした植え方の利点か。雑草がすぐわかるのと、田んぼの中に入って雑草を取れる。よし、入って抜いていくか。


 うん、合鴨? なんだそれは? ああ、アヒルの一種だな。で、なんでアヒル? へー、アヒルが雑草を食べてくれるのか。おい、それもすごいな! よし早速やろう。アヒルなら村で飼ってる人がいたはずだ。俺のところもボウアのところも飼ってはいないが、ちょっと待てよ、そういやキャリガンさんが飼ってたな。覚えてない? ほれ抽選で牛の解体に選ばれた人だよ。あの人なら快くくれるだろう。鶏を三羽くらい持っていけばアヒルの番と交換してくれるだろうな。


 え? どこで飼う? そんなの決まってるじゃないか鶏小屋を新しく作っただろうが、とりあえずはそこで十分だろ。ああ、そうか犬がいないか。とりあえず村に行こう。もし誰か都合よく子犬を里子に出したい人がいたらちょうどいいし、いなかったら村の人たちに俺たちが子犬が欲しいって伝えておかないと。


 とまあ、ボウアに村に行ってくると言って家を出た。


 ちなみに妻が最初帰って来たときはなんでまたこんなものを家につけたんだ、ってトイレのことに関してすごい怒っていたよ。絶対に近寄らないっとか言ってたのにな。人間ってすごいな、三日で順応してしたよ。まあ、ここで俺が煽ったらろくなことにならないから何も言わないけどな。


 で、子犬だ。結論を言おう。都合よく子犬がいたよ。誰から聞いたのかコーラさんに機織り機のお礼を言いに行ったら無言で黒い毛皮の子犬を渡された。血統書なんてものはこっちには無い。犬なんて皆ヤマトの言う雑種だ。アヒルもキャリガンさんから若いオスを一羽に若いメスを二羽貰えた、羽振りがいいんだろうな。ヤマトはヤマトでこれはアイツの知ってるアヒルではないとか言っていた。いや、アヒルが白いっていったいお前は誰から教わったんだ? アヒルなんて普通は茶色だろうが。


 そして、早速動物たちを連れて帰ると妻が喜んでくれた。なんでも産後のためにアヒルの卵を出す心使いだと思ってくれた。そして犬は子供達のためだと。まあ、ここはそういうことにしておいた。嘘つきじゃねえよ! だって実際そうにもなるだろうが。いちいち本当のことを言わなくてもいいんだよ。うるさいんだよ!


 よし、じゃあ、この黒い犬に名前を付けるか。「ヤマト」なんてどうだ? ハハハ、冗談だよ。え? お前が決めたい? いいよ、なんにするんだ?「ポチ」か、ほーそっちの定番か。いいぞ。こっちにはあんまりない名前だがな。


 そして犬とアヒルを連れて田んぼに行って、アヒルたちを放したら、おお、すごい、すごい。アヒルは凄いな! そしてテレビってのもすごいな。農業を全く知らないヤマトでもこういう知識を教えてくれるとは。ハハハ、悪かったよ。まあ、まあ、抑えてくれ。さっきは言い過ぎだったな、悪かったよ。


 で、ポチと一緒にアヒル達の働きをひとしきり見た後気付いた。これ俺の棚田みたいに整然と苗を植えないと出来ないわ。だって、あの雑然と田植えした田んぼじゃアヒルが泳げない。そしてこれアヒルが大量に必要になるわ。三羽とかじゃとてもじゃないけど無理だ。そしてさらに家にアヒルを連れ替えるときにもまた気付いたわ。家から田んぼまでの距離、もしくは新しく作った鶏小屋から田んぼの距離の移動は無理だって。だって二百メートルは絶対にあるぞ、そんな距離アヒルを野放しにはできんわ。いや今はポチが頑張ってアヒルが逃げないようにしようとしてるとは思うよ。でもどう見ても遊んでるだけだろ。はあ。うるさいな! 行きはテンションが上がっててアヒルをかごに入れてったから気づかなかったんだよ!


 まあいいや。打開策だ。うん、そうだな。田んぼの近くにアヒル小屋を作るしかないな。まあ、それならため池の近くだな。それなら水にも入れるし、コメを作ってないときにため池に生えてる水草とかも食えるし、あの近辺なら柵を少し作ればいつでもその辺に生えてる草を食えるだろうな。ということは犬がもう一匹は必要だな。アヒル小屋用に鶏小屋用か。兎小屋は鶏小屋のとなりで一緒の敷地でいいか。兎に池はだめだからな。なんだヤマト? ああ、まあ、もしというか、いつかだが牛を飼うことになったら馬小屋に付随だな。えっ、豚? うーん親父もボウアのところも豚は飼ってないな。だから俺は豚の飼い方は良く知らん。なので当分豚はないな。村には飼ってる人もいるぞ。ああ、アヒルも飼い方は知らんがキャリガンさんが鶏とほぼ一緒だって言ってたじゃん。水遊びするところが必要だって言ってたけど、ウチにはため池があるんだから大丈夫だよ。犬かあ、もう一匹いるかな。


 そしてその午後は俺が急遽アヒル小屋を家の近くに小さいのを作った。まあ、こういうのは慣れてきたな。大きいのはそのうちだ。犬が大きくなってからだな。だからまあ大きい小屋に引っ越すのは当分先の話だな。馬小屋や鶏小屋も大きいのを作ったけどまだ使ってないからな。今はたまに見回って大丈夫かどうか点検するくらいだな。


 そして次の日の午前、アヒルをひとしきり田んぼで遊ばせたあと、また村に行った。道中ヤマトがまた田んぼの水を抜いたほうがいいとか言って俺と色々話したがハッキリ言ってこの話は信じられない。田んぼから水を抜いてどうすんだって思ったが、まあ種から田植えにアヒルと来てるからな。テレビの情報は大事にしたいな。どうしよう、半分の田んぼで試してみるか?


 村に行って実家に新米を届けに行った。まあ、今までのお礼とかだな。そしたらいたよ、子犬が。なんなんだ。実家の犬はもう年老いてるけど、他の人たちの犬は元気なんだな。まあ、別に怒ってはいないよ。ただなんか飽きれてるだけだ。なんでも親父の飲み仲間のグレディさんの所の犬が最近産んだらしい。だからもうちょっとしたら取りに行けば良いってって親父に言われたよ。都合良すぎるわ。あ、新米は普通に美味しかった。


 そして帰って来て、妻が娘たちにおっぱいをあげるのを見ながら、俺が近いうちにもう一匹子犬を連れてくるって話したら喜んだよ、娘たちが犬の取り合いをしなくて済むってね。で早速この黒いのはポチって名付けたと言ったら「めずらしい響きの名前ね」ってさ。で、発音がちょっと難しいのかヤマトには妻が「ポッチ」と呼んでいるように聞こえるそうだ。ぽっちか、うーん、俺にもヤマトの記憶がちらちら見えるからな、さすがにこれではからかいたくないな。


 で、そのあとで新しい犬が迎えに行ったらヤマトが即「白」って名付けたよ。トルク語では「ボン」だから誰にでも発音できる名前だ。

合鴨農法は古くからあって、豊臣秀吉が合鴨を田んぼで飼うのを奨励しました。もっとも江戸時代は合鴨の代わりに魚を田んぼに入れたらしいですね。ただノックスの所は乾季があるので魚は無理かなと思ってアヒルにしました。

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