55)8歳 5月1日 二度目の田植え
二度目の田植えが来た。苗はなんだかんだ言ってあの竹の中で育ったよ。なんか不思議だ。七枚の田んぼに水を入れてまた俺が人力で均して、準備はできた。ただ今回違うのは縄は三十三センチ間隔で五メートルを割って、横に長く五十メートル張ってあるってことだな。横には畔に杭で両側に三十三センチ間隔で打ってあるが縄は張ってない。
で、なぜ三十三センチかと言うとまあ取れた総量にあんまり差がなかったからだ。だったら一番手間のかからない間隔にしようと決めた。これで一本一本乱雑に五センチくらいの間隔に植えるのではなく、五本まとめて三十三センチ間隔で一枚につき十五×百五十の二千二百五十か所植えるだけ。しかも五本まとめてだから、棚田一枚につき一万一千二百五十本の苗が必要とわかる。そして今回の田植えは七枚だから七万八千七百五十本必要とわかっている。そしてなんと竹でやった苗作りでは一本約二百五十本の苗があって、四百本の竹の苗があるから、十万本の苗がある。まあ、少しは虫やら鳥にやられているが。つまり何が言いたいかと言うと始める前から約二万本も苗が余るとわかっている。
ワハハハハハ。失敗だ。畜生。このやり方は緻密に計算できるからどこでなにを失敗してるかが本当によくわかるな。これがヤマトの世界の普通なのか? うーん、全員がこのくらいの算数が出来るってのはすごいな。はっきり言って俺はお前に計算を頼っているぞ。ありがとうな。ああ、わかっている、感謝はしてるってさっき言ったろ。さっさと本題に戻ろう。
苗を無駄にしないためにも今からでも替えるか? 二十五センチ間隔にすれば、えーと二十×二百か、で、四千か所植えるのか。ここで四本ずつ植えれば一枚一万六千本で、それが七枚だから、おう十万を軽く超えるな。これなら苗が無駄にならない。うーんどうしよう。
まあもうこの棚田は縄張ってるから、最初の田んぼは当初の計画通りやるか。この杭にそって竹を田んぼに置いて、俺も田んぼに入って、よし縄に沿って下がろう。三十三センチなら十分に腕の届く広さだな。左、真ん中、右と。苗一列を一気に取って植えるだけってのもだいぶ楽だ。よし、この三列と五十メートルが終わったから、竹を動かして、俺もとなりの列に行くか。
これを五回繰り返して昼まえに一枚の棚田の田植えを終えてしまった。やっぱり植える回数が少ないと楽だな。あとこれだと苗を集める苦労がない。まあ、種を植える苦労があるんだが。正直どっちがいいのかわからん。でも苗の数がわかるのなら苗を竹で育てたほうがいいのかもしれん。
うーんどうしよう。と悩みながらお昼ご飯を作り、今日はお昼休憩なしで、田んぼに戻った。結局次の棚田は二十五センチ間隔で縄を張り、杭を打っていたが。途中で縄に沿って泥の中に線を書けばいいじゃないかと気が付いた。ロウ板の巨大版だな。これなら縄は要らないし、いちいち引っかかることを心配する必要もない。なので効率も少しあがり、この二枚目もなんとか一人で午後の内にできた。まあ、午前よりかは時間もかかり夕暮れ時になっていたがな。
この調子で次の日も田んぼに線を二十五センチ間隔で縦横に引いてその交差点に植えるということをやり、午前に一枚、午後に一枚できた。杭に縄を張る手間が省けるし、縄に引っかかる心配しなくていいからそこはちょっとだけ楽だ。あと三枚だ。だいたい自分の限界がわかって来た。なので精神的にはちょっと楽になりながらも体力の限界を感じながら残り一日半でやり終えた。最後の田んぼは本当に疲れ切っていたので三十三センチ間隔でやったけど、まあ苗は無事に無駄にすることなく、全部植えることができた。というか最後足りなかったわ。これだったら、四十センチ間隔とかも試して見たかったが計算も出来ないくらい疲れていたんだろうな。
今回の田植えではっきりとわかったのはこれから棚田を増やしたら人に助けを頼まないといけないということだな。とてもじゃないが一人ではできない。あと次回からは田んぼにどう植えるのか、二十五センチ間隔か三十三センチ間隔か、最初に考えてから苗を作ったほうがいいということもわかったな。ヤマトがそろばん思い出すから計算が嫌いだとか言ってるがそれなら俺はなんなんだ。やはりアラビア数字を子供のころから使ってなかったからか? というかそろばんってなんだ?
あと今回は忘れる前にゼロ段の田んぼを耕やして、わらを入れて保護することをちゃんとロウ板に書き込んでおいた。あと三十三センチ間隔と二十五センチ間隔で一枚につき何本の苗を使うのか記録しておいた。こっちの情報は紙に清書したほうがいいな、と思いながらその日は疲れていたので午後から休んだ。