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50)8歳 1月10日 田植え

 さてと毎日帰ってたから田んぼに水を入れることが出来た。なので今日から早速苗を植え替えようと思う。おお、泥に入るとぬかるむ。当たり前だな。で、まずは苗を取る前に植える田んぼを平たくしないと。ん、なんでわざわざわらを撒いて、そのわらをどけるという手間をかけてるのかって? む、なんでだろう。そう習ったんだよな。田んぼとか農地の地面はなるべくさらさないようにって。まあいいだろ。もしあれだったら、田んぼを一枚使って試して見てもいいぞ。


 そしてヤマトと会話をしながら俺は大きな柱に釘を打ち付けたような器具を使って、泥を一回かき混ぜて、そのあとに幅広の板に縄をかけた農具を持って板を泥の上で引っ張り、田んぼを平らにしていく。今は俺がやってるし、堆肥も入れないからこれでいいだろ。そう、最初のやつが滅茶苦茶重いよ。だから馬が欲しいんだよ。でもなあ若いオスの子馬でも兎百五十羽はするからな。牝馬なら倍くらいするぞ。それに次からは堆肥とか入れたいから手間がもうひと手間かかるし、それには馬がなあ。だから一回目は堆肥を混ぜるため、で二回目は泥をかき混ぜるため、最後に人力で均すんだよ。あの茶臼を買ったから今回の田植えには馬は間に合わなかったが次回には間に合わせないと。あ、あそこの畔が弱そうだあとで補強しよう。


 よし一個終わった。どうしよう全部やってから田植えするか? それとも一枚一枚やっていくか。え? なんでここでお前が口を出す。まあ、いいよ。俺もそうしようと思ってたから。


 なんとかその日は田んぼを五枚均すことができた。馬がいたらもっと早いのにな。あとちょくちょく畔を直すのに時間を取られる。明日は田植えだな。


 田植えにはボウアも参加した。俺はずっとしゃがむのはいやなのでゼロ段の田んぼで隙間のあるところにどっかと泥の上に座る。というかボウアも座ってる。そして手の届くところから苗を右手、左手と手で交互に取り集める。手に一杯になったら水で根のところを優しくゆすってからわらでちゃっちゃっと縛る。そうして身体の周辺の苗を取り終えたら移動して繰り返す。結構時間かかるよな。ヤマトがなんかぶつぶつ言ってる。だから機械なんてねえよ。何お前は寝言を言ってるんだ。


 まあ、ゼロ段はぶっちゃけ五メートル×二十メートルなんだから二人でやれば、昼休み前には終わる。で、お昼休憩をはさんで午後は田植えだ。ここはさすがに座るわけにはいかない。ボウアと二人で苗の塊を適当なところに一段目の一枚目の田んぼに置いていく。そして、その苗の取って、苗を一本一本田んぼに適度に距離を開けて植えていく。五メートル×五十メートルは思ったてたより広いな。まあこんなもんだ。うるさいぞ、後にしろ後に。


 午後はこれだけで田んぼ一枚しかできなかったな。本当に重労働だよ。これをまた明日やるのか。まあでもあと二日で確実に終わるな。苗はもうまとめてあるし。こういう日にはご飯は簡単なものしか作る気力がない。ボウアも早めに寝たしな。


 で、なんだヤマト何が言いたい? え、どうせ邪険にされるから言いたくない。お前なあ。まあ、俺が悪かったちょっとイライラしてたかもしれん。で、なんだ。


 と、ここでヤマトがやったこともない癖に長々と日本での機械を使った農業の話をした。お前の場合はテレビとかで見ただけだろ。なんで自慢げなんだよ。そしてどれだけ役に立つんだこの知識と思って聞いていたが。種の話は本当だったし、色々と考えさせられることもあったから、俺も途中から真剣に聞き出した。で、ヤマトの話の中で再現できるものはないか色々二人で考えた結果、今回は機械で田植えしてるからこそ出来る規則的な田植えってのを試してみることにした。まあ、確かに規則的に植えたら苗の一つ一つが得られる養分も均等になるだろうなと言う俺の判断だ。


「で問題はどうやって規則的にするかだよな」


 おう独り言が出てる。ヤマトに言われなくても自分で気が付いたわ。幸いボウアはもうベッドルームに行ってるからいいが。うーん、本当に日の光も無くなって来てるし、なんか簡単なアイデアはないか? え、紐か。紐ならあるぞ。おう、なるほど、これなら簡単だ。よし明日は紐を縦横に田んぼに張ろう。そうすればそれらの紐が重なったところに植えていけば定期的になるな。よし、寝るぞ。


 次の日の朝早く。俺は朝飯を食べる前に家を出て、田んぼに縄を持って行った。持ったとき紐だと細すぎるとわかったからな。


 おい、どの間隔で縄を張ればいいんだよ? ああ、やっぱり知らないか。よし、試そう、それしかない。そんで朝する田植えの田んぼは間隔を広くとろう。昨日みたいな簡易な飯はちょっといやだから、今日の昼はしっかり食べたい。


 なので、次の田んぼにはだいたい五十センチ間隔で杭を打ってから縄をその間に張っていった。なんか均した田んぼに踏み入れるのがちょっともったいない気もしたがまあ仕方がない。これで大体奥に向かって苗を十本、そして横に百本。おお凄いな苗が千本あればいいのか。まあ地形に合わせて曲げるところもあるだろうが、こうすれば苗の数がわかるようになるんだな。てか、これちょっと間が空きすぎじゃね? これどう考えても少なすぎる気がする。


 と思って帰ったら。ボウアが朝ご飯を作ってくれていた。ありがたい。


 で、二人で田んぼに戻ったら。


「朝早く田んぼに出て行ったと思ったらこんなことしてたの? 私てっきり田植えを始めてたと思ってたわよ」


「まあ、そう言わないで。こう縄を張ってあるには訳があるんだ。今まで、どれだけの苗が必要とかわからなかったけど、これならわかるだろ、あとこれならどの辺に植えればいいのかもわかるじゃん」


「はあ、まあ、いいわさっさと済ませましょ」


 やっぱり苗千本植えるのは早かったな。と言うか早すぎた。まあ、新年の祭り以来貯まってたことがいくつかできるか。今日の昼めしはボウアがご飯を作り、しっかりと肉を食べたよ。これで、夕食も残った肉が食える。言わせんなよ、兎だよ。で、その間に俺は次の田んぼに縄を張った。今度は三十三センチ間隔だ。だから十五本×百五十本。おお、一気に増えたぞ、二千二百五十本だ。


 そして妻が来て二人でやったらそこそこ早く終わった。さすがに千本よりは時間が掛かったがな。どうしよう中途半端な時間だ。なので、今日は俺は洗濯をして、ボウアには家に戻って休んでもらい、俺は三つ目の田んぼで今度は二十五センチ間隔で縄を張った。これだと二十本×二百本で苗四千だな。これは明日用だ。


 この日も二人で来たが朝の四千本は大変だった。縄が張ってあるのでそこに絡まらないように歩くのに気を遣うんだな。だから初日ほどではないがそれと同じくらい疲れたような気もした。まあ、ちゃんとご飯も作って食べれたから文句は言わない。お昼ご飯のあと最後の五枚目の田んぼは二十センチ間隔だ。二十五本×二百五十本一気に六千二百五十本だ。うげ、この密度でも最初に適当に植えた田んぼよりかなり少ない。まあ、腰も痛いし疲れたけどこれで終わった。明日は二人でゆっくりしようねといいながらご飯を食べて妻のお腹を撫でながら寝たよ。まあ終わってからの今回の反省点は先に縄を張っておくことだな。そうすればさっさに田植えが出来る。縄と杭は次回は二枚分は用意しておこう。


 と俺は思っていたが、苗は滅茶苦茶余っていたから次の日に田んぼに戻って五十センチ間隔で植えてある苗のすぐ隣に追加で四本ずつ植えた。あまりに広すぎるからな。これでこの田んぼは五千本だよ。この時はどこに植えればいいのかわかっているのと、何本植えればいいのかわかっていたのと、縄が無いので、すごい楽に植えることができたわ。そう思ったら三十三センチ間隔の所にも四本加えた。ここは一万一千二百五十本になったな。やっぱり五十センチ間隔はだめだな、とこの時点で思ったよ。え、遅すぎ? でも試さないとわからないだろ。


 ここまで来たら面白くなって調子に乗って、二十五センチ間隔の所にはあと二本ずつ追加した、一万二千本だな。最後の田んぼにさらに一本ずつ追加しようとしたら、途中で苗が無くなった。まあ本来なら一万二千五百本だな。昼休み抜きで夕方暗くなるまでずっとやってたけど、この追加の一日で終わってよかったわ。それにしても、五十センチ間隔以外はそれぞれ一万二千くらいになったな。


 ボウアは当然最後の日には参加してないよ、俺一人だよ。


耕地を整理して苗を規則正しく植えるのは江戸後期の大原幽学(1797-1858)が房総半島で始めました。耕地整理はそれまでに土地の所有権などがあちこちに渡りごちゃごちゃしてたのを整理して水の通りを良くし、正条植は苗を規則正しく植えることにより日光が均等に当たるようにと、始めたと言われてます。

幽学は幕府にあらぬ疑いをかけられ切腹しますが、彼の始めた耕地整理と正条植は明治に全国的に広まります。

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