47)8歳 23月38日 塩作り
シーラが帰って約二週間。今日の昼休みを終えたら海辺で塩を天日干ししてるとこに来た。鹿狩りが終わってからは日課になってるな。最初にやったときは完全に干して、ほぼなんにも残らなかったのを覚えてる。あの時はヤマトと二人でなんで? って思ってたけど、あれは多分海水の中にある塩が少ないんだな。だからあれ以来海水が少なくなってきたら海水を継ぎ足している。そのおかげで今この桶の中にある海水は滅茶苦茶しょっぱい。
うん、今日もまだ完全に乾いてないな。この凄―くしょっぱい海水があるだけだな。海水を足すか。待てよ、暦ではもうすぐ乾季は終わるんだよな。雨が降って来たら今までどおり干せるのか? 壁何てないから少しの風でも雨が桶に降り注ぐぞ。過去二十数日の努力は無駄になるな。どうしよう。
え、なんだ? もう乾季が終わるのならこれを集めて煮詰める? はー、そうすればまた苦い塩が出来るだけなんじゃないか。うん、今回は完全に煮詰める前に一回止める? なんで? え、残ったものを布でろ過するの? そしたら、多分塩とにがりが分けて取れるかもしれない? うーん、まあ、いいか試しても。別に問題はないしな。
結論を言おう。苦くない塩は出来た。と、言うかはっきり言って美味しい。このものすごーくしょっぱい水を集めて、少し沸騰させたら、塩みたいなものが出てきた。なので、まだ水分が残っているところで、火を一旦止め、このさらに濃いやつを布越しで液体と塩とに分けることに成功した。ただなあ。分量が少なすぎる、これ二キロくらいか。
まあ、年二回の乾季で塩作りを三回やったらウチで一年使う分使うくらいは取れるって感じだな。あ、ひと月に一回は出来るから頑張れば年六回か。まあこれでお金を払って塩を買わなくても済むな。マギー兄さんにこの話をして暇な時にでも塩を作ってもらってもいいか。まあ、とりあえず作りかたは忘れないように記録しておこう。
で、このにがりだ。俺がこれを捨てようとしたら、ヤマトが頭の中で騒ぎだした。なんでもこれを使えば豆腐が作れるらしい。真っ白なプルプルした食べ物だっていうから、チーズみたいっていったら、まあ、違うけど似てるらしい。問題はな、アイツが豆腐をどうやって作るのか知らないってことだ。なんだよ、食う専門って。本当にどこのボンボンだあの野郎は。だから「知らないならあっても意味ないだろ、捨てよう」と言ったら、頑張って記憶の中から探すと言って、急に黙ったわ。なので、このにがりは保留中だな。この前村に行って鹿肉配った時キーラさんにその辺の壺ならをいくつか持っててもいいよって言われてよかったわ。
最後に塩田だ。ヤマトと色々話し合ったが。アイツも塩田でどうやって塩を作っているかわからないし。俺も海水を砂浜に撒いてみたが、なにもいい案は浮かばなかった。だから塩田ってやつは結局ボツになったな。
そしてこの日の夜ボウアにここ二か月、来るはずのものが来てないって言われた。どうやら俺は父親になるらしい。まあ当たり前の結果が来たな。でもな、俺もボウアも嬉しくてその夜はなかなか寝れなかった。ヤマトは茫然としてたよ。だからこの夜は久しぶりに妻と二人だけ、夫婦水入らずって感じの夜で良かった。
この塩作りもビニールハウスみたいなものがあればもっと効率良くできたと思いますが、無いもの、作れないものはどうしようもないですね。あと普通は塩田とかの名称は知ってはいても実際にどう作っているのかは知りませんよね。
第七章の終わりまで読んで下さりありがとうございます。物語も折り返し点に来ました。
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