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オークの賢者: 異世界転生されたけど、転生者が俺を受け付けないので二重人格みたいになりました  作者: リチャード江藤
第六章 一年は雨季、長い乾季、大雨の雨季、短い乾季
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42)8歳 21月39日 大雨の終わりの祭り

 明日は暦の上では大雨が終わる日だ。というかこの月を越えるとだんだん乾燥しだして、来月には短い乾季に入る。まあたまに大雨が今月の終わりに始まるときもあり、そういう月は次の月にも大雨がずれ込むこともある。がそれは滅多にないので、村では今年一年の雨に感謝して今日は祭りである。ウチの村では大きい祭りは三回あって、新年の挨拶、半年の祭り、とこの大雨の終わりの祭りだ。え、半年の祭りが無かった? ああ、今年は俺の結婚式があったから、それが祭りの代わりになった。いや、そんな連続で牛肉を一日一キロも食えるかよ。


 で今回の祭りで誰の牛を潰すのか、ちょっとした楽しみだな。ああ、まだ誰も知らない。それは抽選できまるからな。えーと詳しく言うと、まず村から希望者を募るんだよ。そんでその希望者の名前を木の棒に書くんだ。でそれを小さな穴付きの蓋のある箱に入れて、ジャラジャラしてからひっくり返す。最初にポロンと出てきた人の牛が潰される。ああ、確かにおみくじみたいだな。


 え、悪いおみくじ? 罰ゲーム? いやいやちがうぞ、これはだな、我が家は牛を村のために潰せる余裕がある。村のために貢献する意思もある。って宣言してるようなもんだ。そして、その牛の肉が美味しければさらに名声があがる。その結果村長に選ばれやすいし、何回もやってたら確実に村の相談役にはなれる。あとモリガン様に選ばれてるとも思われるしな。ああモリガン様は運と戦の女神だ。


 村長職? そんなの前の人が辞めたら何となく決まるよ。だから言ったじゃん、世襲制じゃないって。でもよっぽどのことが無いとお前の言う選挙はしないな。いや、村が真っ二つに割れたら困るだろ。選挙っても支持する候補の所に村人が集まるわけだからな。ああ、ヤマトの所みたいに名前を紙に書いて投票ってわけじゃないな。


 あと、村長が辞める理由か。ま、ポカをしたら交代しろって声があがるのと、普通に老年で引退と、あと若い時からやってて、三年くらいして、もう疲れたって言って辞めるなどがあるな。


「ねえ、今日はいつごろ帰ろうか」


 妻が聞いてくる。


「なんだ気が早いな」


 まだ朝じゃないか、昼も食べてないんだぞ。


「遅くまで祭りにいて酔いつぶれたくないのよ」


「いや、そこまで飲まなければいいじゃん」


「無理よ、結婚式では大丈夫だったけど、絶対にケーバ姉さん私を酔わせようとするわよ」


「そうなの?」


「うーん、昔からなのよね、悪意からじゃなくてただ楽しんで飲んでるだけだと思うんだけど」


「あー、そういやあの人ゾウだって言われてるな」


 あ、ゾウってのは巨大な鼻の長い生き物で、え、知ってる? じゃあ、なんだ。ああそういう意味か。ゾウみたいにぐびぐび飲むってことだ。お、ヤマトの所では大蛇か。似てるな。え? だって鼻が長いし、蛇も長いだろ。もうこの話はどうでもいいよ。


「いいよ、じゃあ、家は遠いから始まってから早めに帰るか。夕焼け時でいいんじゃないか?」


「じゃ、そうしましょ」


 と俺たちもお昼を終えてからすぐに持ち寄るものを持って村に向かった。


 まあ、俺たちが現在持ってけるものと言えば鶏と兎ぐらいだがな。野菜はまだ育ててないし。一応塩も持って行こうと思ったんだが、あれはなあ。まあヤマトの言う通り試したんだ。そしたら煮詰めてまだ液体状の時は苦みもあったが、まあそこそこ美味しかった。で、完全に水分を飛ばしたら案の定だめだった。苦すぎる。あれ一体どうすればいいんだ? まあ、これからは乾季だから太陽に蒸発させるというヤマトのもう一つの案を試してみるしかないな。あ、あとヤシの実も二個取ってきたからそれもあったな。


 村についたら俺は一気に男衆に囲まれて、ボウアはボウアで女衆に囲まれたわ。これから皆で持ち寄った食材で別々で料理だ。今回集まったのは当然俺の家ではない。なぜか知らないがブロガンの家で皆集まった。この家は馬が多いからその放牧地で集まるのか。うーん、なんか嫌だなあ。放牧地だから当然馬糞があるんだよな。ほらここにもあったわ。あれ、俺お前に毒されてない? え、この感性が普通なのか?


 そして俺たちは遠くから来たから、当然着いたころにはもうほぼ全員いて抽選を始めるところだった。あれ、ブロガンの親父さんも抽選で選ばれる側にいる。あ、だから今年はここでなのか。で、抽選で選ばれたのがキャリガンさんだった。へー、あの人も羽振りがよくなったんだと思ってたら、キャリガンさんの牛が来た。おお、こいつは立派な牛だ。かなりの肉が取れると思う。で、一回りしてみんなにあいさつしてから、うん、あの方角はおそらくファオランさんのところに多分行ったな。ファオランさんは牛とか馬とかの解体が得意な人だよ。なんでって? いやそれは俺も知らない。ただ親父も俺たちの結婚式の時とため池を掘る時にファオランさんに頼んでたと思う。はずだ。


 飯は出来次第真ん中に持って行って皆好きなものを好きなだけ持ってって食べる。だから食べ物を取る時は女衆とも話せるけど、でも食べたり飲んだりするときは俺はこっちで男衆と飲んで食べるんだよな。ボウアは当然あっち。うん、今回の祭りはなんか知らんがちょっと男女別々なんだよな。だから理由は俺も知らんて。女性には男性に聞かれたくない話とかあるのかもしれない。あー、女性の村長ね。うーん、俺の記憶にはないけど、過去にはいたかも知れない。確か、性別は関係なかったような気がする。あ、でも王政府関係は男性ばっかだな。いや、役人は失敗すると公開処刑とかもありえるからな。女性の公開処刑は見てて気持ちいいもんじゃないだろ。本当の理由はわからんけどな、お前の言うただの男尊女卑ってやつかもしれない。


 とまあ、そのあとはヤマトに静かになってもらって、普段話さない人と積極的に話した。なにしろ祭りだからな。色々と食べながら話すと会話が持たなくも食べてる飯の話にすれば問題無いから楽だよ。祭りのときには飯も食べるって考えた昔の人はすごいなと思ったよ。あと、海水で塩を作ってみたって話はいい笑い話になったな。でも水を全部飛ばさなかったらすごいしょっぱい水が出来てそっちは美味しかったと言ったときの反応は半信半疑だったな。まあ、気持ちは俺もわかる。あれで本当に塩作れるのかな。


 で、お酒も入るし男だけだからかやっぱりちょっと卑猥な話もちょくちょくでる。まあ、笑い話系だがな。


「おー、ノックス、お前には感謝しかないぞ~」


 あー、もう出来上がってる。まあコイツの家だからな、一番飲む機会も多かったんだろうな。


「そうかあ、俺はあんましお前のためになんかした覚えはないぞ」


「そんなあ、つれないことを言うなよ。あのセージ酒すんごい売れてんぞ。このままいけば俺は王子港に店を持てるわ。ハハハ」


 そいつはすごいな。清酒を売って運ぶだけでそんなに儲かるのか。あ、すまんヤマト。しまった、この話はもうしない方がいいか?


「そんでなあ、俺にもついに春が来たんだよ~」


「おお、それはめでたいな。なにがあった、詳しく話せや」


 プロガンは一応俺たちよりも一歳下なんだが、俺たち兄弟はなんかコイツとの年の差をあまり感じないんだよな。で、逆もまたしかりで。


「いやあ、アヴィンのとこにちょくちょく顔出してたらさあ、あいつの師匠の娘さんに気に入られてさあ。俺はいずれ王子港で店を持ちたいって夢を語ったら、すごい感動したらしくて、俺を手伝うって言ってくれてさあ」


 お、それはいいじゃん、こいつにもこういういい話くらいあったほうがいいだろうしな。


「しかもその子おっぱいが多いんだぞモミモミモミモミ出来るんだぞ、羨ましいだろが。でな~、そのお姉さんがアヴィンを気に入ってるらしいから、もしかしたら一緒に結婚式できるかもしれんぞ~」


「おお、それはいいな、アヴィンにもそろそろ恋人とか婚約者が出来てもいいころだしな」


 あとヤマトも俺はおっぱいは二つでいいからな、別に羨ましくはない。


「まああいつが早く一人前になったらその可能性があるって話さ~。もっとも俺が先に店を持っちゃうかもよ~。あ、そうだ、アヴィンもお前の親父に感謝してたぞ。いやいや、本当にいろいろと良くなっててよ、順調すぎて怖いくらいだわ、ハハハ」


 おう、なんだヤマト。なんで危険な香りがするんだよ、ここは素直に喜ぼうじゃないか。え、俺も酔ってる? そんなはずはないぞ。てか親父に感謝ってなんのことだ?


「あれ、なんかもう暗くなってない?」


「おう気づかなかったか? もうかがり火を焚いてるぜ~」


「おーい、ノックス妹が呼んでるぞ」


「お、悪いな、ブロガンまたな」


「いやいや、全然悪くないぞう~」


 とご飯を取るところに行ったらボウアの顔がかなり赤い。あちゃ~しまった。


「遅れてごめん」


「あ~、ノックシュ~遅れてる~」


 ああ、完全に遅かったか。


「おい、妹を連れていってやれ。と、言うかもう暗くなってるから、俺んちかお前の実家で泊まったらどうだ」


 なんでコイツはいくら飲んでも酔わないんだ。この村の本当のゾウは絶対にサヒットだ。


「ああ、そうだな。じゃあ俺の実家に帰るわ。ボ~ア~、帰るぞ~」


「あーい、わかった~」


 とまあへべれけにはなってなかったけど、完全に酔ってはいたな。


 次の日の朝ボウアは二日酔いになった。俺は大丈夫だったよ。



日本の年間降雨量は365日で1718mmです。世界の平均が880mmです。(国土交通省)アメリカ・フランス・中国などの農業大国は平均以下の降雨量でやりくりしています。オージービーフのオーストラリアは平均419mmです。インドとかでは三か月のモンスーンで300mm降ってそれでほぼ一年分の水を確保しないといけない所とかあります。九か月の乾季はノックスの所の長い乾季よりも過酷ですね。


世界の平均降雨量を960日に引き伸ばしますと年間2315mmになります。ノックスの所はそこの約半分の1270mm降ると思ってください。気候は南半球で大陸の西海岸にあるアンゴラやペルーの気候を参考にし、降雨量は平均の55%にしました。

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