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32)8歳 18月4日-5日 炒め物とカレーと麺

 ボウアが家に戻って来てから二か月。ジル婆さんとこでの修行も正式に終わって約一か月。最近は夕食もボウアが作ることが多くなった。


「カレーだ」


「ん?」


「あ、ごめん、ちょっと口の中が熱いくらい辛いからね。ゲレーンじゃなくてカレーって言っちゃった」


「うわあ」


 ああ、そんな顔して引かないでくれ。寒いのは解る。言ってる俺も寒いわ。でもしょうがないだろ。ヤマトが勝手に喋っちゃったんだよ。ちゃぶ台で食べてるんだ。ごまかせないだろ


「えー、面白くないか?」


 ここはもう押し通すしかないな。「熱い」の言葉の音とヤマトの「カレー」の音が似ててよかったよ。


「熱いくらい辛いからカレーねえ。面白くはないわよ、なんか私の料理を馬鹿にされてるみたいだわ」


「いやいやいや、そんなことはないから。ボウアの料理は村で一番だから! いや、王国一だから!」


「ふふ、大陸で一番じゃないの?」


「そうそう大陸一!」


「アハハハハ、もうおおげさね。まあ美味しいのならいいわよ」


 なんだ? いや、別に謝らなくてもいいよ。ああ、確かにな、久しぶりだな。


「そういえばゲレーンも久しぶりだな。最近は炒めものが多かった気がするな」


「ああ、もう。気がするじゃなくて、私が最近作ってた料理はほとんど炒め物よ。なに? 今まで気が付かなったの?」


 あ、今度はさっきよりも本格的にまずい。


「ごめん、正直言って、俺も最近まではいっぱいいっぱいだったから」


「まあ、そうね」


 よかった。機嫌がすぐ直った。


「あ、水の心配をしてくれてたのか。ありがとう」


「もういいわよ。私も結構忙しかったし、わかってるわよ。今回カレーにしたのは最近水がもう全部の樽に貯まりきって、この前溢れてたじゃない。まあ、だからもう遠慮する必要は無いかなってね」


 お、いつも間にかカレーって呼んでる。


 なんだ? 麺類? あるぞコメを細かく砕いてから麺にするんだ。ああ、ビーフンというのか。でもあれは作るのが結構面倒なんだよな。でも確かに麺も食べたいよな。


「なあ、水がもう十分あるなら今度麺を作らないか?」


「えー、いやよ。あんな面倒な料理できないわよ」


 まあ、そうなんだよな。気持ちは俺もわかる。だってこれはコメを細かく砕くんだぞ。うん? 臼はあるか? そりゃあるよ。玄米を白米にするのに使うぜ。そうかそれを利用するのか。


「うーん、村まで行って精米にするやつを使ったらできるかも」


「精米の臼でね。まあやってみたら」


 なんか俺悪いこと言った?


 とまあ、次の日お昼ご飯を食べたあと、暑いなか実家までいった。今日は家に親父も母さんもいた。


「ただいま。ちょっとコメ貰っていい?」


「なんだ、帰ってきていきなりコメ欲しいって」


「別にいいわよ、この前取れたのがあるからあげるわよ」


「ああ、ありがとう。麺を作ろうと思って」


「まあ、それはお前の勝手にしろ。適当に持って行っていいぞ」


「麺を作るの? あなたが? 今? お昼食べてないの?」


「いや、食べたよ。俺はとりあえず粉にするまでにしてから持って帰ろうと思ってるだけだよ」


「なあんだ、ま、好きなだけ持って行きなさい」


「あいよ」


 とまあ、実家の物置でコメを少し貰って、家を出ようとしたら。


「おい、どこに行くんだ」


「え、精米機へ行こ」


「そんな分量だったら家でやればいいだろうが」


 親父に止められた。


「実は村長の所にある精米機を使ってコメをもっと砕けないか考えてるんだよ」


「あら、面白いこと考えるのね。私もついて行くわ」


「村長をこんな事で煩わすんのもなあ」


 とか、親父はまだ言ってたけど。母さんと二人で村長の家に行った。相変わらず広い前庭だなあ。


「こんにちはー」


「おうブリアンナさんとノックスか、なんじゃい」


「精米機を使わせてもらえませんか?」


「あれ、お前たちの所はもう使ったんじゃないか?」


「実は今度は精米したやつをさらに杵で打って砕いて麺にできないからと思って来たんです」


「ああ、そうか。儂も昔試したが駄目だったぞ。まあ、やってみればわかる。裏にあるから好きに使えばよかろう」


 と村長の家の裏に回るとそこには地面に埋めてある臼とそこにはまるようにある杵が長い木で固定されていた。え? これじゃない? いやだって臼は丸いだろ、そこにモチゴメを突くみたいにドンドンとすると籾が取れて精米できるんだよ。木のあっちの方を踏むとシーソーてやつみたいにこっちの杵が上がって、そんで足をどけると杵が落ちて突くんだよ。これで黒コメを精米して白いコメにするんだよ。黒コメは玄米だろ、意味一緒だろ。まあ見てろ。


 とまあ俺が踏み踏みやってるとニーヴが村長の馬小屋から出てきた。いやイーヴじゃなくてニーヴだよ。そりゃそっくりだよ、双子の姉なんだから。でもよく見ろ、口元のほくろがないだろ。


「精米ですか?」


 ニーヴが母さんに聞いてる。


「うちの子がね、これで麺をつくれないかなって」


「あ、それは私もやってみたけど結局ダメでしたね」


 と、また言われたが、一応やってみたかったので無視して黙々と踏み踏みしてた。その間二人は話し込んでる。母さんはニーヴのこと気に入ってるからな。なんだヤマト? うん、丸い石が上下にあって、その上の石を回す? 俺は知らんぞ。今度石工のケーシーさんにでも聞いてみるか? わかった。


 結果的には村長とニーヴの言うとおりだった。コメが砕かれるのは砕かれるんだが、麺にするような粉にはならない。


「だめか」


「横着しちゃダメ。麺を食べたかったら、手で地道に粉にするしかないと思いますよ」


「残念ね、私も麺は好きだから、それでちょっとは楽にならないかなと思ったけど」


 なので、実家に帰ってきて地道に少し砕かれたコメを凹んだ石臼に載せてドーナッツってなのみたいな丸い穴の開いた石に木の棒を通したやつでゴリゴリやって粉にした。これもお前の知ってる臼じゃないのか。へー、お前の所では昔は薬をこれでゴリゴリやってたのか。言っておくがな、こんなのは重労働とは言わないぞ。


 結論としてはちょっとは楽になったかもしれないけど。村長の家に行って踏み踏みして帰ってきて、結局また実家の臼でゴリゴリするんだったら、最初から家でやれやってなるわな。


 まあ、これで少量のコメ粉は取れたので家に帰ったけどヤマトは納得していなかった。帰り道ずっと頭の中でブツブツ言っていた。「うるせえ!」と言いたかったがなんかこのまま考えさせてたらいい案がでるかもしれないと思って俺も黙ってたよ。


 家に帰ってボウアにコメ粉を見せたら鼻で笑われた。なんか納得できない。がんばれヤマトえもん! お前ならできるぞ。


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