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31)8歳 17月19日-20日 雪隠

すみません。トイレの話なのでご飯を食べてない時に読んでください。汚い話ですが必要なので。


 丘の上の方に水やりをしなくてもいい乾季に強い木とかの苗を植えた。スターフルーツとかナツメとかとかイチジクとか狼の実は主に土地の丘の中央から東側に植えた。ため池にも近いし、もし必要なら水やりもできる。これらの木の根っこの周りには土地をちょっとドーナッツ状に盛り上げて水を貯められるようにもした。必要かどうかわからないけど、この前の乾季はひどかったから、まあ、俺からの心遣いだな。


 ネギがやられるかもしれない懸念のあるモリンガの木はうちの敷地の西側の丘の上に植えた。あとマンゴーも葉っぱが動物にはよくないのでこっちに植えた。西側の土地にはこれからも入植者が入る可能性は低いんだ、もしだれか来て問題が起こったらその時はその時に対処しよう。一応非常時の時にも役立つそうだし、家の近くにもなるから、これでいいだろ。まあ、あとは大雨が来たあと、土地をもう一回見て、そして適所に乾季には水が必要な柑橘系の木とかライチ、ランブータンやマンゴスチンなどを植えようと思う。こういう木があると食事とか食後が楽しみになるんだよなあ。


 さてこれらの作業がひと段落したある日。


「あのさあ、雪隠が臭いんだけど臭くないのはなんで?」


 は?


 お昼すぎ、日が高くて暑いから土間のカウンターテーブルで美味しい果物を思いながら一杯の水を飲んでる時に妻に聞かれた。


「えーと、臭くて臭くない?」


 どういうことだ? お前もまだ鼻がもげるとか言ってるから臭いよな。なんか最近特に臭くなってないか? というかあんまり考えたくないよ。


「うーん、説明難しいな。ちょっときてよ」


 しょうがない。とまあボウアについて雪隠に向かったら臭いよ。そりゃそうだ雪隠だもの。


「臭いでしょ」


 うんうん、頷く。


「でもね、ほら」


 雪隠の扉を開けて俺を押し込み、ボウアが扉を閉めると。あれっ? 臭さが減った? 扉を開けて出ると臭い。


「あれ?」


「ね」


「あ」


 もしかして、と思って雪隠の裏においてある壺のほうに行ったら臭い臭い。え、これがアンモニア臭? てっきり隣のゴミ捨て場の匂いが混ざってるんだと思ってたぞ。


「う、ごめん、多分これだわ」


 とあとをついて来たボウアに壺を指さすと。


「う、なにこれ?」


「あー、俺のおしっこ」


「はあ?!」


「ちょっと離れよう」


 ジル婆さんの話を聞いておしっこを貯めてみようと思ったと話したら、がんがん腕を殴られた。まあこれは甘んじて受けよう。


「ちょっと待ってね」


 と言ってから俺は壺を持って雪隠から離れて、壺をちょっとした茂みに隠した。まだ捨てられない、だって実験してみたいし。それにしても本当に臭いな。


「ちゃんと捨てたでしょうね」


「あー、うーん」


「ねえ、本当に捨てたでしょうね、その返事は」


「うん、ごめんね」


 捨てたとはまだ行ってないぞ。謝っただけだ。


「それよりもさあ」


 と、今度は俺が雪隠の扉を開けて中にまた入る。うん、なんだ? 臭いけど、そこまで臭くない。なんでだ? ちょっと穴の中を見ると、そうだよなあ、汚いよなあ。うんこだよなあ。でもなんか違うな。実家の雪隠はもっと臭いしびちょびちょ、あ。扉を開けて出て、離れたとこで待ってるボウアの所に行った。


「多分わかった」


「そう」


「雪隠の臭さの半分以上は多分おしっこだと思う。だってあの壺あんな臭かったし。だから俺がおしっことうんちを別々にしてたから、おしっこがなくなって匂いが減ったんじゃないかな」


「そんなことあるわけないじゃない」


「まあ行って見てみ」


 ボウアが言って帰ってくる。


「うーん」


 半信半疑だな。てか俺もだよ。ヤマトは何か知ってないか? え、うるさいな俺たちは野蛮人じゃねえよ。でも水で全部流してるんじゃわかるわけないよな。


「とりあえずこのまま試してみない? ボウアは多分無理だと思うけど、おしっことうんちを別にするの」


「はあ? 雪隠をもう一個作るの?」


「うーん、どうしよう。ちょっと考えせて」


 とまあそのあとは外の土間に戻り、雪隠後用の柄杓で水を救って手を洗ってから家にまた戻った。


 そのままその日は普通に過ごしてから夕ご飯を食べてから寝た。


 そしたら次の日の朝に雪隠に入ったら昨日と比べて格段に臭かった。


「おしっこクサイ」


「はい?」


「今朝雪隠に行った?」


「あ」


「昨日と比べてすごい臭かったろ」


「今あまりその話したくない」


 まあ、朝ご飯の準備だもんな。でもこれは決定だな。今日はこれの解決方を考えないと。


 ボウアがジル婆さんの所に行ってる間に俺はヤマトから細菌ってやつについて教えてもらった。ヤマトお前凄いな、文系とか歴史とかいいながらなんで細菌とか知ってるんだよ。え、これが大学に行く前の一般教養、うそ~。あ、まあ確かに細かいことは知ってないな。大まかにいろんなことを教えてるのか。


 ま、話を戻すと、俺の最初の考えは間違っているともいえるし間違ってないともいえる。つまり、臭さのもとである細菌は水がないと増えない。だから、細菌がいっぱいあるうんちにおしっこがかかっていると細菌がさらに増えて匂いが強烈になる。でもここはそこそこ乾燥してるので、俺がおしっこを別のところでしてる限り水はそんなになく、細菌も増えない。というか水が無くて死んでいく。とそうなれば解決方法はおしっことうんちをできるだけ別々にして、雪隠のうんちも水を無くすという、ヤマトの所の逆をやってみようということになった。


「ということでこうします」


 ボウアが帰って来てから早速見せた。


「ただのわらのかたまりじゃない」


「俺がおしっこするときはここでします。わらがおしっこを吸ってくれるので匂いはそんなにきつくならないと思う」


「まあ、ノックスがそこでおしっこしたいいなら私は別に止めはしないわよ」


 まあ、そりゃそうだろうな。あれはわらの塊を雪隠のとなりにおいて簡単に三方を囲って屋根を乗っけただけだからな。そのうち一方は元からあった雪隠の壁だし、これは簡単だったわ。


「そして、うんちをしたあとは雪隠にこれを投げ入れよう」


 と、親方の工房で大量に出てくるおが屑を見せた。なんで村まで来て、廃棄物であるおが屑が欲しいのか心底わからなそうなサヒットだったよ。そんで、雪隠の扉を開けて、おが屑を雪隠の壁にかけてある籠に入れた。結構入ってるけど、おが屑は軽いからな。予備のおが屑はゴミ捨て場の所に大量においてある。こいつは濡れたら困るからサヒットにあとからもらう古い樽に詰めておくつもりだ。ついでにゴミ捨て場の上にも少しおが屑を撒いておいた。


「多分、多分、だけどな、うんちの匂いも減ると思う」


「まあ、いいわよ、でもおが屑だらけになるわね」


「そこでこの壺です」


「はあっ!? またその壺を出してきたの? 何考えているのよ!」


「いや、いや、ちょっと待って、待って、ぶたないで。これは新しいから、緊急だって言ってキーラさんからこの壺を新しくもらっただけだから」


「ふーん、そう、で」


 ああ、口がへの字になってる。まあ、いいや説明を続けよう。


「この壺をな、ここに置くと」


 と雪隠の隣に置いた新しい装置の竹の枠に嵌めて、その下にあるペダルを踏むと、紐に引っ張られて枠と壺が軸に沿って傾いた。本当にサヒットは器用だな。アイツのほうが「ドラなんとか」なんじゃないか?


「ここを足で踏めば、こう壺が傾くから水がジャーっと出る。なのでここで手を洗える。石鹸もこの目の粗い網に入れてこの釘のところに釣ってあるからここで石鹸使って手が洗える」


 大事なので手がここで洗えるって二回言ったよ。


「だからまあ」


 壺をまた引っこ抜いて、


「いまからこの壺に水を入れようと思う」


 笑ってら。日に焼けた妻の笑顔がかわいい。まあ、これなら今日一日駆けずり回った甲斐があったな。


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