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19)8歳 13月5日 引っ越しの続き

 ボウアの修行がなかなか終わらない。朝早くご飯食べてからすぐ出て行ったし、夕ご飯までは帰ってこない。一昨日はジル婆さん家から遅くに実家に帰って、そこで泊まってからまた行ってる。なんかジル婆さんが最後に洗濯を教えてるらしい。変だよな。以前洗濯はしなくていいとかいってたような気がするんだよな。おお、お前も覚えてるか。なんなんだろう。


 まあ、その間にこっちではやることが満載だ。まず最初に水の流れを確認しゃなきゃならない。引っ越しのあと片付けが二日ほどで終わって、そのあとに親方が来た。その時に見て回ってもらい、それが終わったら延々と水の流れについて結構しつこいほど言われた。なんでも、地形を見誤ったり、間違えて変えると雨の時の水が家の方に来るかもしれないらしい。そんで大雨が降って洪水みたいになった場合はお手上げだってさ。なんかすごい怖くなったよ。


 ちなみに結婚式のあと、キーラさんに言われた通りに石灰石を砕いたものを土と混ぜて、最後に水を足したものをため池の底と壁に薄く適当に塗った。かなりの重労働だった。あとケーシーさんからは石灰石は好きなだけ持って行っていいと言われたけど、ちょっと好意に甘えたような気もする。まあ、その甲斐があってそのあと雨が降ったら水が簡単に貯まった。もっとも今は乾季だからため池がなかなか満水にならない。あれ?でもなぜか樽には水がとりあえず必要な分があるんだよな。屋根ってそんなに広いのか? それともあのでかい樽でもまだ小さいのか?うん?ため池では水が蒸発してるのかもしれないってか。


 まあそれよりも、俺が個人的に焦ってるのは、果樹を植えることなんだよ。なにしろ木は収穫できるまで時間がかかる。軽く二年、三年はかかる。だから早く植えたい。ため池に水が少しはあるんだから乾季でも木の水やりはできるんだよ。


 でも雨が降ってくれなきゃ水の流れが確認できない。うぐぐぐ。どうすりゃいんだ?え、できることをやる?そりゃ当たり前だけど、そのできることが、あれ、あったわ。


 よし、泥レンガを作ってみよう。どうせ乾季だしちょうどいいだろ。


 と言うわけでため池の近くで泥レンガを作ってます。双子の太陽の下、木の下で、絶賛量産中だよ。そりゃ、ここには水もあるし泥もあるからな。あとは家からわらを持ってくるだけでできますよ。お昼食べに実家に帰る途中、親方の工房でサヒットにレンガをはめる木の枠を大小と作ってもらって、今それで延々と泥をこねてわらを混ぜて作ってるよ。と言うか、実家からかごでしょって来たわらがなんかなくなりそう。


 でもさあ、ヤマト、本当にお前の知識は役に立ってんのか? なんでか? だって、泥レンガはキーラさんも知っていたぞ。そしてお前もキーラさんも泥とわらと水の分量を詳しくは知ってないじゃんか。いやわかってるよ。試せばいいって。ただこれなら隣町まで行ってレンガ職人にでも聞けばよかったんじゃないかなと。だって、町に行って帰ってくるのにまあ、二日、三日だろ。この泥レンガが乾くまでまあ五日は見たほうがいいと思うんだよ。だったら聞いたほうが早くない? まあ、金はかからないか、その通りだな。うっせえな、別に俺は貧乏じゃねえよ、ただ現金収入がないだけだよ。お前本当に田舎が嫌いなんだな。いいか、ここで出来たとびっきりうまい飯を俺はここで食ってやる、お前も味わえ。王宮でも食えんやつだ。はあ。


 よし、そのためにはさっさと木を植えないとな。


 お、これは体感的なものなのかな。俺はこんな感じで作ったやつが、粘性っていうのか、がちょうどよかったと思うぞ。まあ、これはロウ板に記録しておくか。えーと、西側のレンガが水っぽいやつで、東側に行くにしたがってだんだん土っぽくなると。で、北側に置いたやつがわらが多くて、南側のレンガのはわらが少ない。おい、こっちのほうがお前の言うチートだよ。え? だからこう計画的に実験っていうのか、むやみやたらに挑戦するんじゃなくて、こう記録をしながら試すってのが重要だと俺は思うぞ。こうすれば再現が簡単になるからな。一応俺のカンでのおすすめも記録しておこう。と色々なバリエーションの泥レンガをそれぞれ十個ずつ、全部で百二十個作ったよ。小さい枠で作る真四角のレンガはこれが終わってからだな。


 よし。ほかになんかないか? 排水溝? なんで? まあ、あれは今さら変えられないよな。ああなるほど、あの水を有効活用するのか。よっしゃ、あの水がどこに流れていったのか追跡しよう。


 と、今度はため池から家の方に降りて行って、雨水をひとまずろ過する樽からの水や土間からの排水がどこへ流れたのかを追跡してみた。草がぼうぼうと生えているのでちょっと追跡が難しかったが、どうも水が中央に近い窪地の方に向かっているのと西の方の無人の敷地に向かっているということがわかった。


 じゃあ、この水はどう使おう? 西のは無理だな、俺の土地じゃないし、それに使いたくてもあっちは岩が多い。窪地に行ったのは作物?うーん、ちょっと嫌かもしれん。まあ、お前もか。だろうな、そうだよな、雨水や食べかすだけならまだいいが、生肉を台所で処理してるから、肉や血が流れた水を野菜に使うわけにはいかないな。それにヤマトが垂れ流しじゃまずいとか言ってるし。でもなあ、実家では確か垂れ流しだったような。まあ、この水だ。うーん、野菜じゃないとなると必然的に木か。おおい、また木じゃねえか。じゃあ、とりあえず仮決めにどこにするか検討しよう。


 となって、とりあえずこの辺ということに両者で一致したところに杭で印をつけた。


 そしてそのあとは、そうか仮決めってことでいいか、ということで俺はボウアが帰ってくるまで、今度は土地のどの辺に鶏小屋や馬小屋等を配置するか考えて杭を打って行った。


 あと今さら気が付いたけどこの前適当に掘った雪隠、あれ水の流れ的に大丈夫か?まだ引っ越してから雨が降ってないから、必要なら場所変えられるよな?明日にでもでボロボロで捨てる予定の桶をとりあえず実家から持ってこよう。桶と大量のわら、そして鶏や兎。当面持ってくるのはそれらだな。当分馬や牛は無理だろうな。なんか「とりあえず」ってのが多いな。



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