表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

コンビニアルバイト

 

「あと10分か…」


 コンビニバイトもあと僅か。

 仕事終わりというのはやる気が出る。もうそろそろ終わりだと思うと何故か元気が湧いてくる。矛盾している気がするが、気のせいだろう。ま、今日のアルバイトはこれで終わりだし、帰ったらゲームができるからそれが嬉しくて楽しみなんだよ。


「いらっしゃいませー」

「お弁当は温めますか?…はい了解しました」

「計580円となります。お支払いは?…スイカで、かしこまりました」

「ポイントカードお返しします。ここにタッチをお願いします」

「レシートは…不要ですね。ありがとうございましたー。次の方どうぞー」


 後輩のアルバイトとレジを回し、並んでいた列がひと段落したところで声を掛けた。


「んじゃ、俺上がるから。あとお願いね」

「は、はい。お疲れ様でした」

「ん、お疲れ」


 この時間帯は人少ないし、しばらくすれば違う先輩も来る。それまでなら1人でも大丈夫だろう。


 制服から私服に着替えて、レジ横の扉から外に出ようとする…と、レジ周りに妙な男3人衆がいた。


「ねぇーかわいいじゃん君」

「バイトの後、俺らと遊びに行かない?」

「え、ええと、その…いま金欠で…」

「大丈夫大丈夫、俺たちが全部奢るからさ」

「あ、あの…」


 …なんと古風な。店員にナンパなぞ。

 後輩の子に話かけているのは3人のチャラ男…いやこれはチャラ男に失礼か、3人の下品な男だった。大学生のようで、明らかに高校生な後輩を遊びに誘って(ナンパして)いる。今時いるんだな不良って…と、どこか感心してしまう程だった。

 傍から見たら普通にヤバい絵面だし、仕事の妨害は通報ものである。俺が介入するまでもなく解決するだろうが…その男3人衆はレジ横に寄りかかって後輩の子に話しかけていた。ただでさえ狭いレジ横の通路が、男の無駄にでかい図体によって塞がれていた。

 …これでは帰れないではないか。

 仕方ない…男達を押し退けて出口に向かおうとすると…


「そこ邪魔、どいて」

「ああん?誰だテメェ」

「あ、この人は…」

「あれ?もしかしてこの娘の彼氏?」

「い、いえ…」

「は?なんだ彼氏持ちかよ。ツマンネ」

「はぁ…帰るか」

「え…えぇ?」


 男3人衆は俺の姿を確認した途端、興ざめしたような顔をしてコンビニを出ていった。


「…何だったんだ?」

「あ、あの…ありがとうございます。助かりました」

「俺は何もしてない、ただ横を通ろうとしただけ。それに、あの手の類いは直ぐGMコー…じゃないや店長コールしなよ」

「あ…はい。ごめんなさい…」

「気をつけてね。…ってかあの手の輩って結構いんの?コンビニ以外でもさ」

「あ、はい。たまに『遊ばないか?』って声をかけられます」

「ふーん…ま、美形だし可愛いから男は放っとけないんだろうね」

「かわっ…!?」

「あ…ごめん。今のセクハラだった。忘れて欲しい」


 俺の迂闊な発言のせいで後輩は顔を真っ赤にして俯いてしまった。

 …これではナンパ野郎と同類では無いか。


「…じゃ、また明日ね」

「…は、はい。また明日…」


 まだ頰がほんのり赤い。俺の軽口に怒っているのだろうか。

 俺は手先は器用だと自負しているが、話術の方は下手くそである。ここから会話を立て直す方法を知らない俺は、とりあえず戦略的撤退(後回しに)することにした。


 コンビニを出る間際、後輩の呟きが聞こえてきた。


「『可愛い』だなんて…忘れるわけ無いじゃないですか…」


 …強請(ゆす)りのネタにする気かな?

 少し怖くなって、その日は若干早足で駅に歩く俺だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ