昼休憩
〈テルアデス〉を出発した一行。順調に進む旅路。目的地…〈宿場町ソラ〉までの距離が、半分の所で…昼休憩を取る。
〈コーティアン〉までの道程は、三日かかる。〈コーティアン〉から延びる水路を頼りに…進む。乗り合い車は、十時、十一時、十二時の三便。一日目の〈宿場町ソラ〉には、八時までには着く。
〈ソラ〉の近くには、〈騎士〉になる為の高等科学校がある。寄宿制で、十歳から十二歳までの子供が、通う。学費や生活費は、無料。ただし…武具類は、支給品で合わない者は、自己負担になる。その為、身を売って稼ぐ者もいる。街にあるものを〈花〉…街の外のものを〈月〉と言う。〈剣〉では、〈十三の剣〉が、やっていた。また、〈次代〉になる為の試練の一つとして、行っている。〈剣〉は、〈次代〉なる為の試練として、〈八の要〉参りをする。参る間は、親である〈剣〉の〈命〉を忠実に守らなければならない。破れば、〈手打ち〉…死が、待っている。ただし…〈三の剣〉だけは、〈次代〉としての試練は、受けていない。
荷台に、カーンとリューンが、座り…後ろの幌には、〈シーナ〉、〈三の剣〉と、エイナ、ミリリアが、対面に座っている。幌は、ムユの皮に防雨塗料を塗った物で、出来ている。左右に、ノートの雌を繋いでいる。右側の雌には、鍋やこっぷなどの家財道具を乗せている。
見事な鞭裁きで、ノートを操つているカーン。順調な走りで、整備された街道走っている。しばらくすると、中間地点を表す大木に出会った。ゆっくり…速度を落とす。「昼休憩を取る!。」幌の中にも届く、大きな声で言うカーン。止まるや否や!ミリリアが、勢いよく飛び出す。「お手洗い!。」「待て!ミラ!私も行く!。」エイナが、ミリリアの後を慌てて追い掛ける。二人は、右側の草むらに入って行く。「余り遠くに行くな!!。」「分かった!。」カーンの声に、エイナが、答える。「便所!。」リューンが、左側の草むらに入って行く。「〈三の剣〉。」〈三の剣〉に声を掛ける。「私は、必要ない!。」きっぱり言い放つ〈三の剣〉。左足側にあるオーブを確認するカーン。緊急の知らせは、入っていない。〈魔獣〉の気配も近辺には、感知してない。
「弁当を下ろす。」「〈三の剣〉!。あちらの木陰で、取りましょう!。」カーンの声に…〈シーナ〉が、応える。二本の大木の間、五人位が、座れる空間が、見える。
〈シーナ〉と〈三の剣〉が、幌から降りる頃に…エイナ、ミリリア、リューンが、帰って来る。幌から下ろされた弁当をエイナが、分ける。色とりどりの料理。野菜料理四、肉料理三、焼きそばなどの中間料理三。目移りするリューン。だが、取らない。〈三の剣〉と、〈シーナ〉が、先だから。エイナに睨まれ、縮こまっているリューン。カーンが、右の雌から器やこっぷを下ろす。ミリリアが、受け取り、持って来る。
〈シーナ〉、〈三の剣〉、カーン、エイナ、リューン、ミリリアの順に車座に座る。
「〈大地母神スフィア〉様!〈シセリウス陛下〉!〈シーナ〉様に、感謝致します。」〈三の剣〉が、口上を述べると、手を組む。カーン、エイナ、ミリリア、リューンが、倣う。「〈大地母神スフィア〉様!〈シセリウス陛下〉!〈シーナ〉様に感謝します。」
〈三の剣〉が、指し示めた料理をカーンが、取り分ける。エイナが、水筒に入ったお茶を配る。〈シーナ〉と〈三の剣〉が、ゆっくり…食べる。ごくりー生唾を飲むリューンとミリリア。「〈レリー〉達も…食べていいですよ!。」〈シーナ〉の声に…満面の笑みを浮かべると、ふらふらと、弁当に近づくリューンとミリリア。じろりーカーンが、一瞥すると、皿を配る。エイナが、取り分ける。大盛りに盛られた料理の数々を次々と食べ合うリューンとミリリア。にこにこ顔の〈シーナ〉。目を合わさない〈三の剣〉。微妙な空気の中、穏やかな午後が、過ぎていく。時折、吹き抜ける風が、気持ちいい。