〈コーティアン〉その1
〈コーティアン〉に到着した。
惑星スフィアナールで、一番大きな大陸…〈ワンダーフ〉大陸。その大陸の北に位置し、最も…大きな国土を持つ〈八の要〉が、一つ…〈ララ〉の治める通称〈ワン〉。その首都〈コーティアン〉に到着した。首都だけあって、その広さは、〈港町テレアデス〉の2倍近い広さを誇る。最も…北に〈ララ〉の居館。そこから楕円形に街が、広がり…東西、南に…〈関所〉がある。ガナロ山の西からは、そのまま…西に向かい人間の港町カフスに行くユース川と、南に向かって流れるカーディス川がある。カーディス川は、水路として〈宿場町イース〉、〈宿場町ソラ〉を経て、〈港町テルアデス〉に流れている。南の〈関所〉は、カーディス川の先にある。一重の壁を抜けると、街に入る迄の道程は、田園風景が広がり…様々な作物が、育てられている。植物の成長も生物同様…著しく早い。三月程で、稲や麦などの穀物が、収穫出来る。一番…早い物だと、五日で、収穫出来る。
人間の港町カフスは、〈魔王シセリウス〉が、認めた町で、薬種関係の一族が、代々…100万年間、住んでいる。余談であるが、〈三の剣の副官〉ダウルは、ここの出身である。
「すげ、すげ、すげぇーーー!!!。」周り一面の穀物畑に感嘆の声を上げまくるリューン。幌の中で、顔に手をやり、恥ずかしがるエイナ。小声で、「ほーんと…子供何だから…。」ぼそり…呟きながら、呆れ返るミリリア。対面に座る〈シーナ〉は、相変わらず…にこにこ顔。〈三の剣〉は、素知らぬふり…全くの無関心。
「リューン!。落ちるぞ!。」綱を持つカーンが、ぼそり…呟く。「……へぇーい!!。」感情に水を差され、白けるリューン。それも!束の間…。直ぐに!目を輝かせながら…周りを見る。
しばらくすると、遠目に!車の列が、見え始めた。カーンが、徐に…「もうすぐ…〈関所〉だ!。」減速を始める。〈三の剣〉が、幌から顔を出すと、腰から〈札〉をカーンに渡す。受け取ると、「リューン!エイナ!」〈リング〉を嵌めるよう…声を掛ける。がさごそと、懐から…少し、慌てて…〈リング〉を取り出すと、右腕に嵌めるリューン。落ち着いた様子で、嵌めるエイナ。対面に座り直すと、オーラを下げる〈三の剣〉。それを確認しつつ…列の最後尾につく。綱をリューンに預けると、懐から太めの〈リング〉を取り出し、右腕に嵌める。左右の耳に付けた小ぶりの飾りをいじると、オーラが、上がった。リューンは、ぼんやり…《上がった!》感じるも…何故かは、分からない。名前のせい?考えるも直ぐに!思考を停止する。考えたくないのだ!。エイナは、はっきりと、認識する。〈三の剣〉の明らかに違う態度。〈剣〉しか…〈剣〉以上しか…持つことの出来ない〈青銀〉の剣。《やはり…あの方なのだ!》。オーラを感知出来ないミリリアは、エイナの様子に戸惑う。
「さて、今回は、如何かな!。」にやり…口元を緩めるカーン。いや!目元も緩んでいる。遊んでいる?!。明らかに!楽しんでいるのは、事実!!。何故?!。
同席しているリューンは、全く気付いていない。始めての〈関所〉に緊張しているせいだ!!。幌の中のエイナもミリリアも同様に!緊張している。対面の〈三の剣〉と、〈シーナ〉の様子は、変わらない。余裕さえ感じる。
「〈手形〉を出せ!。」〈盾〉と覚しき青年が、車に近づき、〈手形〉を仲間が持っているオーブと確認していく。その間に…仲間数人が、幌の中と下をくまなく…探索。不審者が、いない事を確認していく。人数分の関料支払って、更新された〈手形〉を受け取る。単独の〈傭兵〉は、一般人の1.5倍の関料が、必要になる。雇われている場合は、一般人と同じ。もし…不審者が、発見されれば、〈手形〉を没収され、如何なる理由があっても…3年間…街への立ち入りが出来ない。〈新年祭〉の時でもある。〈傭兵〉は、自由と引き換えに…街への出入りが、厳しく…制限されている。〈騎士〉になる以上、街に…縛られるのは、致し方ない。それが、〈魔族〉の…〈魔王シセリウス〉での一般論。それ故、〈傭兵〉を一生続ける者は、少ない。皆、二十代半ば迄に…〈盾〉や〈名も無き騎士〉になる。〈錨〉や〈鏡〉は、特殊な為、〈傭兵〉からなる者は少ない。〈錨〉は、海上での任務。〈鏡〉は、半神官故に…神事の事柄を覚えなければならない。
「よし!。次!!。」前の車が、検問に合格し、通過していく。いよいよ…番だ!!。カーンは、至って冷静。余裕で、綱を振るう。どぎまぎしているリューンは、うつむいてしまう。それを…少々…怪訝に思いながら…「〈手形〉を出せ!。」カーンに声を掛ける。カーンは、〈手形〉と、一緒に…〈札〉を見せる。「!!!!。」驚き過ぎる青年。幌に近づく…仲間に!怒鳴混じりの声を上げる。「待て!!。」戸惑う仲間を余所に…幌に近づく。「失礼致します!。」幌の入り口…対面に座るエイナは、かちこちに固まっている。ミリリアは、有らぬ方向を向いている。冷静な〈三の剣〉は、青年に…体を向ける事無く、「務めご苦労!。」一言…声を掛ける。頭を下げている青年は、「失礼とは、存じますが…ご尊顔を…拝したく存じます。」「!!。」「〈三の剣〉…。」〈シーナ〉が、声を掛ける。少年の声に驚く青年。向き直り、「見よ!。」「はっ!。」頭を上げ、〈三の剣〉の一瞥すると、跪き…深々と、頭を下げる。「失礼つかまつりました。」腰を下げた状態のまま離れ…仲間に「下がれ!!。」「はっ!。」「は、はい!!。」ばらばらと…車から離れると、跪き…頭を下げる。二人だけは、離れるも…周囲を警戒する為、車を一瞥すること無く、車の後方を見ている。「〈盾〉の者!。」カーンが、声を掛ける。「はっ!。」「〈ララ〉様に、〈レリー〉が、来たと…。」「?!。」怪訝に…カーンを見る。「そう伝えれば、分かる。」「はぁーは、はい!。」綱を振るい、ゆっくりと、車を走らすカーン。