ユラその2
人間の町ユラで、歓待を受ける一行。
浴場は、町長の家の奥。家二軒分の広さを持つ大きな建物。中は、脱衣所と石造りの大きな露天風呂。浴場に入ると、先客がいた。渡りの売春人〈月〉と〈傭兵〉の女だ。売春人は、〈要〉に居る者を、〈花〉…渡りの者を、〈月〉と、呼ぶ。〈要〉に居る者の数は、決まっており、また…定期的に、顔ぶれを変えている。大体…三カ月に一度の長期の休みに交代する。売春人は、男も女も居る。男は、少年が、殆どである。定職の者もいるが、殆どは、副職で、その大半は、家庭的事情…例えば、〈騎士〉なら支給される武具が、自分のオーラと、合わない者。〈オリハ=ルコス製〉以上の武具が、必要な者。〈刀〉や〈剣〉の候補者。あくまでも候補者であって、〈剣〉による選別が、成されていない者。
エイナより大きな胸を持つ女が、近づいて来た。「お嬢さん達!どうしたんだい!。」ゆさゆさと、胸を揺らす。その迫力にたじたじになるミリリア。エイナも怯みそうになるのを必死にこらえ、「〈紫銀の剣〉様が、湯浴みをされる。」ざわめく女達。「分かった。マサル!どきな!!。」「はーあい!」少年の声が、浴場の外から聞こえる。「あそこが、穴場だ!。」垣根を指す。「分かった!。ありがとう。」「さあっ!。みんな出な!。手打ちに合うよ!!。」女の声に…直ぐに別の女達が、「はい!。」「はあーい!」「了解!。」「分かった!。」ばらばらと、浴場から上がる。女達が、去ると…エイナは、ミリリアと共に…点検する。粗相のないように…手打ちに合わないように…念入りに点検する。「ほーお!!。」一息つくと、「ミラ!戻るぞ!。」「うん!。」脱衣所を点検していたミリリアが、頷く。
林の中程…鬱蒼と茂った木々の間を歩くカーンと〈三の剣〉。似たような木々の間を躊躇なく進むカーン。〈三の剣〉は、その後をゆっくり…続く。一本の大きな人工本マゼルに近づくカーン。見た目は、他の木々と変わり映えしない。ただ…他の木々と違い…オーラを点滅させている。他の木々は、オーラを一定の割合で、灯している。マゼルに触れると、音もなく…観音開きに開く。「わし用になっている。少し…きついかもしれん!。」「やはり…あなたは、〈レプナカーン〉様なのですね。」ふっ口元を緩ますと「あいつの所に行けば、判る。」意味深な言葉を返すカーン。その答えに納得した〈三の剣〉は、鎧の左首元を強く押して脱ぐと、前開きの戦闘服も躊躇なく脱ぐ。鎧は、膝を曲げた形で、組み上がっている。戦闘服は、綺麗に畳んで、鎧の隣に置く。すたすたと、マゼルに入っていく〈三の剣〉。音もなくマゼルは、しまう。清々しい風が、林を吹き抜ける。仁王立ちのカーンが、静かに佇む。ゆっくりと、時が進む。