〈宿場町ソラ〉
夕方、〈宿場町ソラ〉に到着した。だが、〈三の剣〉は、リューン達に…馴染めていない。ぎくしゃくした一日が、過ぎる。
夕方の七時頃。夕闇に包まれた〈宿場町ソラ〉に到着した。宿場町の後ろには、魔獣カマ除けの人工林カマルの林が、広がり、中ほどに水路がある。水路は、〈港町テルアデス〉迄、続いている。宿の入り口には、空室か満室かの知らせる20地程の筒状のナベが、置かれている。赤は、満室。白が、空室。車をゆっくり進ませ、宿場町の中へ入って行く。赤が、三つ。白が、四つ過ぎ、五つ目に車を入れた。小屋の前で、車を止め、ノートと切り離す。部屋は、小さな家である。台所と寝室だけの空間。エイナは、降りると台所のかまどに近づき、真ん中になっているのを確認すると、オーラを放つ。火をつけたのだ。〈スフィアナール〉には、火は…がすは、存在しない。生きている者には、必ずあるオーラで、全てを賄っている。通信や電気、位置情報など。高いオーラを持つ者は、少ない量で、沢山の事が出来る。かまどは、調理だけでなく、結界の役目も担っている。
寝室は、二段寝台が、二つあるのと、壁際に折り畳式のちゃぶ台が、一つある。それだけだ。台所は、かまどと流し台が、あるだけ。冷蔵庫などは、無い。水道も無い。代わりに、水路から引かれた水場が、小屋の外に有る。蛇口をひねって、水を確保し、小屋に運ぶ。半下水道は有る。小屋から林の下まで伸びている。
エイナが、かまどに坂鍋〖フライパン〗を置き、弁当箱に残った料理を再調理する。リューンとミリリアが、ちゃぶ台と食器を置く。カーンと〈三の剣〉は、用事があると言って…脇に広がる林に入って行った。〈シーナ〉は、外で、優雅にお茶。
夕食を終え、後片付けをするエイナ、ミリリア。リューンは、幌から毛布を出し、寝台に掛ける。〈三の剣〉、カーンは、外で、手合わせ。〈シーナ〉は、お茶を飲みながら…優雅に…見学。リューン、エイナ、ミリリアも…それぞれ終えると、一服…お茶を飲み合う。手合わせを終えたカーンが、入って来る。〈三の剣〉は、〈シーナ〉が、淹れたお茶を飲んでいる。一通り…見て回るカーン。検査を終えると、〈シーナ〉達を呼びに行く。一言二言…言い終えると、〈三の剣〉は、幌に向かって行く。それを呆れた顔で、見送るカーン。困った顔の〈シーナ〉。
二人が、中に入って来ると、カーンが、「エイナとミリリアは、左の下の寝台。リューンは、右の上。わしと〈シーナ〉は、下で、休む。」「あぁ!。」「はぁーい!」「へぇーい!」三人は、応える。
万一に備え、下の寝台で、カーンとリューンは休む予定だった。だが、〈三の剣〉が、幌で、休んだ為、リューンは、一人で、休む事になった。
翌日、またしても…カーンと〈三の剣〉は、林に入って行った。〈シーナ〉は、外で、優雅に…お茶。リューンは、毛布を幌に積む。エイナとミリリアは、買い出し。宿泊している旅商人の元に向かう。そこで、卵や燻製肉などを買う。美女と美少女。愛想よくすれば、少しは…安く買える。もしくは、おまけにありつける。〈傭兵〉としての悪知恵である。まぁ…こうでもしなければ、生活が、成り立たない。〈傭兵〉の生活は、それ程…厳しい。とは言え、〈三の剣〉と、〈シーナ〉が、同行している為、今までよりは、生活は楽である。
エイナとミリリアが、戻って来た。エイナは、両腕に籠…卵や燻製肉。ミリリアは、野菜や果物を両腕に抱えて、持って帰って来た。〈シーナ〉とリューンが、にこやかに迎えた。「お帰り!。」「ただいま!。」「いっぱいー!買ってきたよ!。」〈シーナ〉の声に、エイナとミリリアが、答える。中に入って、お茶の用意をするエイナ。リューン、ミリリアが、ちゃぶ台を置く。〈シーナ〉は、エイナの手伝い。しばらくして…カーンと〈三の剣〉が、戻って来た。危ない足取りの〈三の剣〉は、家に入る迄は、カーンに支えられて来た。低いオーラの〈三の剣〉に疑念の表情で、迎えるエイナ。リューンは、きょとーんと見る。「お帰り!。」〈シーナ〉の声に…〈三の剣〉は、応えられない。「お待たせしました。」カーンが、代わりに…答える。
〈シーナ〉を上座。左に…カーン、リューンが、座り、右に〈三の剣〉、エイナ、ミリリアが、座った。食卓に置かれた様々な料理。昨日と違って、肉料理が、多い。野菜は、日持ちのする物や乾燥野菜を戻した物しか無い。「〈三の剣〉。いっぱい食べなさい!。」〈シーナ〉の声に…「……はい。」不精不精…答える〈三の剣〉。その箸は、重い。リューンとミリリアは、縮こまって…食べている。エイナは、数少ない…野菜料理にばかり…箸が、進む。カーンと〈シーナ〉は、余り…食べていない。卵料理と肉料理を少し…手を付けているだけだ。「今日は、人間の町ユラに寄る。」カーンが、食べながら言う。「新鮮な果物が、欲しい。」〈三の剣〉が、ぽつりー呟くように言う。「判った!。用意させよう。」「リューン、エイナ、ミリリア…。わしは、先に行く。」
「へぇーい!。」「判った!。」「はぁーい!。」三人三様…答える。「はぁぁー。」嘆息をつくと、〈シーナ〉に、「参ります。」「頼みましたよ。」〈シーナ〉が、応える。「はい。」答えると、出て行くカーン。二頭の雌を連れ、ユラに、向かうカーン。「少し、休みましょう…。」〈シーナ〉が、言う。「はい。」「へぇーい!」「判った!。」「はあーい!。」〈三の剣〉、リューン、エイナ、ミリリアが、応える。