出立
いよいよ…始まりました〈幻星記〉本編。また…長く掛かりそうです。気長に読んで下さい。
〈八の要〉…其れは、世界に点在する八つの国の総称。〈魔王シセリウス〉の代行として、一部の〈魔族〉が、人間を管理…統率する。それぞれ…三から五の街で、形成されている。
待ち合わせ場所のリアス海岸に来ているリューン、カーン、エイナ、ミリリア。落ち着かないリューンは、波打ち際で、手の平程の貝殻を拾っては、海に飛ばしている。ミリリアは、綺麗な貝殻や珍しい貝殻を集めては、肩に下げた…小さな布袋に、入れている。後で、加工して…売る。カーンから貰う小遣いでは、足りないからだ。エイナは、それを手伝っている。その近くで、カーンは、仁王立ちで、周りを…〈魔獣〉を警戒している。それぞれ…毛布を止めた、大きなりゅっくを一つずつ…カーンの傍に、置いている。
時刻は…八時半を過ぎようとしている。満天の夜空に…三つの衛星を従えた…二つの月が、リューン達の前後に出て…美しい。雲は、ほーんの少し…ある程度。
苛つくリューン。素知らぬ顔で、エイナと、ミリリアは…貝殻集めをしている。カーンは、警戒中。
それから…ほーんの少し、経った頃。
「来たぞ!。」カーンの少し…大きな声に!リューン、エイナ、ミリリアが、集まる。程なくして…外套を羽織った、鎧姿の〈三の剣〉が、見知らぬ少年を連れて現れた。年の頃は、十四五。背は、ミリリアより少し高めの181地。漆黒の闇夜のごとく黒い髪と瞳の少年。人間にしては、かなりの美形。…人間離れしている。とは言え、〈魔族〉では…無いようだ。きょっーとーんと、首を傾げるリューン。ミリリアと、エイナも…顔を見合わせる。
「待たせましたね。」顔同様…美しい声。そして、柔らかい。〈三の剣〉と、カーンが、跪く。エイナと、ミリリアが、慌てて…カーンの傍によると、跪く。リューンは、まだ…呆然としている。エイナが、立ち上がり…リューンを頭ごなしに跪かせる。嫌々…従うリューン。
「あちらの姿では、目立ちますからね。」にっこり…笑顔を見せる少年。「〈シーナ〉と、呼んで下さい。…様は、入りません。」
砂地は、硬い為…沈まない。ゆっくり近づく〈シーナ〉。〈三の剣〉が、後に続く。荷物は、両肩に毛布を丸めた二つと、前にそれより大きい袋が、一つ…大事そうに持っている。
「〈レリー〉。」〈シーナ〉の声に呼応して〈三の剣〉から左側の毛布を丸めたりゅっくを貰う。
「全員…りゅっくを背負ったら…円に成って下さい。〈レリー〉は、右。〈三の剣〉は、左。」「エイナは、〈紫銀の剣〉の隣。リューンは、わしの隣。」〈シーナ〉の声に続き、カーンが、言う。
「何も考えないで、目を閉じて下さい。」言われるままのリューン達。素直に従う。全員が、円になると、
「飛びます。絶対に手を離さないで、下さい。」〈シーナ〉の周りが、砂柱が…上がる。それが、全体に広がる。と、同時に!全員が、浮かんだ。そのまま…横に飛ぶ。しばらくして…リューンが、目を開く。「!!?!。」思わず!…手を離してしまう。「何をしている!!!。」「馬鹿!!。」カーンとミリリアの抗議の声が、同時に!上がる。海の真っ只中だったからだ!。慌てふためくリューン。エイナも呼応して離しそうになる。カーンとミリリアの二人は、空を何度か…彷徨いながらリューンの腕を摑む。リューンも同じく彷徨いながら…なんとか摑む。下がった高度を上げる〈シーナ〉。バランスを崩しながらゆっくり…上がる。ただ一人…冷静…冷ややかな態度の〈三の剣〉。しばらくすると、陸地が、うっすらと見えてきた。
「もう少しで、着きます。」〈シーナ〉の声に…カーンと〈三の剣〉が、着地体勢に入る。エイナは、「ミラ!!。」合図を送る。「うん!!!。」
薄闇に浮かぶ…砂浜。穏やかな波が、打ちつける。ゆっくりと、近づくと、高度を下げる〈シーナ〉。一空程の高さになると…カーン、〈三の剣〉が、手を離すと、一回転して、着地する。エイナは、ミリリアを抱えるように…引っ付きながら着地する。リューンと、〈シーナ〉は、ずっぽりー!!!…砂地にはまる。
「ぺっ!ぺっ!ぺっ!」口に入った砂を吐き出しながら、砂地を這い上がるリューン。カーンと〈三の剣〉が、〈シーナ〉を引き上げようとする。だが、重い!。70ガロ〖キロ〗も有る。「リューン!!。」カーンが、声を掛ける。よろよろと、リューンが、近づくと、手伝う。三人掛かりで、なんとか…〈シーナ〉を引き上げようとする。「済みませんね。」悪びれた様子を見せる事なく言う〈シーナ〉。なんとかこんにか…引き上げに成功する。〈三の剣〉が、〈シーナ〉の体や外套に付いた砂を丁寧に払う。抱き上げようとして、砂地にはまる。カーンが、「わしが、やろう!。」「頼みます。」〈シーナ〉が、応える。〈三の剣〉が、離れ、カーンが、余裕で、抱き上げる。カーンを先頭に…〈三の剣〉…エイナ…ミリリア…リューンの順に続く。