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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

絡みつく蔦

作者: 杉野御天

私の趣味です。「究極の愛は、死を超える」がテーマです。ええ、私は変態です。


溺れる...

溺れる...

冷たい水が入ったり来たり

茶色の髪がゆらゆら揺れて

綺麗だと思った


私は、溺れていた。


グイグイと喉を締める恐ろしい手、いつも綺麗だと思っていた手が、今は私を締め上げている。


綺麗な顔を醜く歪め、笑う男。


私の視界が真っ紅に染まる。


死んじゃう?もしかして私このまま死んじゃうのかな?


別に血が流れたわけではない。

殴られたわけでもない。

ただ私の身体は水を張った湯船に沈められていた。


私は首を絞められ、両手は後ろに一つに纏められ抵抗も出来ずにいた。


「うっ、うぐぅ.....」


ふと見る視界いっぱいに、狂気を宿した真っ暗な瞳が、溺れ掛けている私を見ながら突き放す。


助けて

助けて祐一!

私は今私を溺れさせようとしている張本人に助けを求めた。


祐一?私なんかした?

祐一が遠くなっていく。


脳が酸素を求めている。

「ゴボォ」

溺れる私は醜い声を上げた。

凄い力で締められる首の肌の下で、毛細血管が切れる音を聞いた。


口に入ってくるのは水だけで、肺に水が溜まっていくのがわかる。

それでも祐一を呼ぶ私。

目の前で私を溺れさせようとしている男の名前。


どうしてこんなことをするのかと

私を嫌いになったのかと。

疑問はいくつも湧いて出るのに、口から出るのは醜い叫び。


薄れていく意識の中で、私は祐一を見た。その目は今にも泣きそうだ。

私の自由を奪い、言葉を奪い、奪うだけ奪い、それでもまだ足りないと目が言っている。

そんな祐一を私は何故か悲しく思った。


私の口から出る泡が、祐一の悲しい姿を隠している。

私の視界は血のように真っ紅に染まる。水面がユラユラと揺れて波紋を描いてる。


目の前に忍び寄る真っ暗な闇。


(いけない....このままでは)


意識を手放しそうになるのを必死で取り戻す。


だって私はまだ死ねない。

だって私はまだ聞いていない。

何故祐一がこんなことをするのかを。

何故祐一は一言も話さないのかを。


空気の代わりに口に入り込む水を、肺が受け入れて気持ちいい。

溺れる...

溺れる...

冷たい水が入ったり来たり

茶色の髪がゆらゆら揺れて

綺麗だと思った


嗚呼、このまま私


私、死ぬんだ。

このまま祐一に殺されちゃうんだ。


もう、理由なんてなくていいよ。

私、嫌われててもいいよ。

私、祐一になら殺されてもいいよ。


私を捉え掴んでいた綺麗な手がいきなり離され、水の底に沈んだ。


やっと解放された。

でも身体の自由を奪われてるから、私の頭はそのままブクブクと水に沈んでいった。

溺死するんだね?


ああもう、溺死でもなんでもいいよ

あなたに見られながら死ねるのならなんでもいいよ


と思っていたら、いきなり水から引き上げられた。


いきなり引き上げられたから、水が入り込んだ器官が混乱して、肺や喉や胃に入ってた水が、一気に飛び出して、臓物が出るんじゃないかってくらい私は咳き込んだ。



「ゲェエッ....ぐほっ、ガハッ、オェエ......」



枯れた筈の涙と鼻水、そして胃液を吐く。

すると私を死なせかけた祐一の腕が私を持ち上げた。


「あのまま死にたかった?ふみちゃん」


私の髪を無理に掴み上げ、大好きな祐一が耳元でそう囁いた。低くて心地良いその声は、こんな時でさえ甘く響く。

待って、まだ呼吸が整わない。整ったら言わなきゃ、


祐一、私のこと嫌い?


「俺、ふみちゃんの事殺したい程好きなんだ、多分」


と、狂気と殺意を込めた愛を囁く。

ああ、そういうことだったの?

それならいつでもどこでも私のことコロしていいよ?


祐一、私の祐一。

いつでも殺してきていいからね??


きっともう最初から狂っていたんだ。お互いに。

絡みつく蔦のように、もつれてあって千切れないほどに


「「アイシテルヨ」」


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