1話 少年は目覚め、少女と出会う
はじめまして、雪リア綺晶です
書き方がいまいち分かりませんので、読み難い箇所はご報告下さい
「……なんてこった」
目覚めて早々、俺の口からはそんな言葉しか出なかった。
当然だ。朝、目が覚めたら真っ先に目にするはずの無機物が一切無い。
天井もなけりゃ壁も、ベッドも棚も……何にもねぇ。……その代わりに、辺り一面の花がこれでもかと俺の視界に入り込んで来る。
……どうやら俺は花畑で寝ていたらしい。
それも、地面の見えない位に咲き乱れる花々と雲一つすら無い晴れ渡った青空しか見えない程広い所だ。
そんなに広い花畑、日本にあっただろうか?
いや、そもそも俺はインドア派だ。それこそ暇さえあれば家に引き篭もってラノベの数冊でも読み耽っているだろう。
……そんな俺が果たしてこんな青臭い……いや嘘、不自然な程に凄くいい香りだけども、とにかく外で自分から寝転がる事があるだろうか。
取り敢えず立とうとする為に花の上に寝転がった体を「ふっ」と息を吹きながら腹筋に力を入れて起こす。……何故か、上体を起き上がらせるだけで全身に激痛が走った。
俺は一体何時からアウトドア派、それもこんな全身を痛めるようなスポーツを始めたのだろうか。
真剣にそんな事を考え始めた頃、ふと背後に気配を感じたので振り返る……と、あら不思議。俺の背部にはぼうっとしていそうな女の子がこちらへ顔を傾けたまま佇んでいた。
風に靡いているのは、腰に掛かる程度には長く、限りなく白に近い銀髪。
白銀の前髪の狭間から覗くのは、完全には見えないからか、少し眠たそうに見える金眼。
白いドレスから延びているのは、透き通る様に白く、真珠の如く美しい肌。
月並みな表現だが、最早二次元の産物だとすら思える程の美しい少女――うん、決めた。彼女を今から、『美少女』と命名しよう――を、首を正面に戻してその勢いを利用して美少女(仮名)の方へ身体ごと向き直し胡座を直してから彼女を眺める。
……上背と胸部の身長が低いところを見るとまだ10代前半、といったところだろうか。……初対面の女の子のチェックの仕方が酷いな、俺……
だが、幼くも見えるがもう少し見た目よりも雰囲気が熟練されている様な気がする。てか可愛い。
そんな事を頭の中で考えていると、美少女(仮名)はようやく声を発した。
「……貴方は命を失った。」
「ファッ!?」
唐突なジョーク(であって欲しい)に俺は思わず間抜けな声を発してしまった。
…冗談、なんだよな?
と、とにかく、ここはジョークで返すのが礼儀だろう。
「オー、ジャーココハ、アノヨナノー?ハハッ?」
顎を突き出し、肩を竦めながら、語尾に『W』でも付いてしまいそうな程、彼女に全力でひょうきんにそうぶっ放ってやった。
「………」
……しまった、白けたか。そもそもアメリカの死後の世界はあの世で合ってたっけ?というか俺は少女の容姿チェックの仕方だけじゃなくギャグの才能も酷いんだな……
居心地の悪い空気の中、美少女(仮名)の顔をちらりと覗いてみる。……よかったあ、びっくりする位困惑してる!
少なくとも冷めた視線で貫かれる位なら理解できていない方が俺の精神安定上有り難い。
「……やっぱり面白い、人……」
待って、美少女(仮名)ちゃん、落ち着いたと思った途端にそんなに優しい表情で俺を見ないでよ。お兄さんメンタルぶっ潰されて泣いちゃう。
尤も、「ふふっ……」 と、微かに笑っているのであろう声が聞こえた瞬間には心の中で泣いたさ。感動で。
「……そんな事より、聞いて」
その言葉と共に、美少女(仮名)の表情は再び無機質なモノへ戻る。
……おっと、さっき言いかけてた言葉の続きが始まるか。
俺は今の状況を知りたいので、大人しく美少女(仮名)の目を見据えて話を聞く体制に落ち着ける。
その一部始終を眺め終えた頃、美少女(仮名)は言葉を続ける。
「……貴方は、死んだ。命を、奪われた。貴方の仲間に、殺された。」
……俺は思わず唖然とした。
忘れた過去には仲間に命を奪われるようなものまであったのかよ。
「ちょっと待てよ?どうして俺はそんなことになった?そもそも俺は一体何なんだ!?名前すら思い出せないんだ。と言うかここは日本なのかっ!?」
少し焦って彼女の話の途中で捲し立ててしまった。俺は何故命を失ったと言われて生きているのか。何故記憶を失ったのか。ここは日本なのか。すぐに答えに辿り着きたかった。
「……落ち着いて。今から貴方の、その質問の答えを全て、話そうとした」
ゆっくり、確実に紡がれる言葉でそう告げられて俺は冷静さを取り戻した。……勝手に相手の話の腰を折って、捲し立てて、挙句その相手に諭されるなんて、ださいな。俺……
「……悪い。もう余計な口出しはしないよ。だから、続けてくれ。」
……俺は一旦深く息を吐き、冷静になったところで美少女(仮名)に話の続きを頼む。
「……おっけ。」
彼女は少し微笑みながら了解した後、再びその笑みを表情から消し去り、話を続ける。
「まず、貴方の名前。貴方は、『セイヴァ』。この世界、『ティクォーニア』の危機を救う為に、異世界日本から召喚された。」
おおぅ、俺ってばいつの間にそんなラノベみたいな事に巻き込まれてたのか。
それにしても……『この世界の』名前、か。まあ、ここが日本じゃないなら本名なんてどうでもいいか。彼女がこの世界の住人なら聞いたって知らないだろうし。
「そして、貴方はこの世界で……死んだ」
えっ?やっぱり聞き間違いじゃないんだね?
だけどいくら何でもそりゃ……わあ、心当たりあるなぁ。
俺は記憶を無くして倒れていた。 ……つまり、記憶を失う程のショックを受けた訳だ。
なら、有り得ないこともないだろう。それに、そう考えれば起き上がる時に全身を駆けた痛みも……まぁ、苦しいけど説明がつく。……そして今生きているのは運が良かったか、何者かに蘇らされたか……か。
……もっとも、後者は『非現実』が絶対条件だけど。
「……じゃ、俺の、死因はやっぱり……?」
自分の死因を尋ねるなんて生きてる内にするとは思わなかったな。
だけど、聞き間違えであって欲しかった案件が残っていた。
美少女(仮名)は若干迷うように俯いたが、すぐに俺の方へ向き直し、語る。
「……貴方は、魔神討伐に向かう際、三人の仲間に巡り会った。
一人は闘士。独特な剣技を扱い、体術の才能をも見せつけた少年。
また一人は魔術師。知識と魔術の才能に溢れていて、属性元素の扱いに長けている少女。
さらに一人は治癒術師。貴重な光属性の属性元素の使い手。故に治癒だけではなく敵を排除する術も習得していた少女」
……う、ん?よく分からないな。何故そんな話をするんだ?それに、えれめん……てぃあ?とか良く分からない単語も出て来たな。この世界の常識なら後でしっかり聞いておこう。
「その仲間達に……貴方は殺された」
……少女の紡ぐ俺の物語は、俺の願いをあっさり引き裂いた。
……だけど、その物語の主役の俺には『少し』、心当たりが無かった。




