雷電の章 その三
晶「お、またその二が飛ばされてるな………」ネコ「そんなことより、今日は一言言わせてもらいたい。のども変わったことだしな」晶「なんだ?言ってみろよ」ネコ「うむ………感想を私にくれぇ〜……すっきりした」晶「…………」
九、
「あ〜きらっ!!」
読書をしているところへ耒がやってくる。その表情がなにやら含むところがあるようで恐い。
「………ん?なんだ、耒」
幼い外見をしている相手に対して恐怖を抱くのは俺の中ではかっこ悪いということなのであえて、何気ない感じで相手に尋ねる。
「ちょっとお願いしたいことがあるんだけど〜」
「……………なんだ?」
ははぁ、やっぱり何か一物を抱えてるな?
「怒んない?」
「怒らない」
「嫌がらない?」
「嫌がらないから言ってみろよ」
「ん〜一緒にお風呂にはいって?」
――――
「だ、誰がはいるかぁぁぁぁあ………はぁ………はぁ………最近こんなんばっかりだな」
顔が上気しているのがわかるし、まともに物事を考えることも出来ない。
元凶である耒のほうを見ると………
「えへへ………ソフトクリームだぁ………」
よだれをたらしながら俺の左側に寝ている同居人………ニコニコしてやがるし、まだこいつの場合は続きがあるだろうなぁ………この一週間、奴は一言多い寝言をかましてくれている。
「晶のおごりだからおいしく感じちゃう♪」
「黒いな…………」
こいつ、成長したらどうなるんだろうか?
「………晶様ぁ、朝ですよぉ〜……むにゃむにゃ」
耒の向こう側では寝ぼけた藍が正しいことを言ってくれている。
「………しょうがねぇ、マラソンいくか………」
寝不足が続く最近…………マラソンに行くのがおっくうになってきたのだが継続は力なのだと俺の先生は叫んでいる。つまり、力というものは継続しなければ手にはいらないのだろう。
――――
「あ〜しんどいなぁ…………」
「お帰りなさい、晶様」
「お帰り〜晶」
疲労感をお土産にして帰ってきた俺の目の前に朝食が置かれる。
「…………バナナ?」
朝食がバナナ……だけとは………これは一体、どうしたものだろうか?
視線を藍に向けると何故か耒が俺から顔をそらした。
「…………実は、耒ちゃんが晶様の分まで食べてしまったんです」
「…………」
「あ、あはは………おいしかったからつい…………」
耒は笑ってごまかそうとしているのだろう、下を向いて決して俺と目を合わせないようにしている。
俺はいらいら感がたまっている状態だったのであったまにきた。俺の中の悪魔もそう叫んでいる。
『朝食の仕返しとして耒を食べちゃいなよ♪』
なんてことを言うんだ、俺の悪魔は!悪魔はやっぱり悪魔か?
この暴挙に対して俺の善良なる天使が救世主として現れる。
『いけません………もうちょっと大きくなって食べたほうがよろしいとおもいます』
『ああ、なるほど………』
天使、てめぇも相当黒いやろうだ………悪魔、お前は何敵の言うことに納得してんだよ。
『じゃ、とりあえず今回は野球拳の刑で我慢するってのは?』
『いえいえ、そのようなみだらな刑はいけません。耒さんは悪気があって朝食を食べてしまったわけではないのですよ?耒さんは許してあげましょう』
お、いいぞ天使…………まともなことを言うじゃないか。
『いっそのこと藍さんに相手になってもらいましょう♪』
てめぇはもう一度下級天使から勉強しなおしたほうがいいな。
「ふぅ………とりあえず、耒………お前はばつとして今日の放課後俺と一緒に夕飯の買い物に付き合うこと!いいか、絶対にお菓子とか買ってやらないからな?」
「ぶ〜」
お菓子という言葉に反応して奴はほっぺを膨らます。
「ったく、俺の朝食取りやがって………こうなったら常備している俺専用のプリンでも食べるか…………」
「あ……………」
冷蔵庫を開けた瞬間にどちらかの声が聞こえてきた。そんなものお構いなしに俺はプリンに手を伸ばそうとして…………
「…………ない」
神々しくて優しく俺を癒してくれる女神がいなかった。俺は髪の逆鱗にでも触れてしまったのだろうか?
金色に輝く姿はどこにもいなかった。変わりにおかれていたのは
「食べちゃった!てへっ♪」と書かれた紙だった。
「………耒ぃ………お前か!お前が俺の女神を……くぅ〜………どうしてくれようか!」
「わ、わざとじゃないって!!!く、苦しい………」
耒の胸倉掴んで締め上げる。
「この紙はどう見ても悪意あるお前の仕業だろうがぁぁ!!」
「あ、あたしじゃなくってもう一人のあたしが………」
「言い訳無用!!!お前、一週間おやつ抜きだ!!」
耒を下ろして俺はため息をつくが………
「こんなこともあろうかと実は戸棚に羊羹を隠してたんだぜ………耒、良かったな、羊羹がお前を救ってくれたんだぞ?」
そういって俺は戸棚に手をかける。
「羊羹………?あ………」
誰かの声が聞こえたがこれまた無視して金塊へ続く堅固なる砦の門を開ける。
「…………ない、だと?」
目の前にはほんの少し透けて見えるぐらいのこしあんの宝玉が存在しなかった。渋茶が相棒という俺のマイフレンドが家出してしまったのか行方をくらましていた。
「Youkan!Youkan!Noooooooooooo!!!!」
そこにおいてあるのは
「すみません、小腹が空いたので食べてしまいました」と達筆で書かれている紙だけだった。
「…………ほぉ、君たちはボクに紙だけ残してすべてを奪い去って…………ボクに………ヤギになれとでもイウノデスカ?」
俺の怒り、最頂点……………さぁて、たとえいい子の藍でもちょっと覚悟してもらわないといけないなぁ…………
「あ、あはは………」
「え、えぁはははは………」
二人とも俺から離れようとしており、俺はそれを逃がさないように考えていたのだが……
「ちっ、そろそろいかねぇと学校に遅刻か…………」
「ふぅ………」
「よ、よかったぁ………」
俺がそういうと二人は安堵したようにそれぞれがため息をついたのだった。
皆勤賞を狙っているので朝食抜きでも我慢しなくてはいけないようだ。
「…………食べ物の恨みは恐ろしいぞ」
俺はそんな捨て台詞を二人に残して鞄を引っ付かんで制服に着替えて歯磨きも何もしないで学校へと向かうことにしたのだった。
そして、俺は自分の弁当も学校に持っていってなかったことに後ほど気がついた。