藍の章 その五
晶「なぁ、ネコ」ネコ「何だ、少年?」晶「俺、おもったんだが………ワイバーンって何だ?」ネコ「猫の私が知るわけないだろう?」晶「本当か?」ネコ「本当だ」晶「ふ〜ん」ネコ「その目は信じてないな………まぁ、皆さん、評価感想がありましたらネコに連絡下さい」晶「いやいや、どっちかというと俺は評価を待ってます!」
五、
「晶様!」
扉から顔だけ出して俺の名を呼ぶ藍。
「ん?どうした?」
「遂に出来ましたよ!」
「へぇ、何がだ?」
お菓子でも作るといっていたからそれが出来たのだろう………あの喜びようからすると結構出来が良かったのかもしれない。
「私と晶様の赤ちゃんです!!」
は………?
――――
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ………はぁ………はぁ………はぁ………」
目が覚めればいつもと同じ起床の時間………となりにはいつもと違わぬ藍の寝顔。
「すぅ〜……すぅ〜………」
そんな安らかな寝顔を見ていると夢の出来事を思い出す。
「………いかんいかんいかん!!俺は何を考えてるんだ!!」
立ち上がって未だに寝息をたてている藍をその場に残して俺は本日も恒例である朝のマラソンに向かうのだった。
「晶しゃま〜……」
寝ている藍をその場に残して……………
――――
今日は休暇であり、ごろごろと過ごしてもいいのだがそうもいかないようだった。
「晶様、ピクニックに行きましょう!」
「………ああ、そうだな」
マラソンから帰ってきて見れば既に藍は準備をしており、お弁当も用意されていた。何より、藍の目に宿る情熱の炎は視線があったら最後………絶対に成功させて見せるという感じだった。
「どこに行くんだ?あてはあるのか?」
無計画にそんなことを言っても行く先は決まっているのだろうか?裏山は毎日マラソンで向かっているし、公園でピクニックなんてまるでままごとのようだ。
「あてならあります!」
いつぞや言ってた地底湖だろうか?俺、さみぃの苦手なんだよなぁ………
「どこだ?」
「うふふ……内緒です!行ってからのお楽しみということでお願いしますね?」
ニコニコとしているのだが、俺にとっては不安でいっぱいだ………どこに連れて行かれるのだろうか?こんな不安にかられたのは勉強し忘れて受けた期末試験以来だぜ………。
「さ、行きましょう、晶様!」
俺の手をとり藍は足取り軽く玄関を飛び出したのだった。
――――
「るんるん♪」
「…………」
俺の手を握ったまま彼女はとりあえず徒歩で裏山へと上っていく。たった二人でピクニックに行って何が楽しいかは俺には理解できなかったが藍はどうやらとても楽しんでいるようだった。
「なぁ、藍?」
「何ですか、晶様?」
「二人でピクニックなんて楽しいか?」
「う〜ん………少ないですかね?」
「もっと増やしたほうが良くないか?」
だから今日はいったん帰ろうな?といおうとしたところでぱぁっと顔を明るくさせた藍は俺に告げる。
「それなら今度来るときはもっと人数を増やすことにします!さすが晶様ですね!」
何がさすがなのか教えて欲しい。
「………晶様、本日向かう先についてちょっとだけヒントを出したいとおもいます!」
「ヒント?」
ヒントも何も、ここの道を通っていってしまえば必然的に裏山のてっぺんについてしまうのだ。
「じゃ、ヒント行きますね?ヒントはとても景色が綺麗なところですよ?」
「それ、ヒントか?」
とても景色が綺麗なところ?裏山のてっぺんから見えるものは………何もないな。生い茂る木のおかげで町並みなんてまったく見えない。
俺なりに必死に考えた結果………
「う〜ん………葉っぱか?」
「ぶっぶ〜違います!」
違ったか………それならこれに違いない。
「木の幹だろ?」
「それも違いまーす!」
「木の枝」
「はずれです!」
「毛虫?」
「見えたらいやです!私は毛虫は嫌いなんですよ〜」
「じゃ、ふくろう?」
「いたらいいですね!私、まだ見たことないんですよ!」
「ミミズク?」
「あ!それもいいですねぇ!」
その後、俺は様々な回答を藍に伝えたのだがあたりは一つもなかった。
「う〜ん………ちっともわからん!!」
「もうちょっとで山の頂上ですからそこで答えをお見せしますよ」
俺は藍に手を引かれながら裏山への登頂を目指して憂き、ため息をこぼした。藍はまったく息を切らしておらず、それどころかさっきよりも元気になっているようだった。
―――――
ようやく頂上が見えてきたのだが、この山は頂上なのに木がたくさん生えており、風が吹けば時折町の景色がちょろっとだけ見えるだけだった。
「ふぅ………登頂完了って奴だな………藍〜何も見えないぞ?」
「そうですね、このままじゃちょっと見えないでしょうね!晶様、荷物をそこの木の下に置いてください」
藍に言われて俺は近くの木の下に荷物を置く。
「これでいいのか?てか、荷物置いたところで何も変わりはしないだろ?」
「いえいえ、私の負担がへるんですよ……じゃ、ちょっと目を閉じててくださいね?」
「?」
言われたとおりに目を閉じ、俺は何が起こるのかわからなかったが藍を信じることにした。急におかしな浮遊感に襲われ、俺は怖くなったのだが目を閉じている。
「もういいですよ!」
「うぉう!!」
目を開ければそこにあるのは見えることのないだろうとおもっていた町の景色。はじめてみる町の景色は綺麗で、時折吹く風が俺たちをなでていった。
「なるほどねぇ………」
後ろから藍に抱きしめられるような感じで俺たちは空にいた。
「はじめっからこうしてくれれば楽だったのにな?」
「いやいや、こんな反則行為をしたら楽しくありませんよ!ピクニックは歩いていくものだって友達に教えてもらいましたからね」
――――
家に帰ってきて真っ先に藍は俺に尋ねてきた。
「ピクニックはどうでしたか?」
「ああ、最高だったぜ」
久しぶりに体を伸ばせた感じがして藍に感謝をしたい。
「そうですか!それならまた来週も行きましょうね?」
いや、さすがにそれはちょっと………勘弁してもらいたい。