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おかしくなった晶の章 その一

ネコ「おや?サブタイトルがおかしいな………もともと、少年はおかしいからあの題名はおかしいだろう?」黒田「僕もそうおもうよ」ネコ「おお、初登場の黒田ではないか?」黒田「まぁ、本編じゃ一度も会ってないけど………」ネコ「気にするな、気にしたら負けだ」黒田「そうかい?とりあえず、この章終わったら物語に一区切りつけたいと思っています」ネコ「そうだった、そっちのほうが少年よりも大切だったな」

二十九、

「……………ぐぅ」

 少年がまだ寝ている時間帯、彼の姉は市販のドリンク剤を片手に仕事にいそしんでいた。

「…………この前のワクチンの効果が薄いみたいだから…………凪って子から血液を提供してもらって、これをこうして、いじって…………」

 一言できたと呟くと彼女は背筋を伸ばす。

「………これもまだ試験品で試すにはちょっと早いわね………」

 彼女は洗っておいたカップの中にその液体を流し込むとぱたりと倒れてそのまま眠ってしまったのだった…………この薬が、後ほど起こす事件のことなど考えもせずに…………

―――

「ん〜………」

 少年…………晶が目を覚ます時間帯になり、晶は目覚まし時計よりも一分ほど早起きをしてそのまま布団の中でぼーっとする。


PIPIPIPI・・・・・!!!


「…………よっと」

 一分後に目覚まし時計が鳴り出し、それを叩いて止めると彼は立ち上がる。

「………」

 寝ぼけていた顔は既になく、いつものようなちょっと不機嫌そうな顔で体を伸ばし、部屋を後にする。

「…………やっぱ、一人で寝るのはなんだか寂しいなぁ…………」

 彼が姉と共に一軒家に引っ越してから約一ヶ月が過ぎており、なんだかんだであの頃の生活が懐かしくて恋しいとおもいつつも、彼は首を振る。

「いかんいかん………あのまま三人と一緒に生活してたらどうかなってたぜ…………」

 襲う一歩手前だといっても良かったぐらいなのでそれは正しい見解なのだろう。晶はジャージに着替えていつものようにマラソンに行こうとして………

「ぐ〜…………」

「姉さん………」

 コタツに入っていびきをかいている姉を見つけ………

「ん?」

 誰も手をつけていないと思われるカップを見つけると何をおもったのか晶はそれを飲んだのだった。

「…………ん〜市販のドリンク、久しぶり飲んだけど………まずいんだな、これ」

 彼は近くにおいてあった姉が飲んだ後の空の瓶を見つめる。そう、彼はてっきりこの瓶の中身がカップの中に入っていたとおもったのである。

「さぁて………ひとっ走りしておきましょうかね〜………休日とはいえ、あの五人が来るかもしれないからな〜」

 この前の騒動を思い出して苦笑すると晶はその場を後にしたのだった。

――――

 色野藍……………見た目は藍色のワンピースが似合う物静かそうな女の子なのだが、実のところ晶の両親が作り出した薬を投与された元人間である。

「………♪」

 今日はとても機嫌がよく、誰よりも早く目を覚まして朝食を作っていた。

「今日もいい出来ですね……晶様に食べさせてあげたいぐらいです」

 お味噌汁を味見しながらニコニコしてちょっとまえまで一緒に生活していた知り合いを思い出す。


ピンポーン♪


「?」

 こんな朝早くから誰が来たのだろうかとおもいながらも藍は玄関を用心することなく開ける。

「はぁ〜い………あれ?晶様?」

 そこにいたのはいつもとはちょっと違う…………詳しく言うのなら無邪気で優しそうな笑みを称えた晶だった。

――――

「え〜と、今日はどうしたんですか?晶様がこちらに来ることなんてはじめてですよね?」

 お茶と朝ごはんをテーブルの上に置き、藍は晶に尋ねる。自分の分は晶の向かい側に置かれており、二人してゆっくりと朝食を食べる用意が出来ていた。

「いや、僕は久しぶりに藍と一緒に朝食が食べたいとおもってこっちに来たんだよ」

「え?」

 なんだか普段はぶっきらぼうな晶が素直になっていることに対して驚きながらも、彼女はああ、こういう顔も晶様は見せるんだな〜とその程度にしか思っていなかった。

「じゃ、二人で食べましょうか?」

「うん、そうしよう………いただきま〜す」

 その後の晶の食欲はすごかった。口に入れるものすべてをおいしいおいしいといいながら食べていき、ご飯粒をくっつけていたりもする。

「あら?晶様ご飯粒が………」

「とって〜」

「はいはい、なんだか子どもみたいですね?」

「むぅ、僕は子どもなんかじゃないやい」

 顔を突き出して、ご飯粒を藍にとってもらうと満足そうに晶は普段の晶がこの光景を見ていたら間違いなく赤面して紐なしバンジーを実行しかねなかった。

「……おなかいっぱいになったらなんだか眠くなってきちゃった…………」

「?」

 なんだか晶が小さくなっているように藍は見えたのだが、それも晶の珍しい行動の所為だろうとおもっていつも彼がこんなに素直だったらいいのになぁと思いながら目の前の晶を眺める。

「じゃ、膝枕してあげますよ」

「え!?」

 とても嬉しそうな笑みを晶が見せる。普段の晶だった

「………別にいい、枕があるからな」

と言ってやせ我慢するのだろうが………

「わ〜い♪」

 今の晶は素直に藍の膝の上に自分の頭を持っていったのだった。

「………す〜………」

「ふふ、可愛いものですね〜晶様の寝顔、久しぶりに見ますよ」

 眠ってしまった晶の寝顔を両手で挟み、まじまじと眺めながら藍はポツリと呟いた。

「…………でも、何で突然こっちに晶様は来たんでしょうか?」

 しかし、今自分の手の中にいる晶はいつもの晶とおかしいところがあるのだが、本物だろう。

「………ふぁ……私もちょっと眠くなっちゃいましたから一緒に寝ることにします………おやすみなさい、晶様」

 そういって眠っている晶の顔に頬をつけ、そのまま藍は眠ってしまったのだった。

―――――

「んを?」

 晶は目を覚まし、今の状況を確認する。彼が藍の膝枕で眠ってしまったのは今から三十分ほど前のことだった。

「………あれ?俺、なんでこんなところにいるんだ?てか、俺は何故、藍に膝枕をしてもらっているんだ?」

 ぎょっとした感じで立ち上がると晶はぼさーっと考える。ああ、きっと無意識に俺が上がりこんでここで寝ちまって藍が膝枕を勝手にしたのだろう………と晶は考えてうんと頷く。

「…………とりあえず、こんなところで藍を寝かせておくのもなんだから布団に入れておくか」

 他の二人が眠っているであろう部屋に藍を抱えていき、いびきをかいて眠っている二人組みの隣において晶は静かに扉を閉めたのだった。


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