突風の章 その二:ミステリーワイバーン
晶「続行決定です!イエーイ♪」ネコ「これもひとえにネムネムウーミンさんとタナチュウさんのおかげだな」晶「そうだな〜感謝しないと・・・」ネコ「それで、今後の予定は?」晶「さあ?まだ決まってないからね・・・・」
十四:ミステリーワイバーン
扉に手をかけ、俺は一気にその扉を開け放った。
「…………すげぇ」
そこにいたのは翡翠色の龍だった。
「…………いや、翼龍か」
折に閉じ込められており、中では俺をものめずらしそうに眺めている………だが、それも一時の間で俺のほうに近寄ろうとして………
がつん
檻に頭をぶつけた。
ぐるる……………
どうやら、この檻から出たいようだ………翼龍は器用にも尻尾を指代わりにして近くの鍵を指差す。
「………これでこの檻を開けろってことなのか?」
頷くが………ここから出た瞬間に俺を
「うわ、めっちゃいきが良くておいしそうな男子高校生がいるじゃん♪」といわんばかりに食われるかもしれない。
「………俺を食わないか?それを約束できるか?」
尻尾で器用なことが出来るくらいだ………人間の言葉も理解することが出来るだろうと思ったのだが、どうやらきちんと出来たようだが………なにやら意味深な笑みを翼龍が作って見せた。それでも言葉が通じたことに嬉しかった俺は笑って
「そうかそうか」といって鍵を開ける…………そのついでに鱗に触ってみたがそれはとても硬かった。
扉から出てきた翼龍は狭いのがつらいのか、今度は別のものを指差した。
「注射器?」
そこにあったものは注射器で………中には液体が既に入っていた。
「これをお前に挿せってか?」
頷き、促す。
「………わかったが………俺、医者の免許なんて持ってねぇぞ?それに、痛いからって暴れないでくれよ?」
幾度となく暴れたときに自分が巻き込まれてしまうのがこの部屋の中でははっきりとわかる。
俺は比較的柔らかそうな首の辺りに注射器を挿して中の液体を入れ込む。その液体がどういった効果をもたらすかわからないのだが………と、そのときに俺の後頭部になにやら鈍痛が走る。
何が起こったか理解できない俺はそのまま意識を消してしまったのだった。
――――
目が覚めると目の前にあるのは女性の顔………
「うを?」
「ああ、起きた?」
しかも、気がつけば何故かベッドで二人して寝ている状態ではないか!俺が下で彼女が上の状態である。
「え?え、ええぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
「そんなに驚かないでね〜私が君を食べてあ・げ・る♪」
にこりと微笑んだその表情に底知れぬ恐ろしさを感じたので俺はあわててその場から離れた。
それに対して相手はただ笑ってるだけだ。
「やれやれ………ところで、君の名前は?」
「俺っすか?俺の名前は………白瀬晶です」
「成る程、晶君か………」
ふんふんと頷きながら俺の体をじっくりと確認する。
「…………う〜ん、懐かしいにほいがする。おばあちゃんの家のたんすの匂いって奴かな〜?」
「え、えと………俺に言われても理解できないんですけど…………」
「ああ、そうだよね〜ごめんね」
「いや、いいっすけど………」
「人が来るのが珍しくてね………前に、チョロットだけここにも人がいたんだけど………君のような懐かしいにおいのする女性が連中を片付けたって誰かが言ってたから………私、それからずっとここにいたんだよ」
「ああ、そうなんですか………それはなんだか寂しいですね」
「うん、そうだね〜」
つかみどころのないような人だ………だが、寂しかったのは事実なのだろう、彼女はとても静かな瞳をしている。
だから俺は突拍子もないことを口走った。
「………あの、家に来ませんか?」
「え?」
「二人………俺が居候させてもらっている家にもあなたのような人が二人いるんです」
「へぇ、成る程………うん、それならいくことにするよ………私の名前は凪」
「凪……さんですか?わかりました」
俺は凪さんと共にもときた扉へと戻ろうとして………
「………ストップ」
「え?」
右側から弾き飛ばされてそのまま壁に俺だけ激突。
「………っつ……」
「ごめん、晶君………」
ふらふらながらも立ち上がるとそこには凪さんがコンクリートの破片に潰されているショッキングな姿があった。
「な、凪さん!?」
「大丈夫大丈夫………よっこらせ」
しかし、そんな破片をものともせずに彼女はコンクリの破片を砕いて出てきて………俺のもとへとやってきた。
「それより、晶君………君のほうが重症だよ」
「え?」
「これ、折れてるからね………」
「…………」
俺の右腕は見事に重力に従っている。
「まるで燃え尽きたおじいちゃんの×××みたいね?」
「えと、なんていいました?」
放送禁止用語をさらりと呟く凪さん。
「だから、もう使うことのないだろうおじいちゃんの×××………あれ?私の言葉が何故かさえぎられてる?×××がいえない!大変!」
本当に大変そうに俺のほうを見てくるのだが………
「いえ、別に俺は大変じゃないんですけど?」
「ええぇ!?嘘!だって『俺の×××を咥えて欲しい!』って言わないの?」
「言いません!てか、そういう言葉を発するのはやめてください!」
この人、危ない人だ………いろんな意味で・・・
「ちぇ、面白くないの」
「それは面白くもなんともありません!下品すぎます!………とりあえず、居候している家まで連れて行きますよ」
俺が扉に手をかけようとすると凪さんは俺の左手を止めた。
「何です?」
「まずは病院にいくのが先決ね」
「………確かにそうですけど………あの、この扉を超えないと帰れませんよ?」
びくともせず、彼女は俺の左手を掴んでいる。
「………私はそっちにはいかないほうがいいとおもうな」
「何でです?」
「あふれてる、満ち足りている………この部屋ももう長くはもたないと私、おもうの………だから、ここから出たほうがいいわ」
指差す先にはマンホールがある。
「え?だって…………」
「急がないと、飲み込まれるわ」
「…………わかりました」
有無を言わさぬ言動に俺は少々困惑しながらもマンホールへと消えた凪さんの後を追ったのだった。
――――
「ふぅ、やっとゴール」
「…………そうっすね」
何とか街中のマンホールに顔を出すことが出来た俺たち二人の目の前に爺さんが現れた。
「………うまく抜け出せてきたようじゃのう?」
「爺さん!?てか、別に何も襲われなかったぞ?単なるこけおどしかよ?」
それに対して爺さんは呟く。
「何を言っておるんじゃ?襲われたじゃろう、そこの娘に?」
いや、まぁ、別の意味では襲われたけどさ………
「ほら、その右腕が何よりの証拠じゃろうて?カルシウム不足じゃな……もうちょっと硬くないと駄目じゃろうて」
「いえいえ、おじいさん……きっと晶君の×××は硬いに決まってますよ」
「ちょっと凪さん!何言ってるんですか!」
「…………てへ」
てへとかいわなくていい!てか、この姉ちゃん………本当に危ない姉ちゃんだ。
「…………じゃ、そろそろわしは行くぞい?」
「ああ、あの猫によろしくな」
「おっほっほ………お土産を期待しておれよ?」
そういって爺ちゃんは去っていったのだった。
「………じゃ、俺たちもそろそろ行きましょうか?」
「そうね………晶君、ないちゃ駄目よ?」
お姉さん口調で俺に言ってくる。
「ああ、そういえば………腕、折れてたんですよね」
何をいまさら……といわんばかりに彼女は笑って俺の折れている右腕を掴んで病院へと俺を連れて行ったのだった。
―――――
「あ、晶様!その腕、どうしたんですか!」
「大丈夫なの?」
俺はその後二人の質問攻めにあったのは言うまでもない。