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晶の章 その三

晶「…………」ネコ「どうした、押し黙って?」晶「武士道と書いてなんと読めるでしょう?」ネコ「ブシロードだろ?外国人はそう呼ぶだろうな」晶「うん、正解」ネコ「この問題の意味は?」晶「牽制」

二十七、

「…………」

 俺の頭に風穴が開いたのか………額からは赤い液体が俺の視界を赤くしていく。

「…………痛いかもしれないけど、これからがんばって…………」

 近くにはお姉ちゃんが………いや、姉さんが座っており、俺を抱きしめてくれていた。

「…………薬はあなたを殺しにかかる………あなたは耐えるの、晶………あなたはとても強い子だからね?」

 姉さんは笑って俺を抱きしめてくれる。きっと、俺の母さんもこんな人だったのかもしれない…………いや、冷たい人だと姉さんは言っていたな。

 俺の意識は確実に遠のいていく。

―――――

三月五日、続き………弟は見事に私を騙して一匹の失敗作を助け出した。


「………まったく、あなたにはやられたわ」


「私としてもまだ君が薬にやられていないほうが驚きだ」


「なめた口聞くと、打ち抜くわよ?」


「………どういうマジックを使ったんだ?」


「ま、あの弟のおかげね」


私がそういうと白猫は

「そうか」と呟いてどこかにいなくなったのだった。


四月七日………弟が通っている学校がどこか他の学校と違うとおもったのは入学式とかが四月にないということだろう。めちゃくちゃだ、この学校は……………


「やぁ、またあったな」


「まったく、白猫風情が私に何のよう?」


「あの少年、非常に優秀じゃないか?」


「まぁね、私の弟だもの…………あんた、ちょっかい出すと撃つわよ?」


猫は首をすくめて

「さすがにこの姿ではな………」と呟く。


「これから旅に出ようとおもう…………」


「へぇ?死にに行くの?」


「違う、君らの祖父と世界を回るんだ」


「…………嘘ばっか………今度は白衣を着て頭に猫耳つけないとあの弟はあんただって気がつかないわよ」


猫は

「私は猫だ、猫耳をつける必要はない」と答えて去っていった。


四月二十日、私だけが気がついている………薬の反応は以前より強くなっている。あの両親が龍を作ろうとした本当の理由………


私を助けようとしていた、そのくらいは知っている。


そのためには弟の犠牲が必要だった。


私はその弟のデータがあったおかげでワクチンを作ることに成功した。


いずれ、弟に投与しなくてはいけない。あの弟の周りにいる三人が完璧に龍に化身できるようになる前に…………


四月二十五日、この日記がめちゃくちゃなのはしょうがない。日にち、時間………そういったものが壊れているのが手に取るようにわかる。


私の記憶は多かれ少なかれ、消えてしまうだろう…………


だが、その前に確実に…………


この記憶の塊をあの子に渡しておかないと………


たとえ、あの子が私のことを忘れてしまったとしても…………


―――――

「んぁ?」

 目が覚めるとそこは病室だった…………ということは良くある話だが、今、俺の目の前にあるのは汚らしい天井だけだ。

「…………あれ?」

 左目の感覚が無いのはなぜだろうか……とおもったらそこには包帯が巻かれていた……そりゃそうだ、こんなものがあったら左目でここを確認することは出来ない。

「晶様!」

 目の前には藍色の髪をした女の子………それに、金髪に緑色の髪の毛の女の子がいる。

「晶………心配したわよ」

「晶君、逝ってしまったと正直おもってました」

 心底ほっとしたようにそんなことをつぶやく二人組みに俺は尋ねる。

「…………一体全体、俺は何でここで寝てるんだ?」

 徐々に記憶を思い出していくのだが…………思い出せないものもある。ガラス管が頭の中の記憶にちらほらと姿を見せる。

「この家の前で血だらけになって倒れていたんです。それがもう一週間ほど前ですから…………」

 一週間前だと?

「………一つ、質問…………いいか?何であの夜お前たちかえってくるのが遅かったんだ?」

「ええと、遅くなるように連絡をしようとおもったんですけど…………話中だったんですよ、晶様の携帯」

 俺は何かを思い出そうとしていたのだが、それが何か思い出すことが出来ない。

「また何か変なことに巻き込まれているのではないかと私、おもってあわてて戻ってきたんです」

 そこまで言って耒が続ける。

「だけどさ、行方不明…………黒田はどこかに行くのを見たって言ってたけどね」

「黒田さんたち兄妹も捜索を手伝ってくれたんですよ」

「…………そうか、それならお礼を言わないといけないだろうな…………」

 俺は立ち上がる。

「お?」

 立ち上がった拍子に落ちた一冊の汚れた日記帳を拾い上げる。

「………これ、誰のだ?」

「え?さぁ?」

 俺はその日記帳の名前を見て、急いで玄関を飛び出した。その日記帳に書かれている字は

「白瀬晶子」だった。


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