表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/32

晶の章 その一

晶「お、とうとう最後の章だな〜」ネコ「ああ、長かったな…………途中でくじけるようなことを呟いていたが………これもひとえに感想をくれた人たちのおかげだな」晶「おいおい、読んでくれた全員のおかげだろ?」ネコ「ふむ、それも一理あるかもしれないが………不特定多数の人たちには名前がわからないから御礼のしようがないのも事実だと私はおもうぞ?」晶「まぁ、そうっちゃそうだが…………さて、最終章の予定ですが………この章は比較的シリアス………」ネコ「と、晶の過去や藍たちが生み出された?話になります」

二十五、

 連休最後………

「遅いな」

 未だにあの三人は帰ってきていない。もう帰ってきていてもいい時間なのに家には俺一人が座っていた。

「……………」

 俺は電話が来るのを待っていて…………


PLLLLL………


「お、やっと………」

 携帯に手を伸ばそうとして、やめた。表示される電話番号は知らないところからだったのだ。

「………もしもし?」

『久しぶり、愚弟』

「………お姉ちゃん?」

「よろしい、言いつけ護ってるみたいね」

 愉快そうに笑って聞こえてくるその声はあの女性で………俺はまさかを考えてしまった。

「今、あの三人家にいる?」

「いや、いないけど………」

 俺は窓の外を見て………


「そうだよねぇ、だって、私がつれてっちゃったから」


「!?」

 そこにいたのはお姉ちゃん、紛れもなくあの女性だ。そして、彼女はにやりと笑った。

「愚弟にも収集が来てる、どう?あの工場にもう一回来ない?」

 俺は電話を切ることなく、耳に当てたままで目の前の相手に話しかける。

「………もういかなくていいっていってませんでした?」

「私、うそつきなんだ………そう、嘘つくのが大好きなのよ」

 そういって俺に手をあげると彼女は去っていった。

「…………いくしかないよなぁ………」

 俺は三人を迎えに行くべく、玄関を出たのだった。

――――――

「やぁ、どこに行くんだい?」

「黒田………」

 庭には黒田がいつものような面をして立っていた。

「………どこか行くのかい?」

 再び、似たような聞き方をしてくる。

「ああ、ちょっと出かけにな………」

「そうかい?うちの妹たちが君を呼んできて欲しいって言ってたんだ。ケーキを焼いたから毒見をして欲しいと………」

「そんなこと言ってたら妹にけられるぞ?」

 まったく、その通りだよと奴は笑って答える。

「………行くのなら止めはしないけど……」

 黒田は俺に背を向けてポツリと呟いた。

「………今の君、死相が出てるよ。事故にでもあわないようにしないとね」

―――――

「おや、君は弟さんじゃないかな?どうしたんだい?」

 警備員さんが俺の姿を捉えたのか、そんなことを聞いてくる。

「…………ええと、お姉ちゃんにここに来るようにといわれてきたんですけど………」

「ほぉ、お姉ちゃんにはなんていわれたか覚えているかな?」

 まるで小学生相手に使うような言葉遣いで俺に話しかけてくる。俺は思い出しながら………警備員さんのおじさんに答えた。

「………たしか『あの工場にもう一度来ない?』って言っていたと………」

 そういうと相手は微笑む。

「残念ながらここは廃工場………工場ではないよ、君のお姉さんが言ったのはここのことじゃないと私はおもうね。彼女はここにはきていないから」

 やんわりと拒絶されて俺はあせりを覚えていた。

「おやおや、君は死相が出てるね………一度自分の顔を鏡で確認するといいよ」

 手鏡を渡され、俺はそれを覗き込み…………

――――――

「やぁ、遅かったわね、愚弟」

「………お姉ちゃん」

 気がつけばそこはあの場所、つい最近に来たことのある書類の散乱した工場というよりは生体実験室のようなところだった。

「……とりあえず、あの三人は?」

 俺はあの三人が無事な姿が見たかった。たとえ、それが怪我をしていても無事ならそれでよかった。

「………いないわよ、ここには………」

「え?」


「言ったでしょ、私は嘘をつくのが好きなのよ」


「…………」

―――――

三月二日、私よりも弟に興味を抱いた父は躊躇なく泣き叫ぶ弟に薬を投与した。


弟は動かなくなり、静かに眠ったようになった。


私はそれを影から見ており、震えるだけだった。


父はこちらを向いた。


「お前は駄目だ、この子で試す」


父の見解は正しかった、弟ははれて実験台第一号となった。


三月四日、あれから二日、私の弟はガラス管の中で動きもせずに、ただ、液体にひたされて浮かんでいた。


名前を呼ぶと目を開け、私のことがわかるのか笑ってくれた。


「何をしている?」


父が怒った顔をしている。私はその場を後にする。それは何故か………


別の実験体の確認をするためだ。


「………そろそろ移し変えないといけない」


父の助手をしている私より少しだけ年上の女性が白猫を見て呟く。


あの猫はもう長くはないことをあの女性は知っているのだろう。


そして、私の弟もあのガラス管の中では………


私がすることはただ一つ、おじいちゃんに渡すしか………


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ