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紫電の章 その二:サンダーワイバーン

晶「あ〜今回の話は…………」耒「あたしの話だよ〜」晶「ネコは?」耒「選手交代!今日からあたしが相方ね?」晶「ふ〜ん、そうなんだ………では、ご覧下さい」耒「感想よろしく!」

八:サンダーワイバーン

 目の前に現れたのは紫電を纏った一匹の龍………

「いや、ワイバーンか」

 前足のないそいつは立ち上がって吼えることなく俺を見て、唸る。

「…………」

 俺は回れ右をして…………ここから逃げようとしたのだが………

「あれ?」

 気がつけば自分がいる場所は…………逃げ場のない断崖絶壁に囲まれた四角形の場所だった。

「嘘だろ!」

 嘘じゃないのはこの状態を見れば軽々しく理解できるのだが、叫んでおかないとやってられなかった。


がぁぁぁぁぁぁ!!


 ワイバーンは口を開けると………


ひゅぃぃぃぃぃぃぃ…………


 なにやらワイバーンの口の前に雷を纏ったエネルギーが収束されていっている。

「ビーム!?これってビームなのか?」

 俺はあわてて俺の体調の二倍はあるワイバーンの後ろ側に逃げ込む。とっさにそんなことをされたら狙いをつける暇がないのだろう……………口から放たれた紫電は断崖絶壁を通り越して真っ暗な空に映えたのだった。

「…………」

 言葉も出ない。あんなの食らったら確実に逝っていただろう。


ぐるる…………


 ワイバーンはこちらに顔を見せ、俺は後ずさる。

「よ、よぉし………やってやろうじゃねぇか!」

 俺は爺さんに教えてもらった拳術の構えをとる。爺さんは

「相手のほうが強いと理解できたときは決して防御を取ってはならない」と言っていた。理由を聞くととても全うな…………

「そりゃ、避けたほうがいいじゃろうて?」ということを言ってきた。


 つまり、今この状況で俺が一回でもワイバーンの攻撃に当たってしまったら終わりということである。


ぐるる…………


「ちっ、素手じゃぜってぇ無理だろ………」

 指ぬき手袋を装着し、相手を睨みつける。どう考えてもあちらさんのほうが顔がいかつい。

 にらみ合ってちょっとすぎ………


ダーン!!


「ん?」

 ワイバーンの頭から煙が出ており………そのまま倒れてしまった。

「これでどこまで昏倒してくれるかしら?まぁ、いいか」

 後ろに人の気配がしたのでそちらを見ると…………

「あ、あんたは………」

「お久しぶり、あの時は不覚を取っちゃったわ」

 そこにいたのは藍を助けたときに俺たちを殺そうとしていたお姉さんだった。その手にはあの時とはまた違った銃………ではなく、俗に言うバズーカ砲が握られていた。

「あんた…………このワイバーンを殺したのか?」

 俺は何も考えられなかったが黙っているとその黒い筒が俺を捉えるのではないかとおもって相手に尋ねた。

「のんのん♪残念ながらあいつらはそう簡単には死なないわよ。私が持っている中で一番強い弾丸をお見舞いしてあげたんだけど………あと三分もすれば目を覚ましちゃうわ」

 それならばそのバズーカ砲は一体全体何なのだろうか?

 俺の視線に気がついたかどうかはわからないが黒スーツの女性はバズーカ砲を見せる。

「ああ、このバズーカ砲はね〜…………拠点攻撃用に持ってきたの」

「拠点攻撃用?」

「そ、この…………」

 気がつけばあたりは雨が降る建設現場に戻っていた。

「………建設現場を潰すためにね」

「潰すって…………何のために?」

 目の前のワイバーンを彼女は指差す。

「そいつが眠っていたっていう跡を残さないためにね」

 危ないから下がってなさいと俺に告げると彼女は無造作にバズーカ砲を乱射…………派手な音が断続的に続いて俺の耳がそろそろいかれるんじゃないかというところで彼女の攻撃は止まったのだった。

「さぁて、今度はそこのワイバーンと君の始末ね…………やっぱ、この前の恨みがある君からお陀仏♪ばいば〜い」

 彼女の左手に握られていた拳銃が俺を捉えたが…………


バチン!!!


「っ!!」

 いきなり彼女は左手を押さえるとその場にうずくまった。それまで固まっていた俺だったのだが…………

「…………一体これは?」

「やっぱ、少年なんていつでもしとめられたわね………しくじったわ」

 女性は立ち上がるとワイバーンが…………ああ、存在を忘れていた………気絶していなかった。


ぐるる…………


「…………そろそろここからお暇しないと………最後にこれ、プレゼントしてあげるわ」

 俺に向かって拳銃を投げつける。

「…………?」

「銃の使い方、わかるでしょう?そこの引き金を引けば液体の詰まった弾丸が飛び出すわ。そうね、私みたいにうまくあの化け物の額に打ち込めば…………あの化け物を無力化できる。あの猫がやったみたいにね………じゃ、また会いましょう!」

 黒猫のように彼女は消えてしまい………さて、ここで問題である。獲物のうちの一匹が逃走をはかり、もう一匹は理由はわからないがこの場に居座っている…………あなただったらどちらを選ぶだろうか?


ぐるるる…………


「世間一般じゃ、後者だろうな…………」

 俺は落胆しながらも拳銃を唸っているワイバーンに向ける。

 逃げ場の少ないこの場所で紫電のワイバーンは再びあの大技を放とうとしている。再び集められていくエネルギーに俺はあせることなくそれを真正面から見据える。

「…………あの姉ちゃんが何のためにこの銃を残したかわからないが…………」

 そろそろ充電が完了するのだろう…………俺は狙いをつけてトリガーを引いた。

「とりあえず使わないと勿体ねぇ!!!」

――――

 成る程、あの猫がやったようにワイバーンを無力化するか…………

「…………うう………」

 俺の隣にはそろそろ目を覚ますであろう女の子の姿があった。つまり、このように人の姿に変えるということだったのだろう。

「…………あれ?人の姿になってる………あ、あんた!何かしてないわよね?」

「してねぇよ………」

 したかったけどさ、そろそろ警察が来る。

「とりあえず、説明とか色々と俺がしたいほうだが…………ここを離れるぞ。お前、名前は?」

 俺はその子の手をとってその場から離れて自転車を置いていた場所まで来たのだが………

「さっきのビームにあたったな……」

 黒焦げの何かがそこにはあった。

「耒…………」

「あ?」

「名前、聞いたでしょう?あたしの名前はらいよ。苗字までは知らないけどそう呼ばれてたわ」

「…………そうかい、それなら耒……」

 俺はもうパトカーがそこまで迫っているのに気がついて林の中に逃げ込んだのだった。

「とりあえず歩いて帰るぞ?今のお前、ぼろぼろの服しか着てないからな」

「…………」

 無言で一発殴られたが俺の後には素直についてきているようだった。

――――

「晶様!ど、どうしたんですか?ぼろぼろですよ?」

「…………ごめん藍、今は事情説明よりも洋子さんに用事が…………」

 家に帰りついた俺を迎えてくれたのは心配そうな顔をしていた藍だった。俺を迎えに行こうとでもしていたのか傘を手に持っている。

 その後、俺は洋子さんに曖昧ながらも耒についての話をして、承諾してもらった。

「とりあえず、耒さんはお風呂に入れてきましたよ」

「ああ、ありがとな…………しっかしまぁ、藍みたいな奴がこの世にまだいたとはおもわなかったなぁ」

 俺がそういうと彼女はどうとったのか理解できなかったが何かを考える風に呟いた。

「…………そうですねぇ、他にもいるかもしれませんよ」

「どうだか」

 俺はそういって黒焦げになったシャツをゴミ箱に投げ入れたのだった。


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