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黒田の章 その二

晶「お、今回はその二が存在してるな?」ネコ「まぁな………」晶「どうした?何か気がかりでもあるのか?」ネコ「さいきんさぁ、ほら、何だ、私の口からはいえないが………似てる題名が………」晶「気のせいだ、それはネコの気のせいだ」

二十、

 案内された部屋の扉には質素に

「奈津美と夏華の部屋」と書かれていた。ここに来て俺は扉に手をかけた黒田に尋ねる。

「…………黒田、二人に教えないといけないのか?」

 黒田はためらったような仕草を見せた後、告げる。

「いいや、一人のほうでいいよ…………奈津美のほうを頼んだよ」

「なるほどな、夏華ちゃんをお前が教えるのか?」

「………そんなことより晶、僕は君に妹をお願いしたい」

「?」

「理解は出来ないだろうけど、よろしく頼む」

「そりゃ、わかったが………何かあるのか?」

 首をすくめ、黒田は応えないまま扉を開け…………俺は驚いた。

「あれ?俺が二人…………?」

「何を言っているんだい?これは鏡さ………」

 そういえば黒田の整った顔も鏡に映ってるな…………

「どうだい、驚いたかい?」

 この部屋…………四方の壁がすべて鏡だ。

「で、奈津美ちゃんってのはどこだ?」

「そこにいるよ………じゃ、住み込みでよろしく頼むから」

「え?」

 扉は音を立てて閉じられ、俺は鏡の自分を見つめることなく…………

「うわ!?」

 右を見るとそこには少女がいた………どうやら、これが奈津美ちゃんのようだとおもったのだが………

「なにぃ!?」

 俺はしりもちをついた。鏡に写っているはずの奈津美ちゃんの姿はどこにもなく、代わりにいるのは一匹の龍………だが、前足がないところを見るとワイバーンと言う奴だろうか?

「あなたがお兄様が呼んだ新しい家庭教師さん?」

「え、ああ……………ところで、そっちのごついのは……」

 俺は鏡に映っているワイバーンを指差してたずねる。

「奈津美ちゃん、君の鏡に写った姿か?」

「え?」

 驚いたように俺に尋ねてくる。あれ?この子には見えてないのか?

「どうしてわかるの?」

 驚いたのはどうやらこれが見えているからのようだった。しかも、興奮している。ワイバーンのほうは俺が気がついていることに気がついたのだろう、敵意をむき出しにした。

「あ〜っと………とりあえず、落ち着いてくれ………というより、説明してくれ」

「この人は………」

 人ではない、どっからどう見ても先祖はサルとかそんなもんじゃないだろう?

「………私の双子のお姉様なの」

「…………へぇ、じゃあ君もワイバーンなのか?」

 そんなら必然的に黒田もワイバーンとなるな…………

 だが、俺の考えは間違っていたようで………

「違うわ。私とお兄様は人間よ」

「じゃ、何でこの………」

 指差すと、俺を睨みつけてくる。おっと、恐い恐い………

「………この子の名前は何だ?」

「夏華」

「…………夏華ちゃんはワイバーンなんだ?てか、なんで鏡にいるんだ?」

 こんなごついのにちゃん付けするとは思いもしなかったのだが、とりあえず一歳年下なのだろう。

「………わかるわけないじゃない…………小さい頃に行方不明になっちゃって………それが関係しているのかも…………」

 よく理解できない。

「で、夏華ちゃんが現れたのはいつだ?」

 たずねるととてもいやそうな顔をする奈津美ちゃんだったが………

「…………お父様とお母様が行方不明になったお姉さまのことが理由で別居してすぐ…………朝、鏡を見ると、私が映ってる代わりにお姉さまの胸の部分が映ってたわ」

 表現があれだが、俺はワイバーンの胸を見てたくましいものだなぁ〜と無駄におもったのだった。奈津美ちゃんの胸はちょっと小さいだろう……きっと、夏華ちゃんのほうも小さいに決まっている。

 くだらないことを考えるのをやめてこの子の境遇を考えた。きっと、鏡に写っている夏華ちゃんを

「お姉さま」と呼んでいるところを聞かれたんだろうなぁ、で、母親は可哀想になってもう一人いる黒田と生活させるようにしたんだろう。夏華ちゃんで別居していた二人は奈津美ちゃんのおかげでまた戻ったのかもしれない…………所詮は俺の考えだが。

「………ま、いいや………とりあえず勉強しよう」

「………おかしいとおもわないの?」

「何を?」

 ワイバーンの胸がたくましいことか?藍だってたくましかったし…………いや、今の人の姿でも、その、結構あるし……

 なおも無駄なことを考えていた俺の耳に彼女の声が聞こえる。

「あの、私がこの部屋の壁を鏡にしてること…………」

「お姉さんと会うためだろ?」

 そんなこと考えればわかる。兄弟はいないが、双子というものは結びつきが強いそうじゃないか?

「違うの、私がお姉さまを監視するためなの」

 知ったかの俺を笑ってくれ………いや、嗤ってくれ。

「どういう意味だ?監視するって?」

 俺はいい加減疲れてきたので腰をおろす。

「…………たまに、たまにお姉さまがいなくなるの」

「で?」

 それがどうしたんだ?夏華ちゃんだってワイバーンだ。たまには大空を自由に飛びたいとおもっているんじゃないのだろうか?

 彼女は決心したかのように告げる。

「…………これまで、これまで………お姉さまが私の前から姿を見せなくなった次の日に必ず事件が起きてるの!だから、だから……………お姉さまが暴れてるんだって……」

 俺はワイバーンのほうを見るが、そのワイバーンは無実だ!といわんばかりに首を振る。

「お前のお姉さまは否定してるぞ?」

「……………口じゃなんだっていえるわ」

 意外と厳しいんだな…………奈津美ちゃん…………そして、夏華ちゃん、あんたも相当へこむだろうなぁ〜夏華ちゃんはなんもしゃべってないし……………

「さ、とりあえず勉強だ。奈津美ちゃんが何で成績不振に陥っているのかわからんからそれから見つけていこうか?」

「勉強なんて……………簡単だわ。だけど、お姉さまがいなくなることを考えるとテストなんて手につけられなくて………」

「ああん?お前は勉強をなめてるのか?」

と、本気で問いただしたくなったのだが………

「………わかった、そんなら今から出す二十問を全部といて見やがれ!」

 俺はそういってノートを一枚破って問題を書いていく。勿論、その中身はめちゃくちゃ難しい入試レベルの問題…………奈津美ちゃんは高1だったな。これはとけるまい。

――――

「俺が悪かった……………」

 満点だった。

「…………晶さん………でしたよね?私、今週毎日補習テストがあるんです。その間、お姉さまの監視をお願いできますか?」

「わかった、その代わり満点取ってきてくれ」

 俺は隣のワイバーンを眺め、ワイバーンのほうも俺を見てくるのだった。


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