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突風の章 その五

藍「ネコさん、これから一体全体どういったことになるんでしょう?」ネコ「さぁ?それはわからないな………っと、そんなことより、無常さん、評価に感想、ありがとうございました」藍「そうだった!どうもありがとうございました」ネコ「これからどういったことに少年が巻き込まれるかは秘密なのだが………どうせろくなことには巻き込まれないだろうな」藍「まぁ、晶様にはがんばってもらいましょう♪」

十七、

 俺は今、真剣ににらみ合っている相手がいる。その相手は静かに俺を見つめ返してきており、俺にとっては絶対的圧力を誇っている。

「…………」

 そして、その相手の近くには…………いや、相手をけしかけてきたのは凪さんだ。ぜんぜん頼りにならないような顔をしているが、今の彼女はオニのような形相というか、冷たい瞳で俺を見ている。

 二対一のこの状況…………

「さぁ、はじめましょうか………晶君?」

 俺は顔をゆがめて相手を説得するために口を開く。

「何故…………何故こんなことをしなくちゃいけないんですか!凪さん!俺、涙が出そうですよ!」

 俺の心からの願いを凪さんに伝える。

「………晶君、ここでは私のことを………」

 凪さんはため息をつく。

「………先生と呼んでください」

 そうして、ずいと国語の補習用プリントを俺の目の前につきつけてきたのだった。

――――

 発端は本日の国語の時間だ。

「白瀬、何で君は顔が赤いんだい?真実を教えてくれないとちょっと僕は君を警察に突き出そうかなと考えてしまうんだが?」

 今日の朝の光景が未だにフラッシュバックして俺の顔を赤く染めている。

「何でだ?そりゃ、何か俺が法に触れたんなら警察行きを考えてやってもいいんだが?」

 ちらりと凪さんのほうを見るが、凪さんは黒板に漢文を書いていっており、どうやらまだ俺たちがおしゃべりをする時間はあるようだ。

「何でってそれはね…………耒ちゃんを見ろよ」

 隣の耒は顔を真っ赤にしてたまにこちらを見ては顔を下に下げている。

「熱だろ?」

「ま、そういうことにして……藍ちゃんを見てみろ」

 何故か後ろの席にいる藍は非常につやっぽい瞳で俺のことを見ている。

「風邪だろ?」

「風邪で目がつやっぽくなるのかい?」

「そりゃ、あれだ………花粉症」

「………じゃ、朝何があったのか詳しく教えてくれよ」

 何故、何故ここまで食いついて来るんだ?不思議になって周りを見ると他の連中も心なしか耳をそばだてているような気がしないでもない。

「大人の階段を駆け上がったんだろ」

「はぁ?」

 どうやら逃げ場は耒の左にある窓しかないらしいが………あいにく、ここは二階であって飛び降りたらちょっと痛そうだ。

「わぁったよ………いいか、一度しか言わないからな?てか、何をそんなにきたいしてるんだか………今日の朝、起きようとしたら藍に手をつかまれてて………」

「うんうん!それで?」

「ほら、右手がこんなんだからなんとか起き上がろうとして左のほうを見たら凪さんがな…………起こしてくれなくてな、そんで、俺の上に耒が馬乗りになっててそのまま引き込まれて…………」

「うんうんうんうん!!」

 だんだんと顔を近づけてくる黒田に

「今日のこいつはどうしたんだ?」とおもいながらも話の終わりを告げる。

「目の前に三人の顔があってそれぞれをじっくり見る機会があっただけだ」

「…………それだけ?」

「ああ、それがどうかしたのか?」

 未だに思い出しても恥ずかしいというか、その、いい思いだったな。

「で、何で顔が赤いんだい?それが納得できない」

 言ってやったのにこいつは何故か不機嫌で………俺はため息をついた。

「いや、その………三人がとても可愛い顔で寝てるな………はじめて感じたから」

「くっそがぁ!このくそやろうが!そんな『好きな先輩と目があった!きゃは♪』てな感じの初々しいがなんとなくうらやましいというくだらないことでいちいち顔を赤くするなぁ!なんだかとっても悶々としちまったじゃないか!僕の妄想を返せ!」

 黒田はいきなり俺の胸倉を掴んできた。

「お、おい!何を意味わからんことを………」

「うぉぉぉぉ!!男どもよ!今こそ立ち上がれ!この勘違い大将軍に極刑を!」

「はぁ?勘違いって………お前たちだろ!」

「いや!変な顔をしていた白瀬が悪いだろ!皆、そうおもうだろ?」

 男どもは消極的だが頷いている。

「ほら見ろ!現実に君は僕らの敵だ!」

「わけわからんことを言うな!今日は凪さんの機嫌が悪いんだぞ?こんな騒動、凪さんの耳に入ったらどうするんだよ!」

 俺がこの不毛な争いを終結させるべくはなった言葉は予想以上に効果があった……………

「悪い子にはおしおきですっ!!!てぃぃぃっ!!」


どごす!ばかん!!


「ぐはっ!」

「ぶはっ!!」

 俺と黒田の脳天に凪さんの一撃が決まる。くぅぅ………さすが俺の右腕をおった威力だけはあって………てか、そんな一撃を食らってまだ頭の形を形成している俺たちの頭めっちゃ石頭?

「本日、居残りするように!他の人も授業中に私語をしたりしちゃ駄目ですよ〜?」

 凪さんはそういって教壇に立って授業を進めるようだった。

「………あいたたた………黒田、お前のせいだからな!」

「ふん、それはへんな言い方をした君が一方的に悪いとおもうね」

「二人とも、補習用プリントをそんなに増やしたいのかな?」

「「いえ、なんでもありません」」

――――

とまぁ、こういうことがあったのである。

 黒田は既にプリントを終わらせて俺に話しかけずに帰ってしまったが…………既に俺たちの心はつながっており、俺の手には奴の答えが書かれているはずの一枚の紙切れがある。

「……………晶君、ちょっと先生は職員会議に行ってきますから逃げちゃ駄目ですよ?」

「逃げませんよ」

 どうせ家に帰っても凪さんに会うのだから彼女に逃げるには家出するしかないだろう。

 凪さんがいなくなったことを確認すると俺は早速答えが書かれているとおもわれる紙を広げる。

「…………4P?」

 4ページ?いや、この補習用プリントの答えがどこかの教科書の4ページにでもあるということなのだろうか?

「………白瀬へ、僕は残念ながら凪さんに睨まれているのでカンペの製作は出来そうにないので自力でがんばれ…………?」

 友は見事に俺を裏切り…………夕焼けは眠たいのか知らないが徐々にその姿を地平線の向こうへ………きっと自分の家に帰ろうとしているのだろう。

「くそ!俺だって帰りたいわい!!こうなったら脱走するしかない!!」

 俺は鞄を掴むと二階の窓としりながら夕日を入れ込む窓を思い切り開けた。

「このパイプを使えば………」

 俺はパイプを掴もうとして、今の自分の状態を思い出す羽目となった。

「あ、俺っていま右腕使えな…………うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 そうだった、俺は今、骨折をしていて右腕が使えないのである。俺はバランスを崩して陸上部が引いていたマットに落ちた後に職員室で凪さんにしぼられたのだった。


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