表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
LOOP&ループ  作者: 音亀
4/4

12月28日④〜12月29日 種明かし

 「『また』ですね…。」

若い警察官が呟く。

 「『また』だな…。」

と、ベテランの警察官は答えた。取調室で容疑者の男は皮肉混じりに話始めたが、錯乱し、今では『天使様』と『ダンゴムシ』しか口に発しず、茫然自失の状態だ。担当警官もお手上げといった感じである。

 12月24日20時頃、31歳の男が29歳の女性の家に押し掛け、室内に侵入。当時女性が交際していた33歳の男性をハンマーのような鈍器で殴殺。その後、凶器を刃物(台所の包丁と推定される)に持ちかえ、女性を刺殺。刺された箇所は左胸のみであった。男は刃物を持ち逃走。同日20時10分、血まみれの男が近くの公園でしゃがみこんでいるのを近隣住民が通報、駆けつけた警察官により逮捕される。なお、その時男は犯行に使われたと思われる刃物を所持しておらず、今も捜索中。また、逮捕された男は最近被害者女性に対しストーキングをしていたことが、被害者の家に盗聴器が仕掛けられていたことから分かった。これがこの事件の概要だ。

 「…そもそも意味あるんですか?だってあの男…」

 「そうだ。奴はそもそも『一人っ子』ではない。奴には『兄』がいた。奴とは違い、明るく、周囲を気遣う人間だった。実家の両親への仕送りも彼がしていた。そして奴に殺された。」

 『被害者男性』は『容疑者の兄』であった。十数年ぶりに再開し、殴り殺された。それも、元の顔が分からないくらいめちゃくちゃに。

 何故、奴の供述から『兄』の存在は抹消されたのか。若い警察官は考えた。兄は成績優秀で、それを鼻にかける様子はなかったようだ。父が容疑者を叱咤するなか、兄は容疑者を庇い、優しく接していたという。しかし、もしかしたらそれさえ容疑者を傷つけていたのかもしれない。容疑者は劣等感の塊のような男だ。皮肉で自嘲気味な笑い方も彼の高いプライドを隠す仮面にすぎない。そんな彼にさえ優しくする兄に対して計り知れないコンプレックスを抱えていたのだろう。しかも、その兄が、自分が陶酔する『天使』の家にいたのだ。どれだけの絶望が彼を襲ったのか。しかし、それは彼の勝手な都合だ。その事を知るはずもなく、訳もわからず虐殺され、挙げ句の果てに存在自体も弟の頭から消された兄に若い警察官は同情した。そして容疑者に対して行き場のない怒りを覚えた。

 「そうですよ!最初からあいつの言っていることはデタラメなんです!意味なんかあるはずがない!」

若い警察官は叫んだ。ベテラン警察官は答える。

 「落ち着け。まだ被害者の女性を殺した凶器が見つかっていないんだ。奴の供述は必要だ。そして奴はいつか…もしかしたら『次回』にでも在処を言う。」

 「根拠はあるんですか。」

若い警察官はつっかかる。

 「『今回』は『爪の在処』がわかった。奴の発言からすると奴の胃の中だろう。」女性の遺体には不審な点がひとつあった。右手の爪が左手のそれに比べて異様に短かったのだ。『今回』の供述の『彼女の一部を取り込んだ』から容疑者が被害者の爪を切り、それを飲んだとベテラン警察官は推測した。

 しかし。ベテラン警察官には一つ疑問があった。何故容疑者は凶器を鈍器から刃物に変えたのか。もしかしたら『天使』を最小限の苦しみで殺そうと奴なりに努力した結果かもしれない。そう考えていた時、

 「凶器は」

若い警察官は呟き、続ける。

 「凶器は奴そのものではありませんか!」

そう叫び、

 「違いねぇ」

ベテラン警察官はこぼした。






 12月29日

 へへ。はじめまして。僕の話を聞いてくれるんですか…。うれしいなあ。









男は再び皮肉混じりに笑う。

見捨てないでくれると嬉しいです。次は明るい話を書きたいと思っています。

読み返してみたら誤字、改行ミスが酷かったので再編集しました。

感想、批判、改善点、質問、回収していない伏線、などございましたらドシドシ書いてください

ではでは

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ