血濡れの鏡
一つ、昔話をしようじゃないか。
別に降霊会とか百物語の会場ではない。
俺が勤めている会社の先輩との飲み会での席の話だ。
真偽のほどは知らないが、先輩はこう続けた。
昔のことだ。
俺が当時行っていた得意先があったんだが、そこの会長さんが骨董品を集めるのが好きでな。
どんな価値があるかわからないなら、自分が価値をつけるというのが口癖の、いい会長さんだったよ。
あるときな、18世紀にできたという鏡を買ったんだ。
一度ならず、二度三度と見せてもらったんだが、金縁に、しっかりと磨き上げられた、素人目にもかなり値が張りそうな鏡だったよ。
その鏡を買ってから、会長さん、おかしくなってしまったんだ。
突然奇声を発したり、商品を全部壊したりな。
しばらくたって、心臓麻痺で亡くなりはったんだ。
会社はその鏡を博物館へ寄贈して、どう日か落ち着いたっていう話なんだがね。
それからしばらくして、博物館から連絡が入ったんだ。
この鏡は呪われた鏡で、所有者に害を及ぼすってな。
ヨーロッパで作られた当時は普通に使われていたんだが、とある男爵家が手にした途端、その家は没落。
それからというもの、世界中のあちこちを旅しながら、ついに日本で博物館入りしたそうな。
今はその鏡は、封印されているって話。