第1章 第4節「徹夜後の1日(前編)」
「「唯。おはよう!」」
「二人ともおはようございます」
眠い。女の子の声は結構頭に響くな。
「眠そうだね」
「大丈夫。唯はいっつもこんな感じだから。どうせまた調べものでもしてて時間がたつのを忘れていたんでしょ」
「ごもっともです」
「ほどほどにね」
「はい。あっそうだ。沙紀さん、これを」
唯は昨日の夜、智貴と作ったブレスレットを出した。
「かわいい~!これは?」
「ずるい。何で沙紀には翼の飾りがついているのに、私のにはついてないの?」
「昨日の夜言っていた装甲の待機モードですが、まだ翼装甲を入れていないのでちょっと待ってください」
唯はそう言うと沙紀の右手首を掴み、意識を集中させた。
すると、唯の手が緑色におぼろげに光った。次の瞬間、ブレスレットがほんの一瞬激しく光った。
「「うわっ!」」
沙紀と布月が短く叫び、目をつぶった。二人が目を開けると、沙紀の左手首には薄い黄色のブレスレットがあった。
「翼がついたレモンみたい」
そこですか…
「これでできたと思うんですけど…一応展開してみてください」
「展開!」
沙紀がそういうと翼装甲が展開された。
よしっ!これでよしっ!
「うわ~」
沙紀は感慨に浸っていた。
「布月さん。どんな飾りにすればいいんですか?」
「う~ん…やっぱり剣の形かな」
「はい。わかりました。今日の夜部屋に忍び込んでやっておきます」
「殺そうか?」
「遠慮しておきます…」
心なしか布月の顔が赤くなっていたような気がするのは気のせいか
「もうそろそろ遅刻の時間ですよ~」
二人は沙紀の声でパニックに陥った。
この学園寮は学園から徒歩10分のところにあるのだ。だから寮生でも遅刻ということがありえるのだ…
「やばい!朝ごはん!作ってない!」
唯はそういうとキッチンに駆けていき、冷蔵庫を開けた。
食材がない!冷蔵庫の中身は食パン、ハム、調味料ぐらいだった。
…ハムトーストかな?
唯は人数分のハムトーストを用意して、大急ぎで食べた。
「ちょっと唯!間に合わないじゃん!」
「まあ、いいんじゃない?布月?」
「良くないよ!しかも今日は門番が教頭だよ!」
「おお。それはやばいね~」
沙紀はのん気だな…
「唯!あれ使っていい?」
あれ?ああ装甲のことか
「仕方ないですね。いいですよ。ただし、背部スラスターのみですよ」
「よし!展開!」
布月の背中に不可視のスラスターが現れる。
「行くよ。沙紀」
「私は翼しかないけど…どうしよう?」
「私が持ってあげる。てなわけで唯は走って行ってね」
布月は沙紀を抱えて飛んでいった。
速いな~ってこんな見とれている場合じゃなかった!
「さて、どうしよう?」
走るか!
「唯!お前も遅刻か!」
後ろから聞き慣れた声が聞こえた。
「智貴!」
「二人して寝坊だな」
「…だね。荷物もって」
唯は智貴に鞄を放り投げた。
「よっと」
「ナイスキャッチ!」
智貴は背中に唯の鞄を背負い走り出した。
なぜ、僕が智貴に荷物を背負わしたというと…隣を見ればわかる。
唯の隣には猛スピードで走る智貴の姿があった。
あの、僕50m走6秒台なんですけど…なんで追いついているんですか?ちなみに智貴の50m走のタイムは8秒台。どうなっているの?とても不思議だ…
そうこうしているうちに正門が見えてきた。
「げっ、やっぱり教頭か…」
「唯、ウィングシールドって不可視に出来る?」
「一応…何をするんだ?」
「いいから早く出す」
なんか嫌な予感がするけど…まあいいや
「展開」
唯の右手に不可視のウィングシールドが現れる。
「展開させたけど…」
「なら、教頭の前を通るときにあいつの頭上で風をあげて」
「OK」
二人は猛スピードで正門に近づいた。
「二人とも止まれ!遅刻だ!」
「「嫌です!」」
こう答えるのが妥当でしょ!
「意地でも止まらせてやる!」
「今!」
智貴の声に合わせて唯は教頭の頭上でウィングシールドを振った。
その風に煽られて教頭の髪の毛が持ち上がり飛んでいってしまった。
「あっ!!」
「GO~!」
教頭がカツラを追っている間に二人は悠々と正門から入っていった。
何で智貴は教頭がカツラだって知っていたんだろう?
どうもCPUです。
諸事情により文字数が少なめです。
以後、2話ほど文字数が少ないです。
すみません。
次回も学園生活です。
これからもよろしくお願いします。
評価、感想を頂けると嬉しいです。